アメリカ史上最年少で殺人罪に問われた12歳の弟と13歳の姉が刑期を終えまもなく釈放へ

2015年7月28日、アメリカにある刑務所ではある30歳の女性が刑期の完了を迎えます。この女性、キャスリーン・ジョンズ受刑者は弟のカーティス・ジョーンズ受刑者とともに1999年1月に父親のガールフレンドだった女性を殺害した事件の犯人として有罪判決を受けており、事件当時の年齢は姉のキャスリーンが13歳、カーティスは12歳というまだまだ小さな少年でした。

Is a fresh start possible for young Brevard killer?
http://www.floridatoday.com/story/news/local/2015/01/10/fresh-start-possible-young-brevard-killer/21547895/

Curtis and Catherine Jones will soon be released - Business Insider
http://www.businessinsider.com/curtis-and-catherine-jones-will-soon-be-released-2015-7

1999年1月、姉のキャスリーン受刑者(以下「キャスリーン」)と1歳下の弟カーティス受刑者(以下「カーティス」)は、父親が所有していた拳銃を使って父親のガールフレンドだったソーニャ・ニコール・スペイツさん(当時29歳)を殺害しました。

事件がおこったのは、フロリダ州ココアビーチにある姉弟が住む自宅だったとのこと。事件直後の発表では、2名の姉弟は父親がスペイツさんとの結婚を考えていることに嫉妬したための犯行とされていましたが、その後の捜査で隠されていた内容が明らかにされます。児童福祉団体が作成した報告書によると、2名の姉弟は幼少期からスペイツさんとは別の「家族の同居人」による性的虐待を受け続けており、それに耐えきれなくなった姉弟が犯行に至ったことが徐々に明らかになってきたのです。

事件前のある日の夜、キャスリーンがシャワーを浴びていたところいきなりシャワー室のドアが開けられた音に気がつきました。驚いたキャスリーンが振り返ったところ、ドアから「家族の同居人」が押し入ってきます。キャスリーンは恐怖のあまりシャワー室の隅にかがみ込んで泣き声をあげましたが、その同居人は彼女の様子を眺めながら自慰行為にふけっていたとのこと。その夜、キャスリーンは日記に「全員殺すしかない」と記しています。

キャスリーンの助けを求める声は誰にも届くことがありませんでした。そんな彼女の叫びを唯一受け止めたのが、弟のカーティスだったとのこと。キャスリーンが虐待の被害をカーティスに打ち明けたところ、なんとカーティスも同居人から同様の虐待を受けていたことが発覚。逃げ場を失っていた二人の姉弟は、唯一の解決策として父親と同居人、そして父親のガールフレンドであるスペイツさんを殺害することで、自分たちが置かれた状況から逃げ出す計画を立てることにしたのです。

計画は姉のキャスリーンが立案し、カーティスはこれを補助することに同意。2人が用いた武器は、父親のベッドルームに保管されていた口径9mmのセミオートマチック銃でした。

まず2人が狙った相手こそが、スペイツさんでした。スペイツさんは虐待には関係なかったことが明らかになっていますが、当時の2人にはそんな余裕すら残されていなかったのかもしれません。計画通りに弟のカーティスが銃を構え、スペイツさんに向けて弾丸を発射。そこで自分たちの犯した罪の大きさに気がついたのか、カーティスは錯乱状態に陥ります。キャスリーンは弟をなだめようと試みますが、怖くなった2人は自宅近くの森の中に逃げ込みました。そしてそのまま、翌日になって姉弟は警察によって森の中で隠れていたところを発見されるに至りました。

当時この事件は、アメリカでも大きな衝撃を持って受け止められました。当時は少年だった2人の姉弟ですが、裁判では大人と同じ扱いを受け、アメリカ史上最年少で死刑あるいは終身刑が言い渡される可能性のある第一級殺人罪が問われました。最終的には情状酌量により第二級殺人罪の判決が下され、両者には18年の刑期とその後の生涯にわたる観察処分が言い渡されました。判決が下され、法廷を後にしようとしたカーティスは弁護士の方を振り返り、刑務所に自分のニンテンドーのゲーム機を持ち込んでもいいかと尋ねたそうです。

以下のムービーでは、事件から10年がたった2009年に行われたキャスリーン受刑者へのインタビューの様子などを見ることができます。

Young killer nears prison release, seeks fresh start - YouTube


事件から10年後に当時の様子を振り返るキャスリーン受刑者。「どこかの時点で、私は単純に逃げ出せたことで幸せに思っていました。もちろん、自分がこんな風に話すことがおかしな話だと言うことはわかっていますが、自分が置かれていた状況から距離を置き、1人になって安全な状況に置かれた時点がありました」と複雑な心境を語っています。

父親のカーティス・ジョーンズ・シニアとともに法廷で審判を受けるカーティスとキャスリーン。姉弟にはステーシーという名の母親がいましたが、2人がまだ5歳ぐらいの時に夫からのドメスティックバイオレンス(DV)が原因で家を出たとのこと。また、父親は1989年に2名を銃で殺害したとして起訴されたことがありましたが、後に正当防衛として軽犯罪の判決を受けています。

さまざまな背景があるにせよ、自らが犯してしまった罪を償ってきた姉弟ですが、それぞれの将来には新たな道が開けつつあるとのこと。キャスリーンは2013年に文通を通じて知り合ったアメリカ海兵隊員のレーマス・K・フレミングさんと獄中のまま結婚。フレミングさんは空母で勤務していたときに新聞でキャスリーンの記事を目にし、そこから文通がスタートしたそうです。

また、弟のカーティスは牧師となり、2017年5月に刑務所を出る予定。姉と同時期に収監されたカーティスですが、刑務所の塀が悪天候により破壊された際、仲間と一緒に脱走を試みたことから刑期が延長されているとのこと。彼の左腕にはヒョウ柄の、そして腹部には「Mob」と書かれたタトゥー(入れ墨)が施されているとのこと。

10代の大切な時期をいわゆる「塀の向こう側」で過ごしてきた姉弟にとって、実際の社会にいかにして戻るのかが大きな課題になることは想像に難くありません。2人はスマートフォンを使ったこともなければ、自動車の運転を学んだこともなく、もちろん仕事に就いた経験もなし。さらに、生涯にわたる観察処分が科されているため、ほんのささいな罪を犯しただけで刑務所へ逆戻りと言うことにもなりかねません。キャスリーンはFlorida Todayに宛てた手紙の中で「10代の時期と青年期のほとんどを刑務所の中で過ごした後に、私はこれまで過ごしてきた世界とは全く違う社会へと放されることになります。もちろん恐怖はあります。普通の社会人として学ばなければならないことがたくさんあり、私は全く無知の人です。常に物事を教えてくれる誰かに頼りっきりの30歳の人であるということは、決して魅力的なことではありません。私は13歳の時と同じぐらい無知なままで、刑務所を出るのです」と記しています。

2人が犯した罪は決して消えることはありませんが、一方で虐待の過去が事実とすれば、2人の人生に落とした影はあまりにも大きなものであると言わざるを得ません。