まるでモンスターボールのように深海生物を包み込んで捕獲する装置が開発される
クラゲや深海生物のような体が軟らかい生き物を傷つけないように海中で捕獲するロボットアーム「Rotary Actuated Dodecahedron(RAD:回転作動十二面体)」を、ハーバード大学のヴィース生物工学研究所が開発しました。
Studying aliens of the deep
https://wyss.harvard.edu/studying-aliens-of-the-deep/
‘Underwater Pokéball’ snatches up soft-bodied deep dwellers | TechCrunch
https://techcrunch.com/2018/07/18/underwater-pokeball-snatches-up-soft-bodied-deep-dwellers/
実際にRADがどんな感じで生き物を捕獲するのかは、以下のムービーを見るとよくわかります。
RAD Sampler: Rotary-actuated device for investigating delicate marine organisms - YouTube
海中、特に深海に生息する生き物の中には、例えばクラゲのように、体が軟らかいものが多く存在します。しかし、そのように繊細な生き物を海中で生きたまま捕獲することは、生き物の体を傷つけたり崩してしまったりするために難度が高く、深海生物の研究がなかなか進まないという問題がありました。
そこで開発されたロボットアームがRADです。RADは、まるでゲーム「ポケットモンスター」に登場するモンスターボールのように、海中の生き物を包み込んでダメージを与えずに捕獲することが可能です。
実際にRADの前で泳ぐクラゲを捕獲するところ。「花弁」と呼ばれる5枚の折り畳み可能なアームが連動してゆっくり閉じていき……
クラゲを十二面体の中に閉じ込めて捕獲します。RADの開閉は花弁の関節とパーツの形によって行われるため、複雑な入力や配線は必要ありません。花弁は生き物には直接触れず、周囲の海水ごと包み込むため、繊細な構造をした深海生物も傷つけずに捕獲することができます。
もちろん、そのまま花弁を再び開けば、捕獲した生物を傷つけることなく逃がすこともできます。
RADは深海探査艇にロボットアームとして取り付けることが可能。RADを無線操縦式の無人潜水艦に取り付けて実際に生き物を捕獲してみたのが今回の動作テストです。
動作テストはおよそ水深700メートルほどで行われましたが、RADは深度1万1000メートルまで耐えられる設計になっています。水深1万911メートルと世界で最も深いマリアナ海溝でも運用が可能というわけです。
花弁を構成するパーツは3Dプリンターで印刷されたもの。半透明な素材で作られているため、捕獲した生物の様子を十二面体の外から確認することができます。ムービーではRADの中で、捕獲されたイカが元気に泳いでいる様子が確認できます。
なお、RADの構造は以下の図の通りで、それほど複雑ではありません。RADを構成する5つの花弁はアームが取り付けられた正五角形2枚で成り立っており、折り紙に着想を得て設計されたそうです。RADはモジュラー式のロボットアームとして設計されていて、花弁のパーツはどれも同じ形をしているので、万が一パーツが破損しても低コストで修理をすることが可能です。
ハーバード大学ヴィース生物工学研究所のツィーアン・テオ氏は「RADは深海だけでなく、例えば宇宙といったような、低重力でデバイスの操作が難しいような環境でも活躍することが期待できます」と語っています。また、将来的にはRADにカメラやセンサーを追加し、生き物を捕獲するだけではなく、サイズの測定・ゲノムデータの採集も可能なモデルを計画しているとのことです。
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