ファッション業界は上位20社が業界全体の97％にあたる利益を独占

by freestocks.org

さまざまなブランドがしのぎを削っているファッション業界には、いくつもの国際展開を行う有名な企業が存在しています。しかし、そんな海外進出が一般的となったファッション業界において、「一握りの企業が業界全体の利益の大部分を占める」という構造ができあがっていると報じられています。

The State of Fashion 2019: An ‘Urgent Awakening’ for the Industry
https://www.businessoffashion.com/articles/intelligence/the-state-of-fashion-2019

Zara, Nike, LVMH, and the handful of other brands making nearly all fashion's profits — Quartz
https://qz.com/1485141/just-20-fashion-companies-are-making-almost-all-of-the-industrys-profits/

アメリカのコンサルティング会社であるマッキンゼー・アンド・カンパニーは、さまざまな価格帯や地域にまたがって500以上のファッション企業についての分析を行いました。その結果、2017年にはなんと上位20％の企業が業界全体の利益のうち「128％」を上げていることが判明したとのこと。

「全体の100％を超える利益を上げる」という事態が実際に起こりうるのか、不思議に思う人もいるかもしれません。しかし、調査報告によると「業界下位20％の企業が2017年の業界利益の34％を失う損失を出した」ため、この現象が発生したそうです。マッキンゼーはファッション業界において、利益を生み出す側と損失を出す側の二極化が進んでいるとしています。

ファッション業界トップの20％には依然として100社もの企業が含まれていますが、マッキンゼーがさらに「業界上位20社」に絞り込んでみたところ、ファッション業界全体の利益の97％を上げていることも明らかになりました。トップ20社が占める業界全体の利益は2008年に100％を超えていましたが、2009年に大幅に低下。しかし、2010年からは再びほぼ右肩上がりで上昇を続けています。

また、同時に「損失を出しているファッション企業」の数も急速に増加しており、2010年と比較すると2017年に損失を出した企業数はおよそ2倍になっているとのこと。

上位20社に含まれる企業にはさまざまなタイプが存在し、ZARAの親会社であるインディテックスやH&Mといったファストファッション、ナイキやアディダスといったスポーツ系ブランド、ルイ・ヴィトンを含むファッション複合企業体のLVMHにリシュモンなどの高級ブランドなど、価格層やターゲット層は多種多様です。

その一方でこれらのトップ企業には、「他のブランドと比べて突出して売上高が大きいわけではないが、その代わりに売り上げに占める利潤が大きい」という共通点があるそうです。企業としてのスケールの大きさをいかし、最大限製造コストを下げつつ大規模展開を行うことで、ファッション業界上位の企業は利益を出しています。

また、業界トップ20社のうち12社は2008年から10年の間変わっておらず、一貫してファッション業界上位に君臨し続けているとのこと。マッキンゼーによればこれらの企業はブランドの構築に大きな投資を行っており、持続可能な経営モデルを維持しているとしています。なお、トップ20社には日本でユニクロを展開するファーストリテイリング(13位)が名を連ねています。

もう一つマッキンゼーが述べているのが、「2019年にはハイブランドと低価格帯ブランドが成長していく一方、その中間に位置するブランドは低成長となる」という傾向です。業界上位と下位の二極化だけでなく、ファッションブランドのターゲット自体も二極化していく可能性があるとマッキンゼーは指摘しています。