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「マンホールのフタ」を通信ネットワークの中継アンテナに活用する試み

by Aaron Lau

2018年時点で携帯電話などの無線通信システムとして主流となっているのは第4世代移動通信システム(4G)ですが、その100倍高速な通信が使えるようになるといわれているのが第5世代移動通信システム(5G)です。日本ではNTTドコモauSoftBankといった大手キャリア各社が2020年の商用化を目指して研究開発を進めていますが、この5G普及に必須となる中継アンテナを、マンホールのフタで代用しようという試みが注目を集めています。

Vodafone manhole covers to improve mobile coverage
https://mediacentre.vodafone.co.uk/news/vodafone-lifts-lid-on-manhole-covers-to-improve-mobile-coverage/

Manhole Covers Serve as Antennas Expanding Wireless Network Coverage - IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/tech-talk/telecom/wireless/manhole-covers-serve-as-antennas-expanding-network-coverage

5Gは高い周波数帯を用いた無線通信であり、30GHz以上のミリ波スペクトルを使用する予定であるため、電波の直進性が極超短波より高まることから、「電波が基地局や建物の影まで届きにくくなる」という欠点があります。


この問題を克服するため、大規模MIMOアンテナを備えたスモールセルを用いるという戦略があります。なお、スモールセルは通常のアンテナ基地局を補完するために用いられる出力およびカバー範囲の低い基地局です。

しかし、5G用のスモールセルが既存の4Gのカバー範囲レベルに達するには、2024年までかかるという予測もあり、かなりの時間が必要になると考えられています。加えて、5G対応のスモールセルの数は2025年までに1310万局にも達するとのことですが、この数字は既存の使用されているスモールセルのわずか3分の1程度だそうで、このペースで基地局およびスモールセルが増加していくと、特に基地局が多く配置される都市部はアンテナだらけになってしまいます。

実際、既に多くのスモールセルおよび基地局が至る所に設置されているため、新しいスモールセルを設置する場所がほとんどないという問題もあります。

by Hasan Iqbal

そんな中、イギリスに本社を置く大手通信キャリア・Vodafoneのエンジニアが、「マンホールのフタ」を「フタ兼移動通信システムのアンテナ」として活用するという独創的なアイデアを提案しています。このアイデアは、増殖する基地局が都市景観や交通を乱す原因となっている、という指摘に対する解決策にもなり得ます。

マンホールのフタに基地局を設置するというアイデアは、記事作成時点でも一部の4Gネットワーク用のスモールセルなどに活用されています。Vodafoneのエンジニアはこれを将来的な5Gネットワークにも応用できると考えており、同社のシニア・ネットワーク・デプロイメント・マネージャーを務めるジェームズ・グレイリング氏は、「マンホールは密集した都市環境でソリューションを提供する機会を与えてくれました」と語っています。


また、Vodafoneの広報担当者はマンホールのフタを用いた基地局が5Gネットワークの一部として活用される可能性は十分にあるとしており、プレスリリースによればマンホール・アンテナを用いた通信の接続性はかなり信頼できるものであるとのこと。ただし、Vodafoneの広報担当者はマンホール・アンテナがVodafoneの5G戦略の一部になるかどうかまでは断言しませんでした。

同じように、Vodafoneのネットワーク・メディア・リレーションズ・マネージャーを務めるアリー・スティーブンス氏は、「5Gネットワークの導入のためマンホールのフタを用いたソリューションを使用することは可能と考えますが、まだ正式には決定していません」とコメントしています。

それでもグレイリング氏はマンホールのフタを活用したアンテナの印象的な機能のいくつかを明かしています。グレイリング氏によると、「現在使用されているマンホール・アンテナの周波数帯域は1695~2690MHz程度で、4Gで使用された場合、最大195Mbpsのダウンロード速度が出る」とのこと。

なお、グレイリング氏によると、マンホールにアンテナを設置した場合、これが携帯電話の信号に干渉することはないものの、マンホールに起因した電力損失を起こす可能性はあるとしています。加えて、Vodafoneのマンホール・アンテナがどれくらいの規模で設置されることになるのかは記事作成時点では不明であり、グレイリング氏は「我々はモバイルネットワークのニーズを満たすのに最適な固定ネットワーク資産を特定する段階にある」とだけ返答しています。

by Shounen21

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in ハードウェア, Posted by logu_ii

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