サイエンス

遺伝子を調べて実年齢よりも身体年齢が高いか低いかをチェックできると判明

by Tristan Le

人の体は年齢を重ねるごとに老化していきますが、必ずしも60歳の人よりも80歳の人の方が身体的に老化しているとは限らず、60歳の人が加齢に伴う病気を患っているかもしれない一方で、80歳でも元気で健康に生きているパターンもあります。そんな実年齢と身体年齢の違いについて、アメリカのソーク研究所の研究チームが「遺伝子を調べることで身体年齢を予測する機械学習アルゴリズム」を開発しました。

Predicting age from the transcriptome of human dermal fibroblasts | Genome Biology | Full Text
https://genomebiology.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13059-018-1599-6

Age is more than just a number: machine learning may be able to predict if you’re in for a healthy old age - Salk Institute for Biological Studies
https://www.salk.edu/news-release/age-is-more-than-just-a-number-machine-learning-may-be-able-to-predict-if-youre-in-for-a-healthy-old-age/

Salk scientists find genetic signatures of biological aging - The San Diego Union-Tribune
https://www.sandiegouniontribune.com/business/biotech/sd-me-salk-genetic-signs-aging-detected-20181224-story.html

ソーク研究所の研究者であり実験を主導したSaket Navlakha氏は、今回のプロジェクトが論文共著者のMartin Hetzer氏と研究所の中庭で会話を交わしたことからスタートしたと述べています。Navlakha氏は生物学的データセットを分析するための機械学習アルゴリズム開発に興味を持つコンピューター科学者であり、一方のHetzer氏は長年にわたって老化に関する分野で研究を続けてきた人物です。Hetzer氏は人間の老化について新たなデータを収集したいと考えていました。

そこで2人はソーク研究所のポスドク研究員であるJason Fleischer氏に声をかけ、3人で「特定の範囲に焦点を当てずに老化の遺伝子的兆候を発見する」というプロジェクトを立ち上げました。老化現象の兆候を突き止めるという目的だけはあったものの、研究でどのような発見が得られるのかは予測できず、全くのブラックボックス状態でプロジェクトはスタートしたとのこと。

研究チームは健康な1~94歳の人々合計133人を対象にして実験を行い、遺伝子を分析するために参加者から真皮の成分を作り出す線維芽細胞を採取したとのこと。線維芽細胞に目を付けた理由として、研究チームは「単純で非侵襲的な方法で採取できること」「数週間から数カ月で入れ替わる他の細胞と違い、一生にわたって体内にとどまり続ける細胞であることから、老化の兆候を含む可能性が高いと考えられていたこと」といった点を挙げています。


10歳ごとに平均13人の参加者から採取された線維芽細胞は研究室内で培養され、RNA-Seqという細胞中のRNA配列を解読して遺伝子の発現などを調べる方法で分析されました。その後、RNA-Seqデータを分類するためのカスタム機械学習アルゴリズムを使用することで、研究チームは平均して±4年以内の誤差で細胞を採取した人物の年齢を予測できるようになったとのこと。

Fleischer氏は今回の研究について、「私たちは何か特定のものを見つけようとせず、全ての遺伝子発現の変化を調べてアルゴリズムに分類させる方法を取りました」と語り、これまでに生物学的老化の研究で用いられてきた手法とは異なる方法を使ったとしています。研究チームは他の研究者も今回の研究結果を使用できるように、データを公開しました。

また、アルゴリズムが正しく動作していることを証明するために、研究チームは先天的遺伝子異常を原因とする早老症の一つ、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群の患者10人からも線維芽細胞を採取し、アルゴリズムで判定を行いました。その結果、早老症の患者は実年齢よりもおよそ10年ほど高齢であるという予測結果が出たそうです。

by rawpixel.com

今回の研究は老化の遺伝的兆候について明らかにしたものであり、遺伝子発現の変化そのものと老化の因果関係がわかったわけではないと研究者は強調しています。その一方で、今後も多くのデータを訓練して機械学習の精度を上げていけば、ある人の身体年齢が実年齢よりも衰えているかそうでないかが判定できるようになるとみています。

もしも実年齢よりも身体の高齢化が進んでいる場合、早期に健康的なライフスタイルへの転換を進めて加齢に伴う多くの病気を予防することができるとのこと。Navlakha氏は、「老化はアルツハイマー病やその他の神経病を含む多くの病気をもたらします」と語っており、早期の予防治療が多くの人々を救う可能性があるとしました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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