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薬殺刑は本当に「人道的」な死刑執行方法なのか?

by Sara Bakhshi

日本の死刑では絞首刑が採用されていますが、アメリカでは多くの州で薬物を使った薬殺刑が行われています。薬殺刑は「人道的だ」と主張されたことから採用されるようになりましたが、フォーダム大学のDeborah Denno氏によると、実際には「電気いすや銃殺刑よりも暴力的ではない」ということはないとのこと。死刑のあり方が変わりつつある現状について、Popular Scienceがまとめています。

As states scramble to find execution drugs, experts say it’s time to let lethal injection die | Popular Science
https://www.popsci.com/execution-lethal-injection-alternative-humane

薬殺刑が実行された実例でいうと、タクシー運転手を2人殺害したとして死刑判決を受けたCarey Dean Mooreは、まず抗不安薬としても知られるジアゼパムを大量に投与され意識を失った後、体をまひさせ、呼吸を止めるために鎮痛剤のフェンタニルとベシル酸シサトラクリウムが投与されました。そして23分後、Mooreは死を宣告されました。この様子を見ていた人は、Mooreの顔が最初に赤くなり、次に紫色に変わったこと、そして動いていた胸が止まったことを述べましたが、死刑方法について苦情を言うことはありませんでした。エモリー大学の麻酔学教授であるJoel Zivot氏は「死刑囚は眠りに落ち、死んだかのように見えます」「しかし、体の内側は燃えています。これが薬殺刑の問題です。薬殺刑は『公衆の目』のためにデザインされたものであり、皮膚の下で毒が細胞を犯していることを隠しています」と語っています。

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「どの死刑方法が残酷なのかを確かめる実験を実施することはできませんが、私は薬殺刑が残酷であることをよく知っています。薬殺刑に使われる化学物質や、その効果をよく知っているからです。一連の検死について研究し、臓器が機能不全に陥っているのを見てきました。肺に液体がたまった死刑囚や、心臓や肝臓が肥大した死刑囚を見てきました」とZivot氏。

また、薬殺刑にジアゼパムやフェンタニルといった薬が使われることで、これらの評判が悪くなるため、製薬企業が死刑執行に自社の薬を使わないよう求めて裁判を起こしたこともありました。このため、州が死刑に使う薬の在庫がなくなった際には同じ薬を再び手に入れることが難しく、かといってこれまで使ったことのない薬を代わりに使うと、死刑執行がうまくいかなくなるリスクもあります。また、近年は代わりとなる薬そのものも手に入れにくい状況となりつつあるとのこと。

薬が手に入らなくなった州に残される選択肢は、薬が手に入るまで死刑執行そのものを延期するか、他の方法で死刑を執行するかです。多くの州は後者を選択する傾向にあり、サウスカロライナ州では2017年の春に上院が薬殺の代わりに電気いすを用いることを認める法案を通過させました。この法案は下院で否決されましたが、次の立法議会で再び持ち上がる可能性があるといいます。実際に近年の死刑方法としては用いられていませんが、アメリカには電気いすを認める州が5州、銃殺刑を認める州が3州存在するほか、絞首刑やガスによる方法が認められる州もあります。

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ただし、「薬殺刑も他の死刑方法と同様に残酷である」という主張が叫ばれているにも関わらず、他の死刑方法よりも薬殺刑が好まれるという傾向は依然として続いています。薬が不足している州の中には海外や、認可を受けていない機関から薬を入手しているところもあるそうです。一方でうまく薬が入手できなくなった州は他の死刑方法を模索するようになり、多くは「死刑を廃止する」という発想を持たないとのこと。サウスカロライナ州では1912年から計282人の死刑が執行されてきましたが、薬不足のため2011年以降は死刑が行われておらず、2018年現在、36人の死刑囚の刑執行が保留となっています。電気いすの導入を提案した元検察で上院議員のWilliam Timmons氏は「電気いすが好きなわけではありませんが、サウスカロライナ州で死刑が行われるとしたら、その義務を遂行しなければなりません」と語りました。

ただし、電気いすが法律で認められても、歴史的な経緯から実際に電気いすによる死刑は行われない可能性は高いそうです。一方で、死刑の支持者によって採用される可能性があるのが「銃殺刑」です。

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Denno氏によると、「銃殺刑は人道的であるとエビデンスが示している」とのこと。最高裁判所裁判官の Sonia Sotomayor氏は、銃殺刑は薬殺刑よりも好ましいと述べており、将来的には「このような目に見える、しかし痛みの少ない暴力が、『見た目には現れないけれど激しい痛みを伴う』薬殺刑よりも好まれるかもしれない」と示唆しました。

このように、薬殺刑の代替となる方法が検討されていますが、死刑そのものの賛否については、2018年現在、賛成派は54%となっています。2016年には賛成派が49%だったので数は少し増加していますが、1996年には78%だったので全体としては減少傾向にあります。

記事作成時点のアメリカでは31州が死刑を認めていますが、過去5年間において死刑が執行されたのはそのうち数州であることから、「死刑が廃止されるのは時間の問題」だとDenno氏は見ています。しかし、それまでは、各州は「薬殺刑は残酷」という議論をふりきって薬殺刑を続行するか、あるいは過去の死刑方法を復活させて国民からのバッシングに火をつけることになりそうです。

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in メモ, Posted by logq_fa

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