「人間vsAI」のオンラインゲーム3番勝負の初戦は人間チームが勝利を収める
生身の人間のゲームプレイヤーと進化著しいAI(人工知能)がストラテジーゲーム「Dota 2」の強さを競う勝負が、カナダのバンクーバーで開催されているイベント「The Internasional」で実施されました。イーロン・マスク氏らが設立した「OpenAI」が開発したAIと人類による3番勝負は、人類チームの勝利で幕を開けました。
Humans grab victory in first of three Dota 2 matches against OpenAI - The Verge
https://www.theverge.com/2018/8/23/17772376/openai-dota-2-pain-game-human-victory-ai
The Internasionalは、Dota 2の開発元であるValve Corporationが開催するDota 2の公式世界大会。世界中のeスポーツのプロチームが参戦するトーナメントで、優勝賞金は1100万ドル(約12億円)、賞金総額は2500万ドル(約28億円)を超えるという大会となっています。
Dota 2 - The International
http://www.dota2.com/international/overview/
このイベントの中で実施されるのが、OpenAIによるAIチーム「OpenAI Five」と南アフリカのプロゲーマーチーム「Pain Gaming」の3番勝負です。この戦いでは各チームは5人のメンバーで結成されており、団体戦で雌雄を決します。ちなみに、OpenAI Fiveは2018年6月の時点で人間との戦いを制していましたが、この時はゲーム内のシステムにさまざまな制限が課されていました。今回のバトルはそれらの制限を取り去った上での戦いとなっています。
OpenAIの人工知能「OpenAI Five」がDota 2の5対5バトルで人間チームに勝利 - GIGAZINE
現地時間の2018年8月22日に実施された第1戦では、AIと人間がゲームの主導権を奪い合いながらの戦いを繰り広げた結果、Pain Gamingが勝利を収めるという結果になりました。その勝負内容は「接戦」と呼ぶにふさわしいものだったとのことですが、一方でAIチームの戦略には疑問が残される部分も見受けられたとのこと。たとえば、Dota 2の中には「ロシャン」と呼ばれる巨大な怪物が登場するのですが、AIはこのロシャンを倒すことに固執してしまう場面があったとのこと。
ロシャンは5人のヒーロー(戦士)が束にならないと倒せないほど強い存在なのですが、倒せばゲームの流れを変えてしまうほど強力なアイテムをゲットできるという特典があります。そのため、ロシャンを倒すのも戦略の1つではあるのですが、固執すると自陣の防御が手薄になってしまいます。人間チームはそのAIの弱点を突くことで、勝利を手にした模様です。
ここだけを見ると「AIもまだまだ」と思ってしまうかも知れませんが、一方でAIチームは高い戦略性を示した場面も存在したとのこと。あるヒーローが倒されそうになった時、人間チームであればそのヒーローを助けに行くことが多いのですが、その試みはしばしば失敗に終わり、戦略的なマイナスを生んでしまうことがあります。しかしAIチームはそこで「見方を捨てる」という判断をやすやすと下しながらも、結果的に状況を有利に持っていくという戦略性を示すこともあったそうです。AIゲーム研究者のマイク・クック氏は戦いを振り返って「ボット(AI)は以前よりもアグレッシブさが落ちたように見える」「ボットはその瞬間ごとの判断は非常に上手だが、より広いマクロレベルの決断に関してはあまり良くないようだ」などとツイートしています。
#OAI Snap thoughts:
— mike cook (@mtrc) 2018年8月23日
The bots are a lot less aggressive than before. They feel worse than the previous exhibition, I think (but still, amazing).
The bots are still very good at moment-to-moment, but they seem bad at macro-level decisions. I have more to say on this!
OpenAIの共同創設者兼チーフ・リサーチャーであるグレッグ・ブロックマン氏は対戦前、従業員による社内投票を行ったところ「勝利する可能性は50%未満」という結果が出ていたことをThe Vergeに対して明らかにしています。しかし人間はもちろんAIも戦いの結果から新たな学習を行ってさらなる強さにつなげていくことは明白。残された2戦がどのような結果になるのか、そしてAIが再び人類を上回ることになるのか、関係者やゲーマーの関心が集まります。
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