メモ

幼い子どもがYouTubeで育つ社会は従来にない未知の世界を作り出すかもしれない

By Robert Couse-Baker

ネットで好きなムービーが自由に見られるYouTubeはあらゆる世代で利用者が多く、大人から子どもまで毎日のようにYouTubeを利用しているといわれています。しかし情操教育の大切な時期である幼年期にYouTubeに夢中になる子どもが増えていることを問題視する見方も広まっています。

The Dangers of YouTube for Young Children - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/magazine/archive/2018/11/raised-by-youtube/570838/

YouTubeは世界的に多くの人の支持を集めており、日本でもあらゆる世代に浸透しています。BIGLOBEが2017年2月に発表した調査結果によると、小学生の半数以上が「HIKAKIN」などユーチューバーの配信ムービーを楽しんでいるという状況が明らかにされています。

小学生の半数以上がユーチューバー動画を視聴BIGLOBEが「子どものスマホ動画視聴事情」を調査 | プレスルーム | ビッグローブ株式会社
https://www.biglobe.co.jp/pressroom/info/2017/02/170228-1

YouTube上では、子ども向けに特化したムービーも配信され、人気を集めています。その頂点に君臨しているのがYouTubeチャンネルのChuChu TV Nursery Rhymes & Kids Songs(以下「ChuChu TV」)で、チャンネル登録数2000万以上を誇り、最も人気のあるムービー「Johny Johny Yes Papa and Many More Videos」は再生回数が15億回を超えるというお化けコンテンツとなっています。

ChuChu TV Nursery Rhymes & Kids Songs - YouTube
https://www.youtube.com/user/TheChuChuTV/featured


ChuChu TVはインドの音楽プロデューサー、ヴィノス・チャンドラー氏が立ち上げたチャンネル。当初は自分の娘のために制作したムービーでしたが、YouTubeで配信を始めたところ爆発的な人気を獲得するに至りました。日本語では「きらきら星」の曲名で親しまれるTwinkle Twinkle Little Starをアレンジした曲から始まる以下のムービーは、顔の部位や数の数え方などを教えるようなものにも見えますが、教育的要素の盛り込まれたいわゆる「子ども向け番組」とはどこか違った「楽しさ」「親しみやすさ」に特化した内容と感じられるものになっています。

Twinkle Twinkle Little Star and Many More Videos | Popular Nursery Rhymes Collection by ChuChu TV - YouTube


ChuChu TVはインドのチェンナイにオフィスを構え、200人のアニメーターが日々コンテンツの作成に従事しているとのこと。YouTube時代を象徴するようなChuChu TVは、子ども向け番組の定番といえるセサミストリートやディズニーなどに肩を並べるほどの存在感を示すようになってきており、セサミストリートの再生回数が50億回であるのに対してChuChu TVは全体で190億回にも上っているそうです。


チャンドラー氏によると、ChuChu TVの最大の市場は米国とインドとなっており、合わせて全体の約3分の1を形成しているとのこと。さらに、イギリスやカナダ、メキシコ、オーストラリア、アフリカやアジアなど世界中からアクセスを集めるChuChu TVは1日あたりの再生回数が2000万回にも上っているといいます。チャンドラー氏(以下の写真右)は「私たちは第2のディズニーになりたい」と展望を語っています。


しかしここには賛否両論が存在しています。フォロワー数や再生回数をみれば、YouTube時代ならではのコンテンツとして歓迎されていることは一目瞭然といえますが、特に教育関係者の間からは警鐘を鳴らす見方も寄せられています。

「消費者が好むものを提供するのが仕事だ」という見方には一定の説得力がある一方、主に教育的な観点からは「子どもに合った内容のコンテンツを見せるべきだ」という意見が挙がっています。テレビの世界では、1968年にアメリカで「Children's Television Workshop」と呼ばれる組織がフォード財団、ニューヨークのカーネギー・コーポレーション、米国政府からの資金提供を受けて設立されました。そしてマサチューセッツ工科大学の創設者であるジム・ヘンソン氏と教育専門家の助けを借りて、子ども向け番組の象徴「セサミストリート」が誕生しました。


その後、テレビの世界は2010年頃にピークを迎えた後、徐々に視聴者数の減少に直面するようになりました。その原因は他ならぬ「オンラインムービー配信」の興隆です。

20世紀において、テレビは教育のための道具として使われるという側面を持っていました。テレビ番組を制作して放送するためには多くの専門家と大量の設備が必要とされ、大きな組織が動くことでテレビの世界が作られていきました。もちろんそこには教育に関する専門家の存在もあり、時代ごとに変化を遂げながらも専門的な知識が反映された番組作りが行われてきました。もちろんテレビの世界にも、教育とは正反対のバイオレンスやポルノといった要素が混在していたことは事実ですが、その内容には良し悪しはあれど一定の制限が加えられてきました。

By Chris

しかしYouTubeの世界の中では、そのような枠組みはほとんど効力を発揮することはありません。その善悪は別として、基本的に自由なコンテンツ制作が可能なYouTubeの世界では、従来はあまり見られなかった内容のムービーが配信されているといいます。

その例の1つとして挙げられているのが、「Johny Johny Yes Papa and Many More Videos」をはじめとするChuChu TVが配信しているムービーです。このムービーでは、夜中にコッソリとベッドを抜け出して台所に置いてある砂糖をつまみ食いした子ども「Johny」がお父さんに見つかるものの最後には仲良く遊ぶという、よくわかるようなわからないようなストーリーが描かれています。

Johny Johny Yes Papa and Many More Videos | Popular Nursery Rhymes Collection by ChuChu TV - YouTube


UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)Center for Scholars & Storytellersの共同ディレクターを務めるColleen Russo Johnson氏はこのムービーや、子どもとブタのキャラクターが群衆の前で踊る様子を描いたムービー「Head, Shoulders, Knees and Toes Kids Dance Song」などを見て、明るい画面や互いに無関係な要素、そして早い内容の展開などが「本来このムービーが果たすべき教育的な役割から子どもたちを遠ざけてしまうリスクがある」と指摘しています。

Johnson氏は、子どものための番組はより集中力を高めるために、あたかも本を読む時のように展開をゆっくりとしたものにするべきであると述べています。子どもの理解スピードは大人に比べて遅いため、ゆっくりと一つずつ納得させるようにして進めないと理解が進まず、集中し続けられる時間も短くなってしまうというわけです。

YouTubeは子ども向けYouTubeとして「YouTube Kidsアプリ」を提供していますが、毎月19億人にのぼるYouTube利用者数のうちYouTube Kidsアプリを実際に利用している人はごく一部に留まっているとのこと。時代が進むとメディアの形が変わり、従来の実績あるツールが存在感を失うという状況が生まれるのは世の常といえるもの。しかしその中でも数々の取り組みによって新しい形態のメディアが出現してきたのがこれまでの歴史ともいえます。よく言われるように、YouTubeなどネットのプラットフォームが台頭してきたことで、メディアの発信力は大企業から個人へとシフトする動きが続いています。そんな中で、どのメディアを選択して利用するのかを選べる力が、ユーザーの側にはこれまで以上に求められるということなのかもしれません。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
YouTubeは自身が社会に悪影響を及ぼしていることを認識、しかし真の打開策を打ち出すには準備不足か - GIGAZINE

GoogleがYouTube上の人気ムービーの内容精査を計画中、ローガン・ポールの二の舞を避ける - GIGAZINE

世界中で大炎上中のYouTuberローガン・ポールは日本で一体何をしでかしたのか? - GIGAZINE

Netflixしか見ない子どもたちは1年間で230時間分のCMを見ずに済んでいる - GIGAZINE

ウェブの父ティム・バーナーズ=リーが「ウェブが武器にならないようにテック企業を規制する」必要性を語る - GIGAZINE

in メモ,   ネットサービス,   動画, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.