デジタル広告詐欺の罪でロシアなどの国外ハッカー8人をFBIが国際手配し起訴、アメリカへの身柄引き渡しへ
アメリカの連邦捜査局(FBI)が、インターネット上の広告から不正に広告収入を詐取したデジタル広告詐欺の罪でロシア・ウクライナ・カザフスタンのハッカー8人を国際手配しました。8人を国際手配したアメリカは海外で逮捕された容疑者らの身柄引き渡しを求めており、「たとえハッカーが世界のどこにいようとも、アメリカがらみのデジタル犯罪者は断固としてアメリカで裁く」という強烈な意思表示を行っています。
Two International Cybercriminal Rings Dismantled and Eight Defendants Indicted for Causing Tens of Millions of Dollars in Losses in Digital Advertising Fraud | USAO-EDNY | Department of Justice
https://www.justice.gov/usao-edny/pr/two-international-cybercriminal-rings-dismantled-and-eight-defendants-indicted-causing
インターネット上のデジタル広告に関して詐欺行為を犯した罪で、Aleksandr Zhukov、Boris Timokhin、Mikhail Andreev、Denis Avdeev、Dmitry Novikov、Sergey Ovsyannikov、Aleksandr Isaev、Yevgeniy Timchenkoの8人の容疑者がニューヨーク・ブルックリンの連邦裁判所へ起訴されました。これらの容疑者のうち6人がロシア籍(うち1人はウクライナ籍も保有)、2人がカザフスタン籍であり、アメリカからみれば外国人による国外犯です。主犯格であるOvsyannikovは2018年10月にマレーシアで、Zhukovは11月にブルガリアで、Timchenkoは11月にエストニアでそれぞれ逮捕され、他の被疑者も海外で逮捕されており、アメリカへの身柄引き渡しを待つ状態です。
8人の被疑者は、2014年9月から2016年12月までの間に、アメリカ・テキサス州のデータセンターの1900台ものサーバーを使って、オンライン広告をサイトに表示したと偽装し、さらにその広告がサイト閲覧者にクリックされたことを装うことで、5000を超えるドメインでデジタル広告が閲覧されたとデジタル広告主を欺き不正に広告代金を詐取した「デジタル広告詐欺の罪・その1」と、2015年12月から2018年10月の間に、アメリカや他の地域の個人や企業に対して同意を得ずに合計170万台以上のPCにマルウェアを感染させて世界規模のボットネットを構築し、バックグラウンドでサイトの広告を読み込ませて何十億もの広告ビューを稼いで不正な広告料支払いを受けた「デジタル広告詐欺の罪・その2」の容疑がかけられています。
なお、FBIはOvsyannikovの逮捕後、様々な民間企業と協力して被疑者らが使っていた「Kovter」「Boaxxe」と呼ばれるマルウェアで構築されたボットネットを特定した上で、関係する8つのドメインを停止させてデジタル広告詐欺ボットネットを機能不全にし、さらには海外のパートナーの支援を得て、スイスなどの複数の犯罪関連銀行口座も特定したとのこと。協力した海外の法執行機関として、マレーシア司法長官、マレーシア警察、インターポールのマレーシア国家中央局、ブルガリア最高検察庁、ブルガリア総領事のサイバー犯罪対策局、エストニア検察総長、エストニア警察、ドイツ連邦政府のサイバー犯罪情報局、オランダ警察、フランス警察のサイバー犯罪極、スイス連邦司法裁判所、ユーロポールなどを挙げています。
アメリカ国外にいる8人ものサイバー犯罪者を国際手配し、海外の捜査機関と連携して被疑者を逮捕した上で起訴し、アメリカへの身柄引き渡しを求めた今回の事件について、ニューヨーク州東部連邦検事のリチャード・P・ドナヒュー氏は「この事件は、FBIが他の法執行機関と協力するなどして、この種の企てを捕捉しそれ自体を壊滅させ、正義に照らして犯罪者を処罰するためにはあらゆるリソースを投入する、という強力なメッセージを送るものです」と述べています。
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