「実際に人が居住する3Dプリンター製住宅」がオランダに建設される予定
3Dプリンターはさまざまな製品や部品を簡単に製造することを可能にし、軍隊で使用するさまざまな部品や自転車のタイヤ、人間の角膜などあらゆるものが3Dプリンターで作られ始めています。そんな中、オランダのアイントホーフェンという都市では「実際に人が居住する3Dプリンターで製造した住宅」を建設することが発表されています。
Dutch city to unveil world's first 3D-printed housing complex | AFP.com
https://www.afp.com/en/news/2266/dutch-city-unveil-worlds-first-3d-printed-housing-complex-doc-17h8dn1
People Who Live in 3D-Printed Houses Should Definitely Throw Shade - Geek.com
https://www.geek.com/tech/people-who-live-in-3d-printed-houses-should-definitely-throw-shade-1745829/
「3Dプリンターで家を作る」という発想は以前からあり、ロシアでわずか24時間で1軒の家を作り出すプロジェクトなどが行われてきました。そして新たに、アイントホーフェンでは市議会・アイントホーフェン工科大学・建設会社といった複数の団体が共同で、「プロジェクト・マイルストーン」という計画を立ち上げました。
プロジェクト・マイルストーンがどのような計画になっているのかは、以下のムービーを見ればわかります。
World’s first commercial 3D-concrete printing housing project
この草や木に囲まれた緑あふれる空間が……
3Dプリンター製の家が建設される予定地です。
アイントホーフェンの副市長であるヤシン・トルノーグル氏は、「3Dプリンター製の家自体は他の国でも建設されていますが、実際に人が住むというのは世界的に見てもユニークな発想です」と語ります。
「3Dプリンター製の家は、建築基準にも準拠しています」と話すのは、住宅組合の広報を務めるルディー・ファン・ガープ氏。
アイントホーフェン工科大学のテオ・サレット教授は、3Dプリンターで家を作るという計画に対して非常に意欲的です。
3Dプリンターを使えば、これまで作ることができなかったような形の家を建設することも可能だとのこと。ムービーでは、通常ではありえないようなグネグネとした壁を、3Dプリンターが簡単に作っていく様子が映されています。
難しい形状の家を作り出せるだけでなく、建設スペースが最小限で済むことも利点の一つだとサレット氏は話します。
また、材料も必要最小限しか使わないため、無駄な材料が出ずに持続可能性の高い建設方法だとも述べました。
ガープ氏も「実際に居住するエンドユーザーにとって、住みたい場所に家を建設できるのは素晴らしいことです」と語ります。
世界に対して3Dプリンター製の家がどれほどのクオリティを持っており、人間の居住にとってどれほど快適なのかを示すことにもなる今回の計画を、参加者らは「プロジェクト・マイルストーン」と名付けました。
建設される予定の住宅は全部で5軒。それぞれが非常にユニークな形になる見込みで、自由自在な建設が可能な3Dプリンターならではの特性を生かした住居になる予定です。
ガープ氏は「5つの不思議な石像が建ち並んでいるように見えるでしょう」と話しました。
「私たちは3Dプリンター製の家における、パイオニアになります」と語るのは、副市長のトルノーグル氏。
「新しい家々は、アイントホーフェンのDNAを持っており、紛れもなくアイントホーフェンの一部となるでしょう」とトルノーグル氏は述べ、工業都市であるアイントホーフェンは新しい技術を歓迎するとしています。
プロジェクト・マイルストーンは4つの企業に加え……
アイントホーフェン工科大学、そしてアイントホーフェン市が協力して進められているプロジェクトです。
サレット氏は「今回のプロジェクトは非常にユニークなものです」と述べました。政府や市だけでは3Dの住宅を建設することはできず……
企業だけの力でも、採算の問題から建設は不可能。大学だけでも建設することはできません。
ところが、それら3つが組み合わされば、3Dプリンター製の家を建設することが可能になるのです。
「革新的な試みをアイントホーフェンで実行できることを、誇りに思っています」とトルノーグル氏は語りました。
プロジェクト・マイルストーンで建設される予定の家は、2019年の半ばまでに最初の1軒を作りたいとしています。最初に作られる予定の家は、3つのベッドルームを備えた1階建ての住居になる見込み。プロジェクトでは今後5年間をかけて、合計で5軒のユニークな家々を建設するとしています。
ガープ氏は「今後、石工やレンガ職人のような専門的な技術を持った職人は減り、住宅建築が困難になる可能性も考えられます。そこで、3Dプリンター製の家は職人不足に対する新たな解決策を提示するのです」と語り、3Dプリンター製の家は大きな可能性を秘めているとしました。
なお、すでにプロジェクトには3Dプリンター製の家を借りたい人々の問い合わせが殺到しており、月額賃料は900~1200ユーロ(約11万7000円~15万6000円)に設定されているそうです。
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