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会ったこともなかった2人が何千億円も稼ぐ「Dropbox」を生み出す

by Web Summit

BBCが毎週更新する「The Boss」は、世界各地のビジネスリーダーを紹介する名物コンテンツです。このThe Bossで、クラウドストレージサービスの草分け的存在である「Dropbox」の創業者であるドリュー・ヒューストン氏とアラシュ・フェルドーシ氏がピックアップされており、創業時はまったく面識がなかった2人がどのようにしてDropboxをスタートさせたかが語られています。

How two strangers set up Dropbox and made billions - BBC News
https://www.bbc.co.uk/news/business-44766487

Dropboxの創業者でありCEOも務めているドリュー・ヒューストン氏は、自身が24歳であった2007年にクラウドストレージ事業を構想しており、実現のために資金を確保することに迫られていたそうです。そこで頼ろうとしたのが、シリコンバレーで最も有名なベンチャーキャピタルのYコンビネータでした。


Yコンビネータはヒューストン氏と彼が構想するDropboxに強い関心を抱いたものの、同時にヒューストン氏が強力なビジネスパートナーを獲得することも望んだそうです。Yコンビネータ側の主張は、「創業者が2人以上で、意志決定に1人以上を割り当てることができるようになれば、ベンチャーが成功する確率は格段に高まる」というこれまでの経験則から来たものでした。

Dropboxというクラウドストレージサービスを考案したヒューストン氏

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しかし、当時のヒューストン氏はDropboxをひとりで構想しており、さらに友人たちはさまざまな理由からビジネスに参加することができなかったそうです。しかし、共同創業者を探す必要があり、つまり、ヒューストン氏は「完全に見ず知らずの人物」を共同創業者にする必要があったというわけです。おまけに、共同創業者を探すためのタイムリミットはわずか2週間しかなかったそうです。

当時のことを振り返りながら、ヒューストン氏は「好きな大学から入学案内のメールを受け取ったような感覚でした。しかし、出願の締め切りはわずか数週間後であり、もうその日に決断する必要があったんです」と、とにかく切羽詰まった状況にあったと語っています。

そして素早く動いたヒューストン氏は、わずか2時間のチャットで「アラシュ・フェルドーシ」という名の22歳の学生を説得し、自身のビジネスに参加させるために学校を辞めさせます。ヒューストン氏にとってフェルドーシ氏は「友だちの友だち」という関係だったそうですが、それまで実際に会ったことは一度もなかったそうです。

ヒューストン氏とフェルドーシ氏が初めて出会い、そしてDropboxが設立されたのは2007年の出来事。それからわずか11年でDropboxは120億ドル(約1兆3500億円)以上の企業価値を持つまでに成長しており、創業者2人の資産額はヒューストン氏が30億ドル(約3400億円)、フェルドーシ氏が13億ドル(約1500億円)と試算されています。

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2人の創業者によって誕生したDropboxですが、そのアイデアはヒューストン氏が2006年後半にボストン発ニューヨーク行きのバスに乗っている際に思いついたものだそうです。当時のヒューストン氏はマサチューセッツ工科大学(MIT)のコンピューターサイエンス学科を卒業したばかりで、約6時間にもおよぶバスでの長旅にでかけている最中でした。

この旅の中でヒューストン氏はビジネスアイデアを練ろうと考えていたそうですが、当時ヒューストン氏が構想していたビジネスアイデアのすべてが保存されたメモリースティックを自宅に忘れてきたそうで、これが「ユーザーがどこにいてもオンラインからアクセスできるリモートストレージ」というDropboxのアイデア誕生のきっかけとなったそうです。その後、2週間以内でヒューストン氏はDropboxのプロトタイプを作成し、名前も思いついたとのこと。

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ヒューストン氏がDropboxのアイデアを構想し、プロトタイプを作成したわずか数カ月後、YコンビネータはDropboxに関心を示します。そして、ヒューストン氏は自身の母校であるMITで電気工学とコンピューターサイエンスについて学んでいた、フェルドーシ氏と出会い、2人はDropboxの創業者となるわけです。

ヒューストン氏はフェルドーシ氏を自身のビジネスに引き込んだ際のことについて、「学生センターで1~2時間会ったあと、次の週にはアラシュ(フェルドーシ氏)は学校を辞めていました」「振り返ってみればかなり狂った行為でした……。私はアラシュの両親が彼のために別の計画を練っていたと確信しています。でも、アラシュはDropboxをスタートすることに本当に興奮していたんです」と語っています。

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Martin Lafrance


そしてYコンビネータの投資を受け、Dropboxは2008年にサービスをスタートさせます。初期のDropboxは顧客を引きつけるために、RedditやSlashdotのようなディスカッションサイトや掲示板向けのプロモーション用ムービーを作成したそうです。これは技術分野のインフルエンサーに向けてサービスをアピールすることで、Dropboxについて多くのユーザーが積極的に話すことを期待して行ったものとのこと。このプロモーション活動が功を奏し、Dropboxのユーザー数はわずか5000人程度から数日で7万5000人にまで跳ね上がります。さらに、10日ほどでユーザー数は10~20万人程度にまで膨れあがったそうです。

その後、ヒューストン氏とヒューマンチームはインセンティブを導入したユーザー紹介制度を策定したことで、ユーザー数は飛躍的に増加していくこととなります。この「インセンティブを導入したユーザー紹介制度」というのは、既存のDropboxユーザーが新しいユーザーを紹介した場合、無料のクラウドストレージスペースが提供されるというものでした。

Dropboxが初期に行った顧客獲得のための施策については以下の記事でも説明されています。

Dropbox・Airbnb・reddit・Tinderなどは初期のユーザーをどうやって獲得したのか? - GIGAZINE


こうして一気に数百万人もの新規顧客を獲得したDropboxは、あのスティーブ・ジョブズの目にもとまることとなり、2009年には買収を提案されたこともあるそうです。なお、ヒューストン氏はジョブズのオファーについて話をすることを拒否していますが、過去のインタビューではオファーを断ったDropboxに対して「殺す」とジョブズが脅かしてたというエピソードが飛び出しています。なお、その後Appleは2011年に独自のクラウドサービスであるiCloudをスタートすることとなります。


そして2016年にはユーザー数が5億人を突破したDropbox。そのうち1150万人は年間使用料を払い、有料サービスを利用しています。さらに、2018年3月には上場も果たし、年間売上高は10億ドル(約1100億円)を超え、従業員数は2000人以上にまで成長しています。

今では大企業に成長したDropboxの初期を支えた2人の創業者は、記事作成時点ではヒューストン氏がCEOとして働き、フェルドーシ氏はシニアマネジメントチームで働いています。

How two strangers set up Dropbox and made billions https://t.co/xDo0ncmKr5 Read the latest feature in the BBC's The Boss profile series. pic.twitter.com/mPNBbMvlFq

— Will Smale (@WillSmale1)


なお、最初にDropboxに投資し創業に大きな貢献をしたYコンビネータ側から見たヒューストン氏とフェルドーシ氏についての秘話が、以下で語られています。

Dropboxのスタートアップに貢献したYC設立者が語る創業秘話とは? - GIGAZINE

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in メモ, Posted by logu_ii

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