日本の「世界で最も薄い紙」を作る職人に迫るムービー
千年以上にもわたって作られてきた、世界一薄い和紙こと「典具帳紙」を製造する和紙メーカーに密着したムービーを、海外の映像メディアGreat Big Storyが公開しています。日本で古くから和紙を作ってきたメーカーが、なぜ海外メディアに取り上げられることとなったのかは、典具帳紙の特殊な性質にあります。
Making the Thinnest Sheet of Paper in the World - YouTube
和紙の原料として使用される「コウゾ(楮)」の繊維の直径は0.02mmといわれています。
それをシート状の「紙」にする技術を持っているのは、世界中でも日本の高知県にある「ひだか和紙」だけです。
このひだか和紙で作る和紙は、「世界で一番薄い和紙と言えると思います」とのことで……
手が透けて見える様子からも、その薄さがよくわかります。
ひだか和紙があるのは、日本の高知県。
ひだか和紙の代表取締役である鎮西寛旨さんが登場。
「原料のコウゾを使って典具帳紙という特殊な和紙を作っています」
典具帳紙は、7~8世紀を起源とし、千数百年の歴史があると言われています。
「この特別な和紙を作るのに必要な知識が代々受け継がれてきたわけです」
世界一薄い和紙である典具帳紙作りは、原料となるコウゾを農家から仕入れることから始まります。
これがコウゾ。
こんな感じの干し草のような状態でコウゾは工場にやってきます。
アップで見るとこんな感じ。一見するとワラのようです。
その後、コウゾを煮込みます。
大量のコウゾが一気に窯で茹で上がり……
そのまま水にドボン。
茹でたコウゾは細かい繊維に砕き、その後、水と「ねり」と混ぜ合わせ……
その後、薄いシート状に成型されます。
そうして完成したのがこの典具帳紙。
「出来上がった紙は透明感が高いんですけれど、長い繊維で構成されていますので、ある程度しなやかであるというところが特徴です」
紙の薄さをチェック
続いて映し出されたのは、日本の東京にある国立公文書館。内閣総理大臣が各省庁などから移管を受けた重要な公文書を、歴史資料として保存・管理している場所です。
職員の女性が広げているのは、まさにひだか和紙の典具帳紙。
薄い典具帳紙を小さくカットしていますが、一体何に使用するのでしょうか……?
「薄い和紙ですので、劣化して脆くなった修復対象物の修復や保護に使っていただいています」
典具帳紙は主に国立系の図書館や博物館で広く使われているとのこと。
有名どころで言えば、イギリスの大英図書館やアメリカ議会図書館。日本でも、国立公文書館や東京国立博物館などで使用されているそうです。
「私たちは責任感を持ってこうしたモノづくりに取り組んでいます」
「誰にもできないことにチャレンジしているという面で、一緒にやっている仲間たちだとか、この仕事を引き継いでくれる人たちにとっても誇りになる仕事だと思っています」という鎮西さんの言葉でムービーは終了です。
なお、典具帳紙はAmazon.co.jp上でも販売されており、A4サイズ10枚入りが税込3240円となっています。
Amazon | 世界一薄い和紙 土佐典具帳紙 A4 10枚入 | 和紙 | 文房具・オフィス用品
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