ハッカーに「協力するか」「刑事訴追されるか」の選択を迫るFBIの手法とは？

By Xoan Baltar

FBIがITを捜査に活用する技術をあの手この手で高めているとささやかれていますが、IT技術の向上のために、ハッカーを取り込むのに強引な手法を用いており、「そのやり方がフェアでない」と、FBIに訴追されて有罪判決を受けた元・ハッカーが糾弾しています。

Hacker Claims Feds Hit Him With 44 Felonies When He Refused to Be an FBI Spy | WIRED
http://www.wired.com/2015/02/hacker-claims-feds-hit-44-felonies-refused-fbi-spy/

「FBIから持ちかけられた捜査への協力を断ったところ、44の起訴事実で訴追された」と激白するのは、アメリカ・テキサス州の元・ハッカーのフィデル・サリナス氏。サリナス氏は結果的に、禁固6カ月、1万600ドル(約127万円)の罰金を科されることになりました。

サリナス氏によると、2013年5月にFBIの要請を受けて、テキサス州南部地区のFBIオフィスに呼び出されたとのこと。当時、妊娠中だった妻とFBIのオフィスに行くと、サリナス氏は別室に呼ばれ妻はロビーで待機するようにと伝えられました。結局、FBIとサリナス氏の話し合いは6時間以上に及び、その間、妊娠中の奥さんはロビーで待たされるはめになったそうです。

サリナス氏によると、FBIの2人のエージェントはメキシコの麻薬カルテルによる麻薬密売と地方局への贈収賄事件について捜査中で、麻薬組織と結託する職員を摘発するための情報収集活動に、ハッキング技術を駆使して協力するよう求めてきたとのこと。この要請の背景には、サリナス氏が所属していたハッカー組織が2011年にメキシコの麻薬カルテル・ゼータをハッキングすることを企てたというハッキング未遂事件で2012年にFBIの摘発を受け、サリナス氏のすべてのコンピュータ機器が押収されたという事情があるとのこと。つまり、FBIは麻薬カルテルをハッキングできる「腕」があると見込んでサリナス氏への捜査協力を要請したというわけです。

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このような捜査への協力要請そのものは違法ではなく、実際に、ハッキングスキルを見込まれて捜査協力するハッカーも多いところ、サリナス氏は「密告屋のように振る舞う気はない」と、要求を拒否。「君のそのスーパーパワーで我々を救い、アメリカ市民を救うべきだ」と強く捜査協力を求めるFBIに対してサリナス氏は断固拒否したとのこと。結局、6時間以上の押し問答の末に、サリナス氏は解放され帰宅しました。

しかし、この面談から4カ月後、サリナス氏はコンピュータ詐欺の起訴事実でFBIに訴追されることになりました。それから半年後、FBIは13の起訴事実を追加、さらに30の余罪を追及するという波状攻撃をしかけ、サリナス氏は結局、合計44の被疑事実で起訴されることになりました。

サリナス氏の刑事弁護人を務めたトア・エイクランド弁護士によると、サリナス氏はまさかこのような事態になると予想していなかったこともありFBIとの面談内容を録音しておらず、捜査協力を求められたという証拠は何一つなかったそうです。

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司法取引の可能性を考えたエイクランド氏は、サリナス氏に対して公判が終わるまで、事前にFBIからの捜査協力要請があったことを明らかにするのは控えるようアドバイスしつつ、FBIと交渉し、最終的に比較的軽微な28の罪についてのみ争うよう司法取引が成立したとのこと。その結果、サリナス氏には禁固6カ月、1万600ドル(約127万円)の罰金という有罪判決が下ることになりました。

サリナス氏の主張を裏付ける証拠がないため事の真偽は定かではありませんが、仮にサリナス氏の主張が真実であれば、FBIの捜査手法は問題だとエイクランド氏は考えています。エイクランド氏は、「FBIが重罪で次々と起訴した背景には、サリナス氏へ圧力をかける意図があったと見るべきです。捜査協力を拒む者に対して執念深く訴追するFBIの体質は不公正だと考えています」と述べています。