パーキンソン病のパンデミックが将来起こる可能性があると研究者が警告
by Matthias Zomer
医療技術の進歩や栄養状態、公衆衛生の改善により、人類はかつてないほど長寿となりました。しかしこの結果として、将来的にパーキンソン病などの加齢に伴う神経学的疾患によるパンデミックが起こる可能性を、Journal of Parkinson's Diseaseの編集長であるPatrik Brundin博士が警告しています。
The Emerging Evidence of the Parkinson Pandemic - IOS Press
https://content.iospress.com/articles/journal-of-parkinsons-disease/jpd181474
Emerging evidence of an impending Parkinson's disease pandemic identified | EurekAlert! Science News
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-01/ip-eeo_1012919.php
Scientists Are Warning of a Future Parkinson's Pandemic, And We Can No Longer Ignore It
https://www.sciencealert.com/research-warns-of-a-pending-parkinson-s-pandemic-and-we-need-to-pay-attention
Brundin博士らによると、ジェームズ・パーキンソンが初めて症例を報告した40年後である1855年には、パーキンソン病による死者はイングランドとウェールズを合わせた人口1500万人のうち22人でした。
2014年になりイギリスの6500万人のうちパーキンソン病で亡くなったのは5000~1万人と示されています。そして1990年から2015年の間でパーキンソン病の患者は倍増し、600万人以上となりました。パーキンソン病患者の急増は高齢化社会を反映しているといわれており、2040年までには1200万人がパーキンソン患者となるとみられています。また、パーキンソン病との関係が疑われている医薬品、農薬、汚染物質を分解する腸内細菌などを考慮すると、この数は1700万人にまで上る可能性もあるとのこと。なお、長期喫煙者はパーキンソン病のリスクが40%も低いという調査結果もあり、世界的な禁煙傾向もパーキンソン病増加に寄与するかもしれません。
さらに、パーキンソン病に限らず、アルツハイマー病を含む認知症など、他の神経学的疾患もまた高齢化・長寿化の影響を受けて増加するとみられています。
上記のような問題の根本に横たわっているのは、そもそも神経学的症状の多くがまだ理解されていないということにあります。パーキンソン病は1817年にパーキンソン医師が初めて報告しましたが、その後の研究により、手足末端の震え、可動性の減退、気分の変化といった症状は脳の中央にある大脳基底核という場所でドーパミンを生成する組織が減少しているためだと考えられるようになりました。ドーパミンの生成減少は直接的に死に結びつくものではありませんが、老化と合わせることで平均余命が7~14年となり、今日では20万人がパーキンソン病による早死を迎えています。
しかし、ロチェスター大学メディカルセンターの神経科医であるRay Dorsey氏は「過去数世紀において社会はポリオ、乳がん、HIV、といったさまざまなパンデミックをコントロールすることに成功してきました」と語り、人々が行動主義を取ればパンデミックを避けられることを主張しています。Dorsey氏はパーキンソン病の予防法や資金募め、新たな治療法の促進などを行う、研究者と患者から構成されるコミュニティーの重要性を強調。パンデミックは避けられないわけではなく、人々は一丸となって行動を起こすべきだとしました。
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