IBMが人間とほぼリアルタイムでディベートできるAIを開発
IBMがサンフランシスコで開催したイベントにて、人間とAIがディベートを行う「Project Debater」というシステムを公開しました。Project Debaterのゴールは「ディベートの標準的なルールにのっとり、人間にレスポンスを行うこと」であり、事前準備なしで議題が提示された時に、相手のスピーチから議題を理解し膨大な情報収集によって会話を成立させる様子がムービーで公開されています。
IBM Research | Project Debater
http://www.research.ibm.com/artificial-intelligence/project-debater/
What it’s like to watch an IBM AI successfully debate humans - The Verge
https://www.theverge.com/2018/6/18/17477686/ibm-project-debater-ai
ムービーは以下から見ることができます。
AI Learns the Art of Debate - YouTube
「我々が目指しているのは、『機械と人間は価値や意義のあるディスカッションを行える』ということを示すことです」と語るIBMの研究者、Noam Slonim氏。
イベント会場はこんな感じ。左側に人間のディベーター、右側にIBMのディベートシステムが配置され、ディスプレイにはスピーチの残り時間が示されています。時間内でAIと人間によってどれだけ実のあるディベートが行えるのかが示されていきます。
「コンピューターシステムは事実を提示し、人間とは別の形の議論を行うことで、会話や意志決定に加わることができます」と語るのは研究者のRanit Aharanov氏。
IBMの研究者がディベートできるAIシステムを作り出したのは2012年のこと。2018年になり、技術は大きく進歩しました。
「こんにちは、Dan。今日はここに来る機会をくれてどうもありがとう」とディベートシステムに話しかけられるディベーターのDan Zafrirさん。
ディベート前にディベートシステムに対して情報が与えられることはなく、ディベートそれ自体を通じて、そのコンセプトを理解しようとするとのこと。
「データを解析したところ、私は音楽教育を助成するべきだと考えます」と述べるディベートシステム。
ディベートシステムはスピーチが始まると、その文章の構成要素から議題を理解し……
余分なものを削除しながら、可能性がある議題の情報を収集し始めます。
「このシステムは進化し続けている」とのこと。
ディベーターのHayah Eichelerさんが「IBMのディベートシステムは世界中にあること全てについての意見を持っています。しかし彼らは税金を払っていないし、一方の我々は払っています」と早口でまくし立てると……
「あなたは1分当たり218ワードという極めて速い速度でしゃべっています。そんなに急ぐ必要はありませんよ」とディベートシステムからツッコミ。
思わず笑いが漏れる会場。
テクノロジーによって、意志決定者はより多くの情報を得て決定が行えるようになるとSlonim氏は語りました。
実際にイベントに参加したDieter Bohn氏は「非常に印象的だった」という感想を述べています。システムのデータバンクは約100分野にわたる何億という論文が蓄積しており、ディベートが始まると数分間データを調べる時間が取られますが、その後に議論の要点について短いスピーチを話し出すとのこと。この要点は、明瞭なものもあれば何かの引用や、明かに「記事から抜き出してきた」ということがわかるものもあったそうです。特にBohn氏が驚いたのはAIが「ほぼリアルタイムで」人間のディベーターと反対の立場に立って議論を行えていたことで、これまでは懐疑的だった「AIが仕事を奪う可能性」について初めて心配したといいます。
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