ハードウェア

ゲームだけでなくAI開発などの未来を切り開いた歴史的GPU「NVIDIA NV20」


スーパーコンピューターのトレンドがGPU重視になるなど、GPUはゲームや映画のグラフィックスだけでなく、AI開発や気象予報などの分野でも活用されています。コンピューティングの主役にGPUを押し上げるきっかけを作ったのは、かつてNVIDIAが開発したコードネーム「NV20」だと言われています。

Chip Hall of Fame: Nvidia NV20 - IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/tech-history/silicon-revolution/chip-hall-of-fame-nvidia-nv20

古くからグラフィック描画技術を高める存在として、「ゲーム」と「アニメーション」が挙げられます。1995年にピクサーがトイ・ストーリーを全編デジタル制作して、コンピューターアニメーションの可能性を示しました。トイ・ストーリーのアニメーションは、各フレームを個別にレンダリングしてつなぎ合わせることで制作されていますが、このような手法はゲームの世界では通用しません。ゲームではコマンドや状況に応じて様々なシーンを描画する必要があり、リアルタイムのレンダリングが求められるためです。


1970年代以降、ビデオゲームの映像はコンピューターの進化とともに日々、目覚ましい進歩を見せてきました。PCゲーム市場が盛り上がる中で、CPUとの対比で「GPU」と呼ばれるグラフィック処理を行うチップが登場すると、NVIDIAもGeForceシリーズを世に送り出し、ライバルだった3dfxとの競争に決着をつけました。


3dfxとの戦いで勝利を収めたころ、NVIDIAは新たにコードネーム「NV20」と呼ばれる製品の開発に着手しました。当時のNVIDIAには、それまでのGeForce 2シリーズのGPUをより効率的なものに変えて性能を高めるという「最適化」路線と、まったく新しい機能を新開発するという「野心的な」路線の2種類の選択肢があったとのこと。野心的なプログラムでは、ゲーム開発者が利用しないかもしれない技術も含まれていたそうです。

結局、NVIDIAはより高い性能が実現できる可能性のある野心的な道を選び、NV20の開発方針が定まりました。NV20で最初に取り組まれたことは、メモリの分割方法の変更だったとのこと。128ビットのデータを4つの32ビットデータに分割することで、メモリのデータを効率的にフェッチするプロセスが作り出されました。また、3Dシーンの中で他の物体に隠れてしまう物体を予測することで、レンダリング処理を削減する「z-cull」と呼ばれるシステムが採用されました。これらの変更を実現するため、プロセスルールは150nmという当時では困難な微細化技術にNVIDIAは取り組んでいます。


これらの変更に加えて、NVIDIAはゲーム開発者に、ピクセルシェーダー頂点シェーダーを変更できるようにNV20を一部、プログラマブルなものに変更しました。開発者が完全にプログラム設定できるというわけではなかったものの、NVIDAはNV20で初めてゲーム開発者が設定できるオンボード機能を作りました。

こうしてNV20は「GeForce 3」として製品化されリリースされると、PCゲーム向けのグラフィックボードの他、カスタムチップとしてMicrosoftの初代Xboxにも採用されることになりました。


このNVIDIAの決定は、短期的に見ればXbox用のカスタムチップとして普及したように思えますが、長期的な視点から言えば、「GPUをグラフィック以外の用途で使うという扉を開くことになった」とIEEE Spectrumは述べています。GeForce 3以降のNVIDIA GPUは、プログラマビリティを提供し続けることになり、その結果、開発者は自らの目的のために「GPUハッキング」を行うようになったとのこと。これによって、GPUを機械学習アルゴリズムのトレーニングや気候変動の予測など科学技術計算に利用することにつながったそうです。

ゲーム用グラフィックスというGPUの機能を、さまざまなコンピューティング技術に応用できる基礎となったものは、NVIDIAがNV20の開発で取り入れた、開発者にカスタムのプログラムの余地を与えるという英断だったようです。

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in ハードウェア,   ゲーム, Posted by darkhorse_log

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