メモ

Apple Storeのスタッフには「使ってはいけない言葉」がある

by Michael Wyszomierski

Apple Storeは、Appleによって直営されている販売店および技術サポート拠点です。Apple Storeは記事作成時点で24カ国に500店舗以上があり、日本には9店舗存在しています。このApple Storeで働くサポートスタッフに配られるマニュアルには「使ってはいけない言葉」が定められているとThe Guardianが報じています。

Claps and cheers: Apple stores' carefully managed drama | Technology | The Guardian
https://www.theguardian.com/technology/2018/dec/03/claps-and-cheers-apple-stores-carefully-managed-drama


スティーブ・ジョブズ氏に引き抜かれる形でAppleへ入社したロン・ジョンソン氏は、Appleブランドの「大使館」としてApple Storeをプロデュースしました。ジョブズ氏とジョンソン氏は、Apple StoreのサポートスタッフはAppleブランドを客に紹介する「大使」であり、あからさまに客へ製品を売りつけるべきではないと考えていました。


Appleの製品が壊れてしまった時、Apple Storeのスタッフはただ客から修理代や交換代を受け取るのではなく、客の感情をポジティブなものにしつつ信頼を回復させることを求められます。両氏は「Appleのブランドイメージを人間化して、完全にコントロールする」という目的を掲げてApple Storeをプロデュースしようとしていたそうです。

そこでジョンソン氏は自ら個人面接を行い、競合他社の店舗に勤務する陽気なスタッフを引き抜き、Apple Storeのオープニングスタッフをそろえました。さらに5人の店長候補を一流ホテルとして名高いザ・リッツ・カールトンの訓練プログラムに送り込み、コンシエルジュのスキルを学ばせました。

Apple Storeに配置されるサポートスタッフは「Genius(天才)」と名付けられ、Apple Storeでサポートスタッフが待つカウンターを「Genius Bar」と名付けました。なお、ジョブズ氏はこの名称を聞いて当初は嫌がったものの、次の日には商標登録を申請するよう弁護士に指示したそうです。

by tripu

「Genius」という名前を聞くと、まるでApple Storeのサポートスタッフが信じられないほどの知性を持った技術者であるように思えますが、Geniusの真の役割は感情に訴えかけて商品を売ることだとThe Guardianは評しています。その役割を可能にするため、Apple Storeのサポートスタッフ向けに「Genius Training Student Workbook」と題したマニュアルが存在しているそうです。

このマニュアルは、有望な天才が感情的なコミュニケーションを用いて客の体験をコントロールし、客の緊張を解消して幸せにしつつ、財布のひもを緩めさせることを目指しています。また、客が製品に対してトラブルに遭遇した場合、Appleの製品がトラブルの元であるというイメージが客の中にすり込まれてしまわないように、ただ謝罪するだけではなく客に共感することも勧められています。

例えば「Genius Training Student Workbook」が教えるテクニックの1つに、Feel(感じる)、Felt(感じた)、Found(気づいた)という3つの「F」があります。客が「このMacは価格が高すぎます」と言ってきた場合、Geniusは「あなたがそう感じる(Feel)のも分かります。私もこの価格は少し高いと感じました(Felt)が、内蔵されているソフトウェアや機能に真の価値があると気づきました(Found)」と答えるように書かれています。

by Robert Couse-Baker

さらに「クラッシュ(crash)」「ハング(hang)」「バグ(bug)」「問題(problem)」といった言葉を使わないよう指示されているとのこと。代わりに「反応しない(does not respond)」「反応が止まった(stops responding)」「状態(condition)」「重要な点(issue)」「状況(situation)」といった言葉を使うようにマニュアルでは示されています。他にも、「非対応です(incompatible)」ではなく「動きません(does not work with)」といった言葉の言い換えが求められているそうです。

Geniusが働くApple Storeには、階段からテーブル、トイレのマークの色に至るまで徹底的に制御したいと考えていたジョブズ氏とジョンソン氏のアイデアが反映されています。二人がこだわり抜いた、Apple Storeの直感的にすべてを理解できるほどわかりやすいレイアウトは、Appleのブランドを確立するほどにユニークなものとなりました。Geniusによる接客パフォーマンスは、あくまでもAppleによって徹底的に管理されている状況で発揮されているものというわけです。

一方で、Appleは過去2年にわたって店舗のデザインを見直し、「Genius Bar」という名称を「Genius Grove」に改めました。また、2018年11月にパリ・シャンゼリゼ通りでオープンしたApple Storeは店内と店外の境界を曖昧にするために窓はすべて開かれ、鉢植えの木を配置することで、店舗内を半ばパブリックな空間として提供しています。

by Romain Moisescot

ファッションブランド・バーバリーの元幹部でApple Storeの小売部門のトップを務めるAngela Ahrendts氏は「私たちはApple Storeをもはや『店舗』とは呼ばず、『街の広場』と呼びます」というコメントを報道向けに発表しています。「Ahrendts氏は、Apple Storeがコミュニティと一つになることを思い描いているようですが、実際に望んでいるのはその真逆で、コミュニティが店舗にすり寄っていくのでしょう」とThe Guardianは論じていました。

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in メモ, Posted by log1i_yk

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