iPhoneだけで撮影する映像作家が優れた芸術家に贈られる「ターナー賞」を受賞
iPhoneのカメラ機能は非常に高性能なものとなっており、すでに全編がiPhoneだけで撮影された映画が公開されているなど、プロの映画監督や映像作家もiPhoneを使い始めています。そんな中、イギリス人映像作家のシャーロット・プロジャー氏がiPhoneだけを使って撮影された映像作品で、50歳以下のイギリス在住の芸術家に贈られる賞である「ターナー賞」を受賞したと報じられています。
Turner Prize 2018 – Exhibition at Tate Britain | Tate
https://www.tate.org.uk/whats-on/tate-britain/exhibition/turner-prize-2018
iPhone film-maker Charlotte Prodger wins 2018 Turner prize | Art and design | The Guardian
https://www.theguardian.com/artanddesign/2018/dec/04/iphone-film-maker-charlotte-prodger-wins-2018-turner-prize
44歳のシャーロット・プロジャー氏はスコットランドのグラスゴーを拠点として、20年にわたって映像作品を作り続けてきました。そんなプロジャー氏は近年になり、映像作品の撮影にiPhoneを使用するようになったとのこと。そして、スコットランドの田舎の風景やラジエーターにかけられたTシャツなどを撮影した映像作品「Bridgit」により、2018年のターナー賞を受賞するに至りました。
Bridgitの制作にあたって、プロジャー氏は1年間にわたって自宅や旅行先での撮影を行いました。映像にはプロジャー氏のモノローグが挿入されており、1990年代にスコットランドのアバディーンで暮らしたプロジャー氏の回想や、イギリスのミュージシャンであるジュリアン・コープ氏の著書「The Modern Antiquarian」の引用などが語られています。言及する内容は多岐にわたり、階層社会やジェンダー、セクシュアリティの問題などにも触れているそうです。
全編で32分のBridgitをおよそ1分45秒ほどにまとめたトレーラーがこれ。のんびりとした田舎の風景を車窓から収めた映像や、暗い海を進むタンカーを捉えた映像にプロジャー氏のモノローグが重なっています。Bridgitに使用されている全ての映像はiPhoneで撮影されたものです。
Charlotte Prodger, BRIDGIT, 2016 - excerpt on Vimeo
審査議長を務めたアレックス・ファーカーソン氏によれば、プロジャー氏の作品はiPhoneのカメラを非常にうまく活用しており、撮影された伝統的な風景には心理的な重みが感じられるとのこと。また、iPhoneでこれほどまでに広大な映像が撮影できるのは予想外だったとして、「これまでの人生経験や自意識の形成を扱ったこの上なく印象的な作品だ」と語りました。
ターナー賞の授賞式は2018年12月4日(火)に行われ、プロジャー氏にはナイジェリア人の小説家であるチママンダ・ンゴズィ・アディーチェ氏から、賞金の2万5000ポンド(約360万円)が贈呈されました。プロジャー氏は非常に光栄だと語り、自身が映像作品の制作にiPhoneを使うことについては「iPhoneは非常に使いやすいツールであり、世界を歩いている途中に映像を撮影できます」としており、まるでiPhoneを自身の延長戦にあるものとして位置づけているとのこと。
賞金の使い道について尋ねられると、「生活費になるかもしれないし、スタジオの家賃や請求書の支払いに使います。それと、ちょっとしたご褒美にジャケットを買うのもいいですね」とプロジャー氏は語りました。写真の真ん中に映るのがプロジャー氏。
Appleのティム・クックCEOもプロジャー氏のターナー賞受賞に反応し、iPhoneで撮影された映画が高く評価されたことを喜んでいます。
Congratulations to Charlotte Prodger, winner of Britain’s prestigious Turner Prize. A first for a film shot on iPhone, and another milestone in the democratization of photography and filmmaking. https://t.co/zlQbelQIPb
— Tim Cook (@tim_cook) 2018年12月5日
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