NBA選手の中でも飛びぬけて背の高いショーン・ブラッドリーの遺伝子に隠された秘密

NBAに所属するプロバスケットボール選手の平均身長は203センチメートルといわれ、恵まれた体格を持つ一握りの選ばれた人のみが参加できる世界です。そのNBAの中でも頭一つ抜けた高身長で知られた往年の名選手ショーン・ブラッドリーのゲノムから、とてつもない高身長の秘密が明らかになっています。

Common DNA Variants Accurately Rank an Individual of Extreme Height
https://www.hindawi.com/journals/ijg/2018/5121540/

BYU genetic researchers solve a giant mystery: How Shawn Bradley got to be so tall
https://news.byu.edu/news/byu-genetic-researchers-solve-giant-mystery-how-shawn-bradley-got-be-so-tall

ブリガムヤング大学の生物学者のジョン・カウウェ博士は、数年前に飛行機のファーストクラスで、元NBAプレイヤーのショーン・ブラッドリーと隣り合わせになりました。NBAの中でも長身で知られたブラッドリーのプレイは、以下のムービーで確認できます。

Shawn Bradley Top 10 Plays of Career Highlights - YouTube

ブラッドリーの身長は229センチメートルで、人類の中で99.99999パーセンタイルに位置する背の高さだとのこと。規格外のブラッドリーはファーストクラスの広々としたシートでさえ、上体を屈めて足をすくめた窮屈な姿勢を強いられていたそうです。

遺伝子学者でもあるカウウェ博士はブラッドリーに話しかけて、「あなたの高身長とその遺伝子に興味がある」と伝えたとのこと。ブラッドリーはNBAで一流選手として活躍するほどの高い身体能力を備えており体は健康そのもので、高身長はいわゆる巨人症と呼ばれる遺伝子疾患が原因ではなく、高身長の原因となる特別な遺伝子をブラッドリーが持っているのではないかとカウウェ博士は考えたというわけです。

カウウェ博士が何を見つけるのか興味深いと感じたブラッドリーは、研究のサンプルとなることを快諾し、高身長の原因となる遺伝子を探す研究が始まりました。

カウウェ博士の研究チームは、GIANT consortiumによってリストアップされていた「高身長に影響を及ぼす遺伝子的変異」を分類することから始めました。そして、影響力の強そうなものから並び替えて候補となる2910の遺伝子的変異を選び出しました。さらに、1020人分のゲノムデータセットを使って、身長に影響を与えている遺伝子をスコア化して並び替えました。その後、ブラッドリーのゲノムから得た30億個の塩基対と高身長遺伝子を比較することにしました。

カウウェ博士は、既知の高身長に影響を与える遺伝子の特別な変異がブラッドリーにはあるだろうと考えていましたが、変異は確認されなかったとこと。代わりにテスト結果から得られたのは、「ブラッドリーが高身長に影響を及ぼす可能性の高い一般的な遺伝子をほとんどすべて持っている」という事実だったとのこと。カウウェ博士は「もし、あなたが群を抜いて背が高いなら、もしかすると高身長に関係する遺伝的特性をすべて持っているかもしれません。ショーン・ブラッドリーのDNAは、高身長遺伝子をすべて持つということの可能性の限界を定義しているのです」と述べています。

今回の研究は遺伝学的には、小さな効果を及ぼす多数の座位が形質に関係しているという仮説から、全ゲノムの解析結果から個々の多型に重みづけをした上で、ゲノム全体でのリスク分析を行う「ポリジェニック・スコア」が、「人並外れて背が高い」という極端な表現型の予測に成功しやすいことを発見したという意義があるとのこと。

なお、ブラッドリーが一般的な人よりも198個も多くの「高身長遺伝子」を持っていることが今回の研究でわかっており、「最も背の高いランク」に属することがわかりました。ただし、高身長遺伝子の数から身長を正確に推測することはできなかったそうです。