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サイエンス

自然界のミステリー・ナミブ砂漠の「妖精の輪」に研究者たちが挑む

By Pius Mahimbi

アフリカ南西部に位置するナミビア共和国の太平洋側に約5万平方キロメートルにもおよび広がっているナミブ砂漠には、イギリスを中心に世界中で報告が相次ぐ「ミステリーサークル」ならぬ「フェアリーサークル(妖精の輪)」という現象が存在します。ミステリーサークルは人為的に作られたものであるという見方が強いものの、フェアリーサークルは数々の研究者が調査を行っても現象が解明されない、まさに「謎」の存在です。

BBC - Earth - Mystery fairy circles defy explanation
http://www.bbc.com/earth/story/20140916-mystery-fairy-circles-defy-explanation

ナミビア砂漠には、クイセブ川が中央部に流れ、さらには大西洋で発生した海霧が風に乗って内陸部に流れ込むおかげで、植物が自生しています。植物が自生している地域で見られる現象がフェアリーサークルで、膝くらいの高さの草が生い茂っている場所に、なぜか草が全く生えない部分が円形状に広がっていることから名前が付けられました。

By Vernon Swanepoel

フェアリーサークルは1つだけではなく無数に存在し、現地民には「神の足跡」や「ドラゴンが地中に住んでいる」と信じられています。フェアリーサークルの謎を解明しようと多くの研究者たちが調査を重ねていて、いくつもの説が存在します。

◆シロアリ説
いくつもの説の中で最も有力なのが、ハンブルク大学の生態学者であるノルベルト・ユルゲンス博士が唱えるシロアリ説です。Jürgens博士は2013年までにナミブ砂漠を40回訪れ、1200個以上のフェアリーサークルを調査しました。

By Malcolm Tattersall

ユルゲンス博士が調査した全てのフェアリーサークルに共通したのがシロアリの1種であるPsammotermes allocerusの存在。シロアリは植物の根っこを食べる習性を持ち、行動範囲にある植物の根っこを全て食べてしまうとのこと。根っこが食べられたことで、水を吸い上げる植物がないことから地下には雨水がたまります。この雨水を根っこを食べられなかった植物が吸い上げて成長するので、フェアリーサークルが発生する、というのがユルゲンス博士の説です。

ユルゲンス博士は2013年に自身の調査をまとめた論文を発表し、発表を受けた多数のメディアが「フェアリーサークルの謎が解決した」と報じました。
「妖精の輪」、実はシロアリが原因 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
http://www.afpbb.com/articles/-/2936498?pid=10522428


しかしながら、フロリダ州立大学の生物学者である Walter Tschinkel博士はシロアリ説を真っ向から否定します。実は、調査開始当初は自身も「フェアリーサークルの原因はシロアリに違いない」と考えていたTschinkel博士ですが、現在では「フェアリーサークルとシロアリには高い相関性がありますが、原因がシロアリであるという証拠はありません」と主張。

さらには、シロアリの存在が確認されなかったというフェアリーサークルの報告が、別の学者からも相次いでおり、フェアリーサークルとシロアリに因果関係がないのでは、という見方もあります。

◆気候説
ナミブ砂漠の年間降水量は20~50mmで超がつくほどの乾燥地帯です。ケープタウン大学の植物生理学者であるMichael Cramer博士は「砂漠特有の乾燥気候により、植物が水資源を奪い合うことが原因でフェアリーサークルが発生する」と主張します。Cramer博士がナミブ砂漠の降水量と気温を調査した結果、フェアリーサークルが発生している地域は、ナミブ砂漠の中でも特に乾燥しているエリアであることが判明。

By DragonWoman

丈夫な植物が地中にある水分を吸い上げることで貧弱な植物は枯れてしまいます。枯れてしまった植物が生えていた場所には周囲より多くの水が地下にたまり、周囲には丈夫な植物だけが成長することになりフェアリーサークルが発生するとのこと。丈夫な植物が互いに干渉し合わないようにするため、フェアリーサークルは重なることがなく、かつ一定間隔をおいて発生するそうです。

ヘルムホルツ環境研究所の生態学者で、空から調査してフェアリーサークルの発生位置に規則性があることを発見したStephan Getzin博士も、Cramer博士と同様の結論に達しました。

◆ガス説
プレトリア大学の化学者グループが主張するのが、地中から発生するガスによってフェアリーサークルが作られているという説です。化学者グループはフェアリーサークルの植物が生えていない部分の土を採取し植物の種を植える、という実験を実施。実験では、植物の種が、採取された土で育たなかったことが判明しました。土の分析結果では、地中からガスが漏れている可能性が指摘され、化学者グループは「地中から発生したガスが植物を育たなくしている」と結論づけています。

By Elias Schewel

◆ダチョウお座り説
ある研究者は、ダチョウが休息を取るために植物の上に一定時間座り込むので、その部分だけ植物が育たなくなり、フェアリーサークルが発生する、と主張しました。ナミブ砂漠には多数のダチョウが生息しているものの、ダチョウお座り説は多くの研究者から否定されています。

By Josh*m

多くの研究者が調査を実施し、独自の理論や説を唱えている一方、どれもフェアリーサークルの発生原因を解明するには至っていません。ただし、今後も調査は続けられるので、遠くない未来に解明されることが期待されますが、解明されずに謎が謎を呼ぶというのも、見ているだけの身としてはアリです。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log