ネコが不可解な行動を取るのはサイコパスだからではなく飼い主の性格を反映した結果かもしれない
ネコは「人にあまりなつかない」というイメージがあるためか、飼い主の性格をあまり反映しないといわれることがよくあります。そのため、飼っているネコがあまりにも不可解な問題行動を繰り返すと「うちのネコはサイコパスなのでは?」と不安に思う飼い主も中にはいるそうです。そんなネコの問題行動について、「その原因はサイコパスだからではなく、飼い主の性格から影響を受けたからかもしれない」という研究が報告されています。
Why We Think Cats Are Psychopaths - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/science/archive/2019/02/cat-psychopaths/583192/
Owner personality and the wellbeing of their cats share parallels with the parent-child relationship
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0211862
If Your Cat's Neurotic, Scientists Say It's Probably Just Mirroring You
https://www.sciencealert.com/scientists-say-your-cat-is-probably-mirroring-your-own-personality
リバプール大学の心理学大学院生であるBecky Evans氏は、「自分の飼っているネコはサイコパスかもしれない」と悩む飼い主を対象にアンケート調査を行い、その中で「サイコパスだと疑ってしまうようなネコの行動は何か」を尋ねたとのこと。その結果「他のペットをいじめる」「犬のベッドを奪う」「飼い主の家族に襲いかかるために台所のカウンターで待ち伏せる」という、典型的なネコの行動が報告されたそうです。
If any cat owners would be willing to spare 10 minutes to answer this questionnaire I would be very grateful! ????https://t.co/WsFfeUo1uN pic.twitter.com/bBwEy6CChH
— Becky (@BeckyEvans96) 2019年2月8日
カリフォルニア大学でネコの行動心理学を研究するMikel Maria Delgado氏は、ネコの一般的な振る舞いを見た飼い主がサイコパスだと考えてしまう理由の1つとして、犬とネコで表情の作り方が違うからだと指摘しています。
犬は表情筋が豊かであり、感情が顔に出やすく、人類と共存する長い歴史の中で犬は人間をまねて笑顔のような表情を浮かべることができるようになったといわれています。実際に「多様な表情は犬に選択的優位性を与える」と論じる研究の中で何度も眉を上げてかわいらしい笑顔を作る犬はシェルターから人間にもらわれていく可能性が高かったことが示されています。
しかし、ネコは人間や犬と比べて表情筋が基本的に少ないため、顔で感情を細やかに示すことが苦手です。その代わり、ネコは自分の耳や尻尾などを使ってコミュニケーションをとります。ネコのボディランゲージに気づかない飼い主はネコの感情を理解することができず、無表情で気ままに行動するネコを見て「うちのネコはサイコパスなのでは?」といぶかしんでしまうというわけです。The Atlanticは「経験豊富な飼い主に相談してみてください。そうすれば、サイコパスのように見えるネコの行動が決して大した問題ではないことがすぐにわかります」と述べています。
そんな「サイコパス」疑惑をかけられてしまいがちなネコですが、表情をあまり顔に浮かべないだけで、もちろん感情や性格は存在します。ノッティンガム・トレント大学の動物福祉研究者Lauren Finka氏率いる研究チームは、18歳以上のネコの飼い主3165人を対象にアンケート調査を実施。このアンケートでは飼っているネコの年齢や品種、健康状態や気になる問題行動を尋ねました。
アンケート調査ではネコに対する質問だけではなく、飼い主に対してビッグファイブによる性格分類も行われました。ビッグファイブとは「人間の性格は『開放性』『協調性』『誠実性』『外向性』『神経症傾向』の5因子で構成されている」という特性論で、研究チームはそれぞれの因子を数値で評価したとのこと。
調査の結果、回答者の92%が女性で、その年齢層は25~44歳が全体の半数を占めていたそうです。1人当たりのネコの平均飼育数は1.4匹で、ネコの平均年齢はおよそ7.2歳。全体の92%は去勢済みだったそうです。飼い主の76.6%は「自分のネコに病状はない」と述べ、残りは内臓や腫瘍、認知障害などの慢性的な症状を報告していたとのこと。45%の飼い主が部分的な放し飼いをしていて、ネコを家から一歩も出さない飼い主は全体の26.1%だったそうです。
アンケートを受けた飼い主の中で、自分のネコが問題行動を起こしていると答えたのは20%。そして、「攻撃性」「なんでもかじろうとする」「家を汚す」「家具をひっかく」「やたら威嚇する」などが問題行動として報告されています。
by Chantal Lyons
こうしたアンケート結果と飼い主の性格分類の結果をあわせることで、「ネコは飼い主の性格側面を吸収して反映しているかもしれない」と研究チームは主張しています。例えば、神経症傾向がより高い飼い主のネコは太りすぎや病気を抱えていることが多く、不安や恐怖、ストレス由来の問題行動が報告される傾向があったとのこと。
また、誠実性と開放性が高い飼い主は、自分のネコがわがままで貪欲だと報告する傾向はあったものの、一方で攻撃的ではないと評価していることも多かったそうです。特に誠実性が高い飼い主のネコは問題行動があまり報告されていないことも判明しました。
Finka氏は「大多数の飼い主は、自分たちのネコに最善のケアを提供したいと考えています。その結果、飼い主の性格とペットの幸福の間に重要な関係が生まれることをこの結果は示しています」と論じています。「ただし、飼い主の人格がネコの行動に直接影響を与えていると断言するためにはさらなる研究が必要となります」とFinka氏はコメントしています。
エジンバラ大学でネコを専門に研究するDanielle Gunn-Moore氏は「ネコは自分の小さな分身です。周囲の人々の影響を強く受けている感傷的な生き物で、飼い主と密接に結びついてお互いに影響を及ぼしあいます」と語っています。Finka氏は「人間のペットとして生きることがネコにとって必ずしも楽ではないかもしれません。私たち人間の行動がネコにどんな影響を及ぼしているのかを、ポジティブな面とネガティブな面の両方で認識することが重要です」と述べていました。
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