「フェイクポルノはリベンジポルノよりもダメージが大きい」と弁護士が指摘

2017年の後半ごろから、AIを使ってAV女優の顔部分を別の人物に合成する「フェイクポルノ」が登場し、多くの女優やジャーナリスト、一般人が被害を受ける事態に発展しました。家庭内暴力を専門とする弁護士によると「フェイクポルノは非常に悪質である」と指摘しており、その被害はリベンジポルノ以上であるとのことです。

Deepfakes are about to make revenge porn so much worse
https://mashable.com/2018/06/24/deepfakes-revenge-porn-domestic-violence/#KZDyEg1zvOq0

家庭内暴力の被害者保護を行っているLaura's Houseの法律責任者である弁護士のアダム・ドッジ氏とサンフランシスコで複数の法律事務所のパートナー弁護士であるエリカ・ジョンストン氏は、2018年4月にフェイクポルノが被害者に対して、どのような問題を与えるかについてまとめた報告書を公開しています。

報告書によると、フェイクポルノの影響は配偶者や恋人との間であっても、自身の裸や性的な写真などの撮影を拒んできた女性にとても大きなダメージを与える可能性があるとのこと。このような女性は、リベンジポルノによる被害を受けることを全く想定していないため、オンライン上にアップロードされた自身のポルノ画像やムービーの存在を知ることで、精神的に大きなダメージを負うことになります。

フェイクポルノを作成するためには、一般公開されているSNSなどの写真やビデオから被害者の顔を切り取ってポルノムービーなどに合成する必要がありますが、2018年時点で公開されているツールを使用すれば数時間ほどの作業で行えてしまいます。ドッジ氏は「これは強化された『合意のないポルノ』である」とし、リベンジポルノなどよりも悪質であると指摘しています。

カリフォルニア州では、過去または現在の配偶者または交際相手によって、リベンジポルノがアップロードされた被害者は、家庭裁判所を通じて加害者の拘束命令を出すことができます。ジョンストン氏は「これはフェイクポルノにも当てはまる」と語り、フェイクポルノの公開はリベンジポルノと同等に扱われる可能性が高いと説明しています。

しかし、「合意のないポルノ」に対しての法律は州によって異なり、対応もまちまちです。警察などの法執行機関が全ての事件を捜査することはもはや不可能で、「合意のないポルノ」の投稿者に対して刑事罰を与えることができません。このため、加害者と戦うためには高額な費用を捻出して弁護士を雇い、民事裁判で争うことになります。しかし、十分な賠償金を得られない可能性があるため、被害者はリスクのある戦いを迫られることになります。

フェイクポルノの被害を受けた場合の拡散を抑えるための対策について、ドッジ氏とジョンストン氏は「SNSなどでプライベートな写真を非公開にすること」と「Googleなどのサーチエンジンの検索結果にフェイクポルノの画像やムービーが表示されないように削除を申し出ること」の2点を挙げています。また、恋人や配偶者がやたらとさまざまなポーズの写真を撮影しようとするなど、おかしな行動を見せるようになったら警戒が必要であるとも指摘。ドッジ氏とジョンストン氏は「パートナー間で写真を撮影するのであれば、撮影時期や状況をあらかじめルール化しておくことをおすすめします」と述べています。

ドッジ氏によると「フェイクポルノの被害を受け、なんとか問題を解決したとしても、元の状態に戻すためには大変な苦労を必要とする」とのこと。これは、被害者が投稿されたムービーや画像が偽物であると認識していても、それが本当に偽物であることを多くの人々に納得させなければならない作業が残っているためであり、「この作業は精神的にも肉体的にも大きな負担になる」とドッジ氏は語っています。