サイエンス

全長わずか0.5mmの「世界最小のカニ型ロボット」が誕生、横歩きでチマチマ移動する動画も公開中


小型ロボットは人間が入れないような場所を探索したり、実用的なタスクを行ったりするなどさまざまな可能性を秘めています。新たにアメリカ・ノースウェスタン大学の研究チームが、「全長わずか0.5mmの世界最小のカニ型ロボット」を開発しました。ロボットが横歩きでチマチマ移動する動画も公開されています。

Submillimeter-scale multimaterial terrestrial robots
https://www.science.org/doi/10.1126/scirobotics.abn0602

Tiny robotic crab is smallest-ever remote-controlled walking robot - Northwestern Now
https://news.northwestern.edu/stories/2022/05/tiny-robotic-crab-is-smallest-ever-remote-controlled-walking-robot/

ノースウェスタン大学の材料工学教授であるJohn Rogers氏や機械工学教授のYonggang Huang氏が率いる研究チームは、全長わずか0.5mmという極小サイズのカニ型ロボットを開発しました。実際に研究チームが作ったカニ型ロボットが動く様子は、以下の動画で見ることができます。

Tiny robotic crab is smallest-ever remote-controlled walking robot - YouTube


画面の左下と右上に写っているのが、今回開発された超小型のカニ型ロボット。しっかり8本の足と2本の腕が付いています。


それぞれのロボットはブルブルと振動するようにして、ゆっくりと横歩きで移動することができます。


サイズはノミよりも小さく、なんとコインの側面に乗ることも可能なほど。


カニ型ロボットは複雑なハードウェアや油圧・電気機構によって動くのではなく、本体を構成する材料の特性を利用して動いています。ロボットの体は、加熱するとあらかじめ記憶させておいた形状に変化する形状記憶合金で作られており、一部が薄いガラスでコーディングされています。特定の位置にレーザービームを照射すると材料が加熱して体が変形し、冷却されるとガラスコーディングの弾性で形状が元に戻りますが、この形状変化の際にわずかな移動が生じるという仕組みです。ロボットの移動方向はレーザーを照射する方向によって制御可能とのこと。


Rogers氏は、「ロボットの構造は非常に小さいため、冷却速度は非常に速いです。実際、これらのロボットのサイズを小さくすることで、より速く走らせることができます」と述べています。Huang氏は、開発したロボットが1秒で体長の半分ほどの距離を移動できるとして、「陸上ロボットがこれほど小さいサイズで達成するのは困難です」と付け加えています。


研究チームは極小サイズのロボットを作るために、2014年に考案した「ポップアップ組み立て法」を採用しました。この方法は、まず平面上でロボットの構造を作り、それを平らに伸ばしたゴム製の基板上に貼り合わせるというもの。


ゴム製の基板が緩むと、表面に貼られていたロボットが屈折して「ポップアップ」するように3次元形状になるという仕組みです。なお、研究チームがあえてカニ型ロボットに焦点を当てた理由について、Rogers氏は「学生たちは小さなカニが横向きにはう動きにインスピレーションを受け、面白がっていました。これは創造的な気まぐれでした」と述べています。


Rogers氏は、「ロボット工学はエキサイティングな研究分野で、マイクロスケールのロボット開発は学術的にも楽しいテーマです」と述べ、マイクロロボットは産業分野で小さな構造物や機械を修理したり、組み立てたりするために利用できるほか、閉塞(へいそく)した動脈の詰まりを取り除いたり、内出血を止めたり、がん腫瘍を除去する外科手術を手助けしたりといった医療分野での応用も期待できると主張しました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
全長わずか2mmのアリ型ロボットが登場、3Dプリンターで出力可能 - GIGAZINE

「折り紙」構造を応用した小型・軽量ロボットが改良され、誤飲したボタン電池を体内から取り除ける「Ingestible Origami Robot」に進化 - GIGAZINE

1円玉以下の極小ロボットが自分たち専用の道具を自作したり合体して別のロボットに変身するムービー - GIGAZINE

極小のロボットを「服用」して病気を治すという研究が進行中 - GIGAZINE

虫の動きをマネて急旋回や急加速が可能になった高い敏捷性を誇る飛行ロボット「DelFly Nimble」 - GIGAZINE

in サイエンス,   動画, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.