ぼったくりに遭うのも自分がぼったくるのもよろしくない、海外の買物における心得
「あなたはお金をたくさん持っているので、外国人価格で請求させていただきます」というぼったくり。海外ではこれがイヤで、ふざけるなと喧嘩ばかりしていました。でも、そうしたぼったくりは悪なのでしょうか。日本とは違う価値観もあります。善悪だけで割り切れるものでもありません。
こんにちは、自転車で世界一周をした周藤卓也@チャリダーマンです。当時はお金に細かい旅をしていたので、海外でもぼったくりに遭わないように行動していました。たとえぼったくりでも、払う人が納得すれば大盤振る舞いもありです。でも、私は違いました。みなさんが知りたいのも、「ぼったくられない(ぼられない)」方法でしょう。特に注意が必要な地域もありました。そんな海外の買い物における私なりの心得を今回は記事にしてみました。逆に「ぼったくってしまう」ことにも気をつけないといけません。
◆ぼられないように
「あなた、お金持ちね。だから、人より多く払ってね」という価値観は日本人にとって受け入れがたいものです。税制度や社会保険制度の中では、お金を持つ人がより多く払う事例がありますが、民間はそうじゃありません。値段の上下は提供される物品、サービスによるもので、誰が払うかは関係ありません。家電では値下げ交渉もあるでしょうが、スタート価格は明示されているので公平な競争でしょう。お金を持っていようがいまいが、1つ100円のパンは誰にでも100円で販売されるのが日本の常識です。
しかし、この日本の常識が通用しない場所があります。1つ100円のパンが150円、200円、300円と人によって値段が変わります。いわゆる、ぼったくり価格です。途上国の旅では珍しくないトラブルで地元民とは違う外国人料金を提示されます。特に旅行者が集まる観光地ではリスクが高くなります。適正な値段の把握が難しいタクシー、ツアー、お土産物などは十分な注意が必要です。
ぼったくりのトラブルに遭わないためにも、値札がないときはあらかじめ値段を確認、納得した上で購入していました。「数字」「お金(money)」「これ(this)」「いくら(How much)」「高い(expensive/high price)」「安い(cheap/low price)」くらいは現地語を覚えると買い物がスムーズになります。
あと、現地通貨が日本円でいくらなのかという感覚を掴むことも大切です。中国は6元が約100円、タイは30バーツが約100円、ベトナムは2万ドンが約100円と、同じ「100円ぐらい」でも国によって数字が全然違ってきます。現地通貨の数字に慣れないと、ふとした時に思わぬ失敗をしがち。さらに、物価を把握しましょう。国によっては缶ジュースが50円、食堂のランチが200円、安宿に1泊が1000円というのもざらです。
こうした場所の買い物は、まず値段を確認。そして必要なら交渉。
パラグアイの通貨グアラニーも大きな数字の通貨です。
2016年春、中国の缶ジュース(ファンタ)は2.5元で約50円でした。
◆地域別
・アラブ世界(イスラム世界)
ぼったくりがあるといってもそこまでひどい場所はあまりありません。商店でも食堂でも地元民、外国人関係なく同じ対応してくれるのが普通です。しかし、アラブ世界、広義だとイスラム世界には注意が必要でした。
アラブ世界では特にヨルダンが大変でした。普通の商店や食堂ですら違和感を感じることがあって買い物自体が億劫でした。ペトラという有名な世界遺産のあるワディ・ムサという町の商店はなにもかも外国人価格で買い物もまともにできず、わけがわかりませんでした。どんな観光地であっても、そこに暮らす人がいれば地元民の値段があるはずですが見当たらず。そのワディ・ムサを離れて観光客なんて立ち寄りそうにない田舎の商店に安心しきったら変な値段になっていたりと、ともかくヨルダンは買い物に苦労させられました。
苦難のワディ・ムサ
田舎の商店で缶ジュースが0.50ディナール、菓子パンが0.25ディナールでした。約120円ですが、それまでのヨルダンの買い物、現地の物価からしたら少し変な値段でした。
チュニジアでは床屋の散髪、エジプトは行商のパンで、それぞれ外国人価格にぶつかったのでアラブ世界には注意。こうした特別でない場所でやられると参ります。
エジプトはピラミッド近辺も悪い噂ばかり。
広義でイスラム世界としたのはトルコでもイランでもぼられた記憶があるからです。そもそもイスラム世界にはザカート(喜捨)という貧者救済のシステムがあって、お金を持つものがより多く払うのは自然なことで、外国人価格に抵抗がない人もいると思っています。実際、ヨルダンの食堂で確認したサンドイッチがぼったくり価格で、壁にメニューがあって数字があっても頑なに外国人料金を払えと言われたこともあって、世界の価値観は一つでないと痛感させられました。
また旅することがあれば、これまでの経験からヨルダンに最大限の注意をします。次いでアラブ世界、そしてイスラム世界もある程度警戒するでしょう。イスラム世界はこうした外国人料金の心配はある反面、旅人には親切にしろという教えもあって、何度も何度も食事やお家に招いて頂きました。塩対応以上に神対応されることも多い地域ということも忘れてはいけません。
旅に出てから知ったイラン・トルコ・アラブ諸国とイスラムについて - GIGAZINE
親日的な国が多いとも言われますがイラン、トルコ、アラブ諸国では、東洋人を馬鹿にしているようで、歩いてるだけで不快になる経験が何度もありました。そして外国人であれば騙してもいいと考えているのか、ボラれることも多かったです。缶ジュース一つ買うにしても、外国人と現地人では値段が違うのが当たり前。つい最近まで居たヨルダンでは、人間不信になりかけました。
一方で、旅人に親切にしてくれるのも事実。一帯では何度も食事をご馳走になったり、何度も家に泊めてもらいました。見知らぬ旅人を信頼して家に招き入れる行為は、見方を変えると危険と隣り合わせ。だからこそ、お世話になったことは忘れることはできません。旅を終えた後には、報告書を送らないといけない人たちが何人もいます。
・インド
インドを旅すると「人生観が変わる」とよく聞きます。人口の増加に都市の発展が追いつかず、どこもかしこもカオスな状況なので、「世界観」は変わるだろうと思います。ともかく人が多いのです。そんな混沌としたインドは想像できたので、渡航前はぼったくりにかなり警戒していました。
しかし、インドの日用品には定価が書いてあります。そういうこともあって、インドはさほど心配いりませんでした。定価のないツアーやお土産物屋さんはトラブルの話を聞くのでご注意下さい。
歯ブラシは25ルピー。
インスタントスープは10ルピー。
・中国
中国の大手スマホメーカー・Huaweiが、カナダでCFOが逮捕された件で「自由経済精神に反する」という声明を出しています。しかし、中国ほど規制が厳しい国はありません。Googleは撤退していますし、TwitterやFacebookも使えません。
他にも外国人の旅行者は宿泊できる施設が限られています。驚異的な経済発展を遂げ世界各地で自由な旅を謳歌している中国の方々ですが反面、中国を訪れる外国人の我々は自由に宿も選べないという理不尽。国をあげてのぼったくりだと思っております。
おそらく外国人お断りの安宿。
中国の安宿事情については過去にも記事にしています。
ガイドブックでは触れられない中国の本当に安い宿をまとめてみました - GIGAZINE
ちなみに、安宿以外の買い物では特にトラブルなしでした。ただ、上海の「お茶詐欺」はよく聞くのでご注意下さい。
・他には
他にも東南アジアのぼったくりはよくある話で、個人的にはカンボジアが鬼門でした。ベトナムも酷いと聞きますが、こちらはあまり大きなトラブルがなかったのでいい思い出となっています。中南米は資本主義経済が根付いていているのかぼったくりを気にすること自体ありませんでした。しかし、こちらは貧富の差が激しいので治安への心配が必要。
また、逆に日本でも外国人観光客がぼったくり被害にあっていることも見逃してはいけません。一時期、新宿歌舞伎町のぼったくりバーは日本人ですら多くの被害者を出していて大きな問題となりました。日本人が日本人にぼられたりするんですから、右も左も分からない外国人観光客なんて絶好のターゲットでしょう。
◆交渉による買い物
旅を始めた頃は意固地に地元民価格を追求していました、しかし、旅を進めていくに連れて考え方が変わります。
そもそも途上国には仕事がありません。そういった国での物の販売は参入容易で多くの人が群がります。そんな誰にでもできる仕事が儲かるでしょうか。だから、値札もつけられません。少しでも利益を出そうと必死になります。そうした世界でしょうから、人によって違った値段になるのも当然だと今は思っています。しかし、これは衣服、鞄、電化製品などの特別な買い物に限り受け入れている理屈です。日常の食料や大衆食堂のご飯に外国人価格はどうかと思います。また、交渉とはいえ地元民の2倍3倍の値段をふっかけるのも騙し討ちのようで認めたくありません。
インドのニューデリー駅の前でイヤホンを売る少年。値段を聞くと50ルピー。いやいや、前の客は40ルピーのところを35ルピーに値切っていました。でも、商談不成立。「だったら、40ルピーだったら買う」と持ちかけて商談成立。このときはヒンディー語の数字が何となく分かっていて興奮しました。
エチオピアはダナキルツアーへ参加するにもクロックスもどきのサンダルしかなくスニーカーが必要でした。街の露店で入手を試みます。現地の言葉(アムハラ語)は分かりませんでしたが地元民が180ブルで靴を買っているシーンを目撃。この値段を基準に別の露店で250ブルという言い値を200ブル(約1200円)まで下げて靴を購入。そこまで悪くない買い物だったと思っています。
条件はつきますが、交渉による買い物を受け入れると旅もやりやすくなります。
「定価がない」ことが当然の世界もあります。
ダナキルツアーで使った水色の靴。
◆ぼったくらないように
旅でぼったくられるのは嫌ですが、逆に「ぼったくってしまう」のもよろしくありません。払うべきお金はきちんと払った方が気持ちよくなれました。
・ロモ・サルタード
ペルーの小さな町の食堂に入ったとき、お昼の日替わり定食がなかったので、表の看板のメニューに6ソルと書かれた「ロモ・サルタード(Lomo Saltado)」を注文。お店の人が醤油を買いに行ったりしてたので少し待ちますが、牛肉たっぷりのお皿が出てきました。
その間に厨房では「ロモサルタードって幾らだったけ?」「6ソル」「それじゃあかん、書き直してきて」というゴニョゴニョした会話が繰り広げられていました。外国人だと思って油断して話したのでしょう。でも、彼女たちのスペイン語はなんとなく理解でき筒抜けでした。
案の定、会計時には1ソル(約36円)上がって7ソルでした。ちょっと文句は言ったのですが、それなりにお肉が入ったお皿だったので支払います。悪意のない小さなミスだったので受け入れました。
お店のおばちゃんは「書き直してなんかないわ」としらをきっていました。しかし、表へ出るとメニューのロモ・サルタードの「7」だけ黄色のチョークになっています。あまりにも雑な証拠隠滅でした。トラブルだったのに、足取り軽くお店を後にできました
牛肉たっぷりのお皿。
黄色のチョークで書き換えた証拠。
・両替にて
ルワンダからタンザニアの入国時、残りのルワンダフランをタンザニアシリングに両替しようとしました。しかし、2600フランしか渡していないのに両替のおっちゃんは3600フラン受け取ったと勘違い。もしかして残高が3600フランだったかも電子端末を立ち上げエクセルのデータを確認しても2600フランしか残っていません。だから、おっちゃんに「それじゃぁ、損してしまいますよ」と正しい残高で計算してもらいました。
自転車旅の仲間から、マラウイからタンザニアへ入ると両替商という名の詐欺師が集まってくると聞いていました。だから、タンザニア国境は身構えていましたが得するどころか損する両替商しかいませんでした。
このパターンは買い物のお釣りでもあります。足りない場合は抗議して下さい。勘違いだけでなく意図的にやる人もいます。しかし、お釣りが多いこともあります。たいてい勘違いしているので、素直に返してあげましょう。そうした方がお互い幸せになれます。
ルワンダ→タンザニアの国境付近。
・ヒッチハイク
顔が濡れて力がなくなるアンパンマンのように、チャリダーマンはタイヤが駄目になると一気に腑抜けてしまいます。「チューブが破けて力が出ない」です。パンク修理をしないといけません。アフリカを走行中は補給に失敗してタイヤにかなりの不安を抱えていました。ごまかしごまかし走っていましたが、マラウイの首都リロングウェ手前でパンクが頻発。リロングウェで何かしらの対策が必要でした。それでも、またパンクします。いつものように道脇で修理していると、何人か地元の若者が集まってきました。手伝ってくれます。暇つぶしだろうと軽く見ていました。でも、全部終わったらお金欲しいという要求。いやいや、頼んでませんし、むしろ邪魔だったので却下。そんな面倒なことあって意気消沈。自走を諦めてヒッチハイクで首都へ向かうことにしました。
道路上の警察の検問でかくかくしかじか事情を話すと小型のトラックを止めてくれました。ビバ権力。むき出しの荷台が乗車スペースでフル装備の自転車も問題なしでした。乗合バス扱いで何人か地元の人たちも乗っていました。遮るものがない荷台の上は全身に風を浴びることができます。それどころか弱い雨まで降ってくる始末。雨を避けるように団子になって肩を丸める地元の人たち。車とはいえそこそこハードな時間でした。リロングウェに到着して、迷いましたがそれなりのお金を払いました。運転手は「お金はいいよ」と言いましたが、そうはいきません。途中降車した地元の人たちも普通にお金を渡していました。それを見た上で、ただ乗りするなんてありえませんでした。受け取ってもらいました。
リロングウェでパンク修理。
自分をよく見せるようなエピソードばかり並べましたが、私の旅は節約旅だったので、たくさんの人のお世話になっています。日が暮れたのに安宿が見当たらない、でも野宿も怖いという場所では、お願いして民家やレストランの脇でテントを張らせてもらっていました。お金を払うことや不用品を渡すこともありましたが、基本は善意にただ乗り。けっして褒められた方法ではありません。こうして受けてきたたくさんの無償の親切は別の形だとしても返していかなくてはならないと思っています。
国内外問わず、買い物では払う方も受け取る方も、双方が気持ちよくなれるお金のやり取りを心がけたいものです。
(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
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