インタビュー

「revisions リヴィジョンズ」を生み出した2人のプロデューサーにインタビュー、「エポックなものを生み出したい」という魂の共鳴で作品が実現


2019年1月から放送中の青春(ジュブナイル)災害(パニック)群像劇(アンサンブル)・「revisions リヴィジョンズ」。監督・谷口悟朗さん&CG監督・平川孝充さん、アニメーション制作を担当した白組の井出和哉プロデューサー&撮影監督・高橋和彦さん&アニメーター・落合舞子さんに続いては、作品を企画段階から動かしてきたスロウカーブの尾畑聡明プロデューサーにインタビューを行いました。企画初期段階はどのように話が動いていったのか、そしていかにして白組が加わり企画が進んでいったのか、白組・井出プロデューサーにも同席してもらい、いろいろな事情を明かしてもらいました。

TVアニメ「revisions リヴィジョンズ」公式サイト
http://revisions.jp/


GIGAZINE(以下、G):
スロウカーブは「revisions リヴィジョンズ」の企画を担当しておられます。企画の「動き始め」はどういった形だったのですか?

スロウカーブ 尾畑聡明プロデューサー(以下、尾畑):
共同でシリーズ構成としてクレジットされている弊社の橋本太知から企画が上がってきました。そこにはコンセプトとか、彼は物語まで書き込んでくれるタイプなのでシナリオもかなり盛り込まれていました。それを私が咀嚼して、ビジネスとしてクリエイターを集めるのに適切な企画書に落とし込みました。

G:
最初に発表されたリリースの中で、尾畑プロデューサーの言葉として「企画の成り立ちは2年半くらい前に海外ドラマの連続性や中毒性のような強度のある企画を谷口監督と話していました。タイムパラドクスディザスターの中に少年少女たちが放り込まれたら面白いかなというところから始まりました。時間SFという設定なので難解な設定は冒頭からでてきますが、そんなもの関係なく、そこに起きている出来事やキャラクターの気持ちなどにダイレクトに入れるように作っているので、構えずに楽しんで欲しいです」とありますが、なぜ谷口監督を選ばれたのですか?

尾畑:
もともと谷口監督の作品が好きなんです、「プラネテス」とか。一番大きいのはオリジナルを経験されているというところです。同じくシリーズ構成の深見真さんやうちの橋本は、どちらかというと鋭く書くタイプなのでそれをうまくチューニングしたり、全体を見通せて、かつオリジナルをやれる方となると、やはり谷口監督かなと。また、人間のドロッとした部分、人間くささみたいなところを上手に描き、にじみ出てくるものがあるという点で、谷口監督が適任だと思いました。

G:
谷口監督とは以前からお知り合いだったんですか?

尾畑:
私が東宝さんの作品をお手伝いしている時に「ファンタジスタドール」でご一緒しました。前職のGONZOにいたときから面識はありましたが、仕事でご一緒したのは「ファンタジスタドール」が初でした。

G:
「revisions リヴィジョンズ」の企画は、尾畑さんから井出さんに声をかけたとのことですが、なぜ「白組」だったのですか?

尾畑:
この企画を立ち上げる前に、別の企画でご一緒する話があったんです。そのときにいろいろなPVを見たり、制作のスタイルを見たりしたのですが、一番大きかったのは井出さんが……これは言ってもいいんだよね?

(一同笑)

尾畑:
テレビシリーズで、白組というスタジオブランドでもっと暴れたい」と言っていたことです。……「暴れたい」ではなくて「エポックなものを生み出したい」だったかもしれませんが(笑)、それを聞いて「こういう魂がある人ならぜひ」と思ったんです。そんな感じだったよね?

白組 井出和哉プロデューサー(以下、井出):
そんな感じだった気がします。別の企画というのは3年以上前のことで、それがなくなってからちょっと間があったんです。次にお話をもらったのがこの「revisions リヴィジョンズ」で、さらに谷口監督がいて……。それは、モチベーションも高くなりますよね。

尾畑:
それは嬉しいです。

井出:
「これはいいな!」ということで、一気に「やりましょう」と決めました。


G:
「revisions リヴィジョンズ」に限らず、オリジナル作品だとどういった点を見て引き受けるか決めるのですか?

井出:
まずは「白組としてチャレンジするだけの要素があるか」ということを考えます。映像面でやる価値があるかどうかという点が大きい一方で、オリジナルだとシナリオはこのあとできていくものなので、プロットがキャッチーであれば。

G:
「revisions リヴィジョンズ」で、映像としてやる価値があると思われたポイントはどこでしたか?

井出:
話をもらった時点では、まだ具体的に「渋谷が転送される」というシナリオはなく、「人類が二分される」というコンセプトの状態でした。それがお話として面白そうだったということと、登場人物が一度にたくさん出てくる作品だったので、「我々の今の力でどこまでできるのかやってみよう」と考えたことです。「登場人物が多い」ということは、CG制作が得意なうちならやれると思ったので。たとえば、モブだとリアルタイムエンジンを使って群衆シミュレーションをやっています。海外では当たり前の手法で、白組では山崎貴が監督した「海賊とよばれた男」でも群衆シミュレーションを使っていたので、「revisions リヴィジョンズ」でもやってみようかと。

作中には学校のシーン、街のシーンなどで、モブキャラクターがわんさか登場します。


尾畑:
企画は、私たちが「こういうことをやりたい」という原型を作って谷口監督のところに持っていき、それから井出さんのところへ行ったという順番です。その後にどういう人がいいかを話し合って、深見さんや近岡さんが決まりました。スロウカーブではまず監督を決めて、監督がこれだと思う中心的なメンバーが決まってから、脚本家やキャラクターデザイナーが決まっていくことが多いですね。

G:
深見さんに決まったとき、なにか強力な理由はありましたか?

尾畑:
深見さんが受けてくれた理由は企画を気に入っていただいたのではないかと思います。なんとなくみんな「深見さんだったら……」という風になりましたよね?

井出:
シリーズ構成は何人か候補が挙がっていましたが、イメージとして深見さんが「PSYCHO-PASS サイコパス」をやられたというのは大きかったです。順番でいえば、キャラクターデザインの近岡直さんの方が決まるのはちょっと早かったかもしれません。

G:
脚本会議は大変だったというお話ですが……。

尾畑:
大変でした。実は今回スロウカーブが脚本会議を担当したんですが、試行錯誤の結果、普段あまりないやり方を試みました。普通だと各話ごとに「この話数はこの人」と決めるんですが、今回は複数人で仕上げるスタイルをとったんです。

井出:
オリジナルで試行錯誤もありどうしてもスケジュールが遅れる部分はあって、そうなると「もうちょっと脚本会議を入れなきゃ」と。

尾畑:
2017年の10月~11月ごろだったか、ほぼ毎週のように電話がかかってきて「尾畑さん、これ落ちます」と脅しの電話が……。

(一同笑)

井出:
その時期、放送が1クール早くなるという話になって、9月が締め切りだったんです。9月に上がらなければならないものがどんどん押していって。本来、CGアニメは、納品時期の1年前に脚本が上がってないという時点で、結構やばいですから。

G:
その電話を受けた尾畑さんはどうしていたんですか?

尾畑:
脚本会議に出席していたうちの橋本や戸堀に相談して、彼らが必死になって脚本の立て直しと進行にドライブをかけてもらいました。

G:
今回の「全12話」というのは最初から決まっていたのですか?

尾畑:
はい、基本的に1クールでやろうと決めていました。

G:
フジテレビは途中からの参加だったとのことですが、最初からNetflixで全世界展開をというわけでもなかったのですか?

尾畑:
企画そのものは、Netflixかはともかく、最初から全世界で受け入れてもらえるものにしたいという気持ちがありました。ちょうど半分はファイナンスが済んでいたというところで、もともと親交が深いフジテレビさんから全世界向けの枠を作るという話をいただいたので「この企画はどうですか?」と話を持っていったという流れです。

G:
谷口監督だったのは、最初から全世界での展開を考えていたというのもありますか?

尾畑:
はい、そういう面もあります。

G:
第1話を海外で上映した時の反応はどうでしたか?

尾畑:
すごく手応えがあったのと、笑うポイントが凄く豊かだった印象があります。

井出:
堂嶋大介がイラつく場面で、海外の方々は笑っていました。大介が無駄にタックルしたりすると笑いが起きるんです。フックとして作った部分なので、反応があって手応えを感じました。

かなり無茶な行動の多い大介。あまりにも自分勝手に動くことも多々あります。


尾畑:
ちゃんとリアクションがあって、半分ホッとしました。もう半分は、シリーズは見続けてもらえるかどうかが重要なので、見続けて欲しいという気持ち。両方でした。

G:
+Ultra」の2作目として、「イングレス」の後に世に送り出されることになりましたね。

尾畑:
私は「イングレス」も、結構ハードなSFで大好きです。「revisions リヴィジョンズ」はもっとアニメ然としているので、その反動も楽しみです。「+Ultra」は「イングレス」みたいな作品だけではないぞという意外性も出せればいいなと思っています。

G:
企画誕生の最初の段階から携わっていて、いよいよ作品が世に出る時点というのは「期待」の気持ちが強いものですか?それとも「不安」ですか?

尾畑:
私の場合は「不安」です。私は映画の宣伝などもやっていますが、公開前日や初日は劇場の座席が埋まっているかなど怖くて見られないんです。前売券の販売数もあまり聞きたくない。それに近い感じかもしれません。試写で反応が良くても、実際にお客さんが受け取ったときのリアクションはまた違ったりするので、そこが不安ですね……。

井出:
制作プロデューサーとしては、クオリティ面の不安がまずやってくるので、その点は同じです。白組としては「映像としてどう見られるか」というところにも気持ちが向きます。「CG、ヘボいね」なんて言われてしまわないかと……。そして、製作委員会の面ではビジネスとしてどう展開していくかというのがあるので、とにもかくにも視聴者の反応が重要視されます。とすると、やっぱり不安感が大きいということになりますね。もちろん、期待はしていますが……。

G:
楽観的にはなれない、と。

井出:
なれないですね……。谷口監督が立ってくれているとはいえ、1クールに作品がたくさんある中で、まず見ていただけるだろうかというところが非常に不安です。

G:
2人のプロデューサーの目に最近の映像作品、アニメはどう映っていますか?

尾畑:
映像の水準は、どこが制作しても本当に高いと感じます。クオリティ自体はとにかく上がっているなと思います。

井出:
……よく落ちるなと思います。

(一同笑)

井出:
白組の看板しょっているのでそんなことできません。だからこそ、スケジュールにはすごくこだわっています。

G:
質が高くてもスケジュール通りにいく作品とそうではない作品があるのは、何が原因なのでしょうか。

尾畑:
井出さんがすごくスケジュールにこだわっているように、「プロデューサー次第」という一面はあります。

井出:
そうですね……「revisions リヴィジョンズ」では谷口監督もスケジュールを大事にする方なので、「できないものはできないし、やるとするならどこに一番力を入れたらいいんだろう」というコミュニケーションが取れました。その上で、脚本のことでは尾畑さんの方に「もうやばいよー」って言わせてもらいました。

G:
コミュニケーションの問題は大きそうですね。

井出:
制作スタジオの人間である私が言うのも変ですが、スタジオは「やれます」と言いがちです。谷口さんがスケジュールの話で「制作がウソをつかないことが大切」と言っていましたけれど、制作スタジオ全体でコミュニケーションがうまく取れていないと、「フタを開けてみたら、できてなかった」となります。

G:
監督の発言はそこに繋がるんですね。

井出:
テレビアニメは「放映中に帳尻を合わせる」のが多いように思います。「本来、こっちのアニメの作画をしていないといけないけれど、前のクールの分が終わっていない」とかですね。ただ、配信が絡んでくるとそれは今後許されないので、もっと大変になるかと……。もちろん全ての現場がそうではないですよ。

尾畑:
アニメの本数が多いというのも大きいですよね。どう考えてもスタジオ数、ライン数に対してアニメの本数が多いです。

G:
業界全体から見ても多いですか。

尾畑:
多いと思います。

G:
改編期に新作の情報をまとめていると、50本は下回らない作品が始まっていますもんね……。なぜこんなに大量のアニメが放送されているのでしょう。

尾畑:
時代によって費用の回収方法が変わってきています。最初は「おもちゃ」で、次にDVD、Blu-rayなどの「ビデオグラム」。それが終焉を迎えつつある今は「配信」と「ゲーム」になりました。おもちゃならおもちゃ会社、パッケージが売れた時代はパッケージメーカー、そして今は配信会社とゲーム会社がメインプレイヤーになりつつありますが、今、このプレイヤーが増加しています。すると企画も当然増えるので、制作本数が増える要因ではないかと思います。例として極端ですが「パッケージメーカーが本数を減らした分の『穴』を配信事業者とゲーム会社の手がける作品が埋める、というかむしろ増加している」という状態なのだと思います。新しい作品が生み出されるのは良いことではあるんですが、現状の環境にお客様も制作スタジオも追いついていないんじゃないかなと思います。

G:
そうすると「revisions リヴィジョンズ」は最先端を突っ走っている形ですね。この「revisions リヴィジョンズ」という作品に、なにか期待していることがあれば教えてください。

尾畑:
時間SFとかタイムパラドクス、「渋谷が300年以上先にぶっ飛ぶ」という舞台装置の面白さもありますが、基本的には少年少女たちの絆や成長を描いています。そこに共感してもらえたらいいなというのが1つ。あと、放送のない日でも、5人のキャラクターのことを語ってもらったり、課外活動のような感覚で、視聴者同士でキャラがどうだったみたいなことを語ってもらえると嬉しいです。もう放送も後半戦ですが、3月に放送が終わってからも何かしら提供できるといいなと思っていて、もしそれが叶わなくても、みなさんの中で盛り上がってもらえたらいいなと思います。

井出:
同じく、見てくれた人がSNSなどで話題にしてくれるといいなと思っています。オリジナルの1クール作品なので、12話駆け抜けるとそれで終わりなんですけれど、SFなので、中身の考察をしてもらったり、続けていきたいからこそファンについてきてもらえたらと思います。

G:
「revisions リヴィジョンズ」のこと、そして直接は関係ないこともいろいろ教えていただき、ありがとうございました。

「revisoins リヴィジョンズ」はフジテレビ「+Ultra」にて毎週水曜日24時55分から放送中で、ほかに関西テレビ、東海テレビ、テレビ西日本、北海道文化放送、BSフジでも放送が行われており、Netflixでは日本先行全話一斉配信中です。


2月27日(水)は10分遅れの25時5分開始で第8話「オペレーション・ネフィリム」が放送されます。副題にもなっている「オペレーション・ネフィリム」はリヴィジョンズの拠点にある人工量子脳を破壊して現代に戻るための、S.D.S.による起死回生の特攻作戦。しかし、リヴィジョンズは大介たちを残酷なもてなしで出迎えます……。

不安げな表情の慶作


リヴィジョンズのチハル&ムキュー


作戦の成否はいかに?


そして、待ち受けるものとは……?

©リヴィジョンズ製作委員会

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in インタビュー,   アニメ, Posted by logc_nt

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