「携帯電話の位置情報記録を捜査するためには裁判所の許可令状が必要」と連邦最高裁が判決を下す
現地時間の2018年6月24日に、アメリカの連邦最高裁判所は、警察がモバイルサービスプロバイダのデータにアクセスして個人を追跡するためには裁判官の許可令状が必要という判決を下しました。
In Major Privacy Win, Supreme Court Rules Police Need Warrant To Track Your Cellphone : NPR
https://www.npr.org/2018/06/22/605007387/supreme-court-rules-police-need-warrant-to-get-location-information-from-cell-to
Supreme Court protects digital privacy of cellphone location records
https://www.usatoday.com/story/news/politics/2018/06/22/supreme-court-protects-privacy-cellphone-location-data/1053088001/
2011年、ミシガン州・オハイオ州で武装強盗を行った疑いで、ティモシー・カーペンターという男性が容疑者として逮捕されました。FBIはカーペンター容疑者を起訴するための証拠として計127日分の携帯電話のデータから1万2000か所以上の位置情報を調べあげました。この捜査は、データを令状なしで捜査することを認めるStored Communications Act(SCA)という法律に基づいて行われたものでした。
最終的にカーペンター容疑者は有罪判決を受けましたが、アメリカ自由人権協会(ACLU)は「SCAは、電話をどこにでも持ち運ぶという発想がない時代に制定された法律であり、現代に適用すべきではない。FBIが令状なしで行った携帯電話の位置情報捜査は不当なものであり、合衆国憲法修正第4条『相当の合理的理由がない捜査・逮捕・押収の禁止』に背いているため、証拠は棄却されるべきだ」と、カーペンター容疑者の代理人となって訴えていました。
「令状のない携帯電話の位置情報記録の捜査は認められるか」という問題について、連邦最高裁判所は裁判官の許可令状がなければ基本的に携帯電話の記録を証拠とすることはできないと裁定しました。裁定は5対4の多数決で決定していて、個人のプライバシーを擁護すべきという考えが勝利したといえます。
by Ted Eytan
判決文を書いたジョン・ロバーツ最高裁判所主席判事は、スマートフォンは人びとの生活に深く根ざしていて多くの個人情報を有していると述べ、今後警察が犯罪と戦うためには携帯電話の情報を捜査することも必要となると認めました。そのうえで、携帯電話の情報を捜査する場合には令状が一般に必要だとしています。
ただし、テロ・銃撃事件・誘拐事件などの緊急事態が発生した場合は、令状がなくても携帯電話の位置情報を捜査して証拠とすることはできると認めています。それでも「状況の緊急性が合衆国憲法修正第4条の下で客観的に見ても合理的である」と説明できる時のみ有用性を認めると判決文では述べられていて、基本的には個人のプライバシーを優先する姿勢を示しています。
また、この件を担当したサミュエル・アリート判事は、携帯電話を捜査に応用するためには法執行機関とプライバシーの関係を新しく見つめなおす必要があると述べています。また、現代技術を含む個人のプライバシーの範囲と限界を定める法律を制定するよう議会に要請するコメントを出しています。
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