100年以上も解読されなかったヴォイニッチ手稿が「古いトルコ語で書かれている」とする説が登場

15世紀に作成されたとみられる古文書の「ヴォイニッチ手稿」は、100年以上もの間、世界中の研究者が解読作業を行いましたが、正確な内容はいまだに解明されていません。機械学習を利用したAIも投入して解読が進められるヴォイニッチ手稿が、古いトルコ語で記載されたものであることをカナダの電気技師が突き止めたと主張しています。
Voynich Manuscript Revealed (2018) - YouTube

ヴォイニッチ手稿は、イタリアで発見された未解読の文字で書かれた古文書で、世界中で読解が試みられてきましたが、いまだに読解されていません。手描きの書物には、植物などの挿絵が随所に見られるのが特徴で、確かな意味を持つことは確実だと言われています。

内容は「薬草」

「天文学」

「生物学」

「宇宙学」

「薬学」

「料理」の大きく6つのセクションに分かれています。

世界中の研究者が解読を試み失敗してきたヴォイニッチ手稿の読解に成功したというのはアメット・アーディックさん。カナダ在住の電気技師だとのこと。4年前に初めてヴォイニッチ手稿を目にしたというアーディックさんは、特徴的な文字の中に、接頭語や接尾語を意味する形状を見つけ、パターンが母国で使われるトルコ語に似ていると感じたそうです。

異なる文字の中に、共通する接尾語が使われている例。

トルコ語の文字「テュルク」との親和性を感じたアーディックさんは、ヴォイニッチ手稿の解読を始めました。

ヴォイニッチ手稿の中の挿絵を拡大し、付箋でメモをつけるアーディックさん。最初に7つの古いテュルク文字に相当する文字をヴォイニッチ手稿の中に発見したとのこと。

アーディックさんは息子のオーザンさんとアルプさんを巻きこんで、解読作業にのめり込みました。息子二人も興味を持ったことで、ヴォイニッチ手稿の解読はアーディック家の一大プロジェクトになったそうです。

当初は乗り気ではなかったというオーザンさん。

解読作業を進めるうちに、ヴォイニッチ手稿は音声を表記している「Phonemic Orthography」と呼ばれる詩的な記述方法が用いられていることが分かったそうです。

例えば、「FOLIO 33-V」(33Vページ目)では……

記述がリズミカルにマッチングしているとのこと。

アーディックさんは7つの文字が古いテュルク文字に合致することが分かると、次にそれらの文字がどのような役割を果たしているのかを調査しました。

天文学セクションにある「FOLIO 67-R」

アーディックさんは、円の周囲が12個に分けられた挿絵から、カレンダーだと予想しました。

各セクションは、1年のうちの「月」を意味しているはずだと考えたそうです。

それぞれの月を表す文字を現代のテュルク文字に書き替える作業ののち、残りの文字もアルファベットに置き換える作業が完了したとのこと。

例えば、「7(seven)」という意味は「yedi(イエディ)」という発音に置き換わります。

発音は組み合わせることも可能。7と4を組み合わせた文字は、「4yedi」という発音に変換できるとのこと。

さらに、文字が言葉の中に置かれる位置によっても意味が変わります。

左右で2つの文字が組み合わさった文字は、右側がアルファベットの「P」を示すとのこと。


そして左側は「I」。「IP(イプ)」は古いトルコ語で「ロープ」を意味する言葉。

下の文字は「measurement(寸法)」を示す文字で、結局、組み合わさった文字は、ロープの長さを意味しているそうです。

以上のような読解作業で、文字は基本的な24種類に分類することができ、それらが組み合わせられて文章を記述していることが分かりました。

再び「FOLIO 67-R」のカレンダーに戻ります。

1月から12月までが順に記述されているとのこと。

例えば、以下の文字は「10月」を表す表記。「オグザフ」という発音で、古いトルコ語の辞書では「ユザイ」にあたります。

「ユザイ」の「ユズ」は「秋」、「アイ」は時間と天体の2つの「月」を意味します。これらから10月の文字は「秋の月」の意になります

11月は、「セペル」「セペリ」という表記。

それらは現代のトルコ語の「Seper Ayi」と「Sefer Ayi」に変換でき……

「雨の月」と訳せます。

7月は「収穫の月」と訳せました。

あらためて「FOLIO 33-V」の解読にチャレンジ。

植物の種の形状や感触から収穫の時期を調べられることなど日常生活を記載する文章に訳すことができたそうです。

アーディックさんは、すでに300語以上の単語を見つけることに成功したとのこと。

アーディックさんは研究成果をジョンズ・ホプキンス大学のデジタルジャーナルに論文として投稿済みで、査読されているところです。今では論文に関心を持った他の学者も研究に加わっているそうです。

アーディックさんによると200ページ以上にわたるヴォイニッチ手稿の全文を翻訳するにはさらに数年はかかる見込みだとのこと。今後はトルコ古語の専門家なども加わって、アーディックさんの解読の正確さの検証が行われることになりそうです。
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