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NVIDIAが深層学習でX線写真の分析をサポートする医療用AIキット「Clara」を開発

by rawpixel.com

半導体メーカーのNVIDIAは最先端のGPUを開発しているという利点を生かし、AIやディープラーニングの分野にも積極的に進出しています。そんなNVIDIAは医療用AIの開発も行っており、画像診断等を行う放射線科医をサポートする医療用AIを含むツールキット「Clara」を開発しています。

NVIDIA CLARA Platform | NVIDIA Developer
https://developer.nvidia.com/clara

Clara AI Lets Every Radiologist Teach Their Own AI | NVIDIA Blog
https://blogs.nvidia.com/blog/2019/03/18/clara-ai-gtc/?ncid=so-twi-gj-78508

Claraは放射線科医のために開発されたAIおよびソフトウェアツールを含むキットであり、画像診断に用いられる医療用画像の処理をサポートしてくれるとのこと。レントゲン等で撮影された患者の画像を分析し、病気や腫瘍の兆候を発見する放射線科医の仕事をサポートできれば、多くの人々が恩恵を受けられます。


画像診断AIを構築するためには訓練用のデータセットが必要となりますが、忙しい放射線科医がClaraを訓練するためにデータセットを作成する時間を捻出するのは至難の業です。こういった手間が医療現場におけるAI導入を妨げる一つの要因ともなっていますが、Claraは「データセットのラベル付け(アノテーション)をサポートする機能」を搭載しており、放射線科医がデータセットを作成するスピードをアップさせているとのこと。

Claraのアノテーションサポート機能がどんなものになっているのかは、以下のムービーを見るとわかります。

AI-Assisted Annotation


画面の左上、右上、左下にある画像は、Claraに訓練させたい臓器を撮影した画像。訓練用のデータセットを作るには、これらの画像に映っている臓器を放射線科医がマーキングし、右下に写っている3Dモデルに反映させなくてはなりません。この作業はかなりの時間を要するため、放射線科医にとって大きな負担となります。


しかし、Claraのアノテーションサポート機能を使えば、そんなデータセット作成を高速化できるとのこと 。画面上のカーソルが動き、ラベル付けしたい臓器の境界をクリックしていきます。


数回クリックすると、選択した臓器の境界をAIが自動で識別し、赤枠で囲ってくれました。


画像がムービーとして再生されて臓器の表示範囲(左上)が変わっても、AIは動きに追従して臓器を識別してくれる模様。日々の業務に追われる放射線科医にとって、強力なサポートツールとなっていることがうかがえます。


アノテーションサポート機能によって、各臓器のラベル付けがどれほど高速化されるのかを示したグラフがこれ。肝臓(Liver)は8倍、脾臓(ひぞう、Spleen)は10倍、すい臓(pancreas)は4倍ほど、従来の方法よりも早くラベル付けを行うことができるとのこと。


また、トランスファーラーニングという機能を用いることで、医師がClaraの既存モデルを個々の医療施設や患者に合わせて微調整することが可能。微調整に用いることができるデータには、付近の人口統計や画像診断デバイスなどがあるとされています。

すでにClaraは主要な医療機関において採用されており、ドイツのがん研究センター(DKFZ)オハイオ州立大学アメリカ国立衛生研究所カリフォルニア大学サンフランシスコ校といった専門機関でClaraの画像診断システムが使われています。それぞれの機関にローカライズされたClaraは、専門の放射線科医と同等のパフォーマンスを発揮しているそうです。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校の放射線科長のChristopher Hess氏は、「Claraは臨床的に価値のあるAIツールであり、臨床ワークフローで検証して展開する必要があります。医療用画像診断の分野において、NVIDIAのClaraは必要不可欠なものとなるでしょう」と語りました。

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in ソフトウェア,   サイエンス, Posted by log1h_ik

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