メモ

気候変動により「気候の分かれ目」とされていたラインがどんどん東へと移動している

by Jimmy Emerson, DVM

北アメリカ大陸の中西部には、南北へ広がる広大な台地上の平原「グレートプレーンズ」があります。グレートプレーンズの東端と長年言われ続けてきたのが、ちょうどアメリカ合衆国を東西に分断するように引かれた「西経100度」のラインであり、乾燥したアメリカ西部と湿ったアメリカ東部を区別する、「気候の分かれ目」とされてきました。近年盛んな気候変動により、この「気候の分かれ目」が東へと移動していると報じられています。

The 100th Meridian, Where the Great Plains Begin, May Be Shifting | Lamont-Doherty Earth Observatory
http://www.ldeo.columbia.edu/news-events/100th-meridian-where-great-plains-begin-may-be-shifting

19世紀後半、アメリカの探検家であるジョン・ウェズリー・パウエル氏がアメリカ中西部のロッキー山脈やグレートプレーンズ周辺を探検し、西経100度線を境目にした東側と西側では大きく気候が異なっていることに気がつきました。西経100度線の西側地域は乾燥した気候ですが、東側地域では比較的湿った気候になっていたのです。

パウエル氏は「西経100度線の東から西へ横切ると、全く違った気候を観察することができます。東側には豊かに育った植物が広がり、キク科の植物が派手な花を咲かせて風景を美しく飾っているのがわかりますが、西側では草や花の種類が減っていくのです。むき出しになった大地に芝がところどころ生えており、トゲのあるサボテンが見られるようになります」と、西経100度線を境目にして変わる気候について記しています。

パウエル氏が「西経100度線が気候の分かれ目だ」と主張してから140年後の現在、東部の豊かな植物はトウモロコシや小麦などの作物に姿を変えていますが、依然として湿った東部と乾燥した西部という状況は変わっていません。ところが、近年になって科学者たちは「気候の分かれ目は、西経100度線よりも東側に移動しているのではないか」と考えています。

by Sven Van Echelpoel

もちろん西経100度ピッタリを境目にして、全く違う気候が出現するというわけではありません。ただ、地球に吹く風の影響により、西経100度付近で大きく降水量が低下するのは確かです。グレートプレーンズの西側に位置するロッキー山脈によって、太平洋から吹き込む湿った風はブロックされ、ロッキー山脈より東側の地域には太平洋から水分がほとんど運ばれてきません。

また、大西洋側で発生する嵐はアメリカ東部や南東部に雨をもたらしますが、西経100度ほど内陸になると、嵐が到達して雨を降らせることもほとんどないとのこと。夏季になるとメキシコ湾から湿った大気が北上してきますが、この大気は東側に湾曲して流れ込むため、やはりアメリカ東部に雨を降らせる結果になります。


コロンビア大学の気象学者リチャード・シーガー氏によると、アメリカの西経100度線の東部と西部では全く違う気候となっており、これほどまでにキッパリと気候が1つのラインで分けられる地域は、地球上だとアフリカのサハラ砂漠とそれ以外の地域を分けるラインくらいだそうです。

アメリカにおいて、西経100度線の西側では人口密度が東側に比べて急激に低下し、住宅や商業施設も少なくなっているとのこと。西側では1つ1つの農家が非常に大規模な農場を持っていますが、これは西側地域では水分が少なく作物の収穫量が少ないという事実を反映したものです。また、東側の農地で生産されている作物の70%は、豊富な水分によって育つトウモロコシですが、西側ではほとんどが小麦だそうです。

by Don Graham

近年、研究者たちは地球温暖化の影響により、東側と西側の気候を分断するラインが東へ移動していると考えています。アメリカ北部の平原では降水量自体が変わっていないのに、気温の上昇によって土壌から蒸発する水分量が増加しています。これに連動して南方の風が吹くパターンに変化が起こり、降水量が低下してしまうのだそうです。

1980年以降に収集されたデータによれば、乾燥地帯と湿潤地帯を分断するラインは西経99度線を越えて、西経98度線近くにまで東進しているとのこと。シーガー氏は現在でこそ局所的な影響で住んでいる「気候の分かれ目」の移動ですが、21世紀中には乾燥地帯の増加が目に見える大きな影響を及ぼすだろうと考えています。

シーガー氏の予測によれば、乾燥地帯が東側に広がるにつれて東側の農家はさらに大規模な農場を持つ必要に迫られ、適切な治水工事を行うか栽培作物をトウモロコシから小麦へ転換しなければならないそうです。さらに、東側の都市部でも水不足問題が発生する可能性もあるとしており、気候の変動はアメリカにゆっくりと影響を与えると考えられています。

by _tono

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
渡り鳥のように大規模移動をするチョウ「オオカバマダラ」の数が急速に減少中 - GIGAZINE

気候変動でコーヒーはまずくなる - GIGAZINE

北極は科学者が言葉にできないほど異常な状態にあることが判明 - GIGAZINE

太陽の活動減退で「ミニ氷河期」が2020年から2050年にかけて到来する可能性 - GIGAZINE

過去40年で動物の半分以上が消えた - GIGAZINE

in メモ,   サイエンス, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.