傷口を生体組織で覆って治療する「3D皮膚プリンター」が開発される
3Dプリンターが持つ可能性は非常に大きく、「3Dプリンターで家を作る」「鋼鉄製の橋をかける」といったプロジェクトが進行しています。そんな中、手で持ち運び可能な大きさの3Dプリンターを使い、傷口を生体組織で覆って治療する方法がLab on a Chipに発表されました。
Handheld skin printer: in situ formation of planar biomaterials and tissues - Lab on a Chip (RSC Publishing)
http://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2018/lc/c7lc01236e
U of T researchers develop portable 3D skin printer to repair deep wounds
https://www.utoronto.ca/news/u-t-researchers-develop-portable-3d-skin-printer-repair-deep-wounds
トロント大学の研究グループは、深い切り傷などの治療に際して皮膚組織を3Dプリンターで傷口に堆積させ、治療する方法を発表しました。皮膚の深い場所までケガをしてしまった場合、表皮・真皮・皮下組織という3つの層が傷つけられることがあり、一般的には健康な皮膚を植皮という形で移植する治療法がとられます。
大きな切り傷では、3つの層全てを覆うほどの皮膚組織を採取することが難しく、傷口の一部分が覆われないまま残ってしまうことがあります。そういった場合、当然のことながら植皮による治癒効果は低下してしまうとのこと。
研究チームはそういった大きな傷口を即座に治療するため、重さわずか2ポンド(約900グラム)ほどの3Dプリンターを使う方法を開発しました。この方法では、3Dプリンターから真皮中に豊富なタンパク質であるコラーゲン、傷の治療に寄与するフィブリンなどを混合した生体材料からなる「バイオインク」を射出し、傷口を埋めることができるそうです。
3Dプリンターからは均一の厚みで、ほぼ同一の幅を持つ生体組織のシートが得られます。研究チームはすでに動物実験の段階まで研究を進めており、ネズミおよびブタを対象とした切除傷モデルに対し、生体組織を沈着させることに成功しているとのこと。
今回の研究が実用化されれば、わずか数分でやけどや切り傷を治療することが可能であり、3Dプリンターの扱いには熟練の技術も必要ないそうです。いずれは個々の患者に合わせた生体組織の調合も可能になるとのことで、研究チームはさらなる研究を進めるとしています。
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