アート

バッハはなぜ究極の音楽家なのか?

by Tadas Mikuckis

「クラシック音楽を越えて、バッハは全ての音楽のゴッドファーザーである」というのはバイオリニスト・ジャーナリスト・小説家・女優などさまざまな顔を持つClemency Burton-Hillさんの言葉。優れた音楽家がほかにも存在するなかで、バッハはなぜ「究極の音楽家」と言えるのかを、数々の指揮者やオペラ歌手、ピアニストたちが説明しています。

BBC - Culture - Can any composer equal Bach?
http://www.bbc.com/culture/story/20140917-can-any-composer-equal-bach

「音楽について書くことは、建築について踊るようなものだ」ともいわれるとおり、作曲家・音楽家のヨハン・ゼバスティアン・バッハがなぜ究極の作曲家だったのかを語るのは、非常に難しいことだと語るBurton-Hillさん。しかし、Burton-Hillさんはバッハの優れた部分について以下のように説明を試みています。

バッハは本能的に「人間性」というものを理解しており、劇作家としての修辞スキルは他の追随を許しませんでした。1685年から1750年の生涯において、バッハは神の栄光について曲を書きましたが、その内容には人が愛すること、誰かを失うこと、笑うこと、裏切ること、裏切られること、粉々にされること、今にも飛べそうな気分になることなどを含みます。Burton-Hillさんは、バッハの音楽が闘争・友情・絶望・喜びといった文字通り「全て」を含んでいると語っています。


また、指揮者のジョン・エリオット・ガーディナーさんは、バッハの音楽を体験することについて「シュノーケリングのようだ」と語っています。バッハの音楽に没入することは異質な体験であり、聴き手としてあるいはパフォーマーとしてバッハの世界に入ることは、「ゴーグルを付けて海に入ると、無数の色彩が広がるサイケデリックな世界が見える」ようなものだと語っています。ガーディナーさんは神の存在について中立的な立場を取る不可知論者ですが、バッハの音楽については「『人間の存在の無価値さや、神性といった超自然的な感覚を持っている誰かが作ったに違いない』と思わざるを得ない」としています。

バッハは神について書かれたルター派の神学体系を、人々がより接しやすいものにしたという側面もあります。バッハは信仰心と格闘することによって、そこから生み出された音楽を、空論的・教訓的ではないものにしています。バッハと並んでバロック音楽の重要な作曲家とされるゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルの音楽とは異なり、バッハの生み出す霊的な叙事詩はウィットに富み、霊的でありながら現実的であるというパラドックスが存在したとのこと。

バッハは音楽においても人生においても苦しみを抱えていましたが、悲しみの中にあってもその音楽は人を慰めるものでした。特に200あまり作曲したカンタータの中でその特徴が色濃く見られ、オペラ歌手のナンシー・アージェンタさんは「ぼろぼろになってリラックスしたい時に必要なのはベートーベンではなくバッハです。彼は人が『すべてうまくいっている』と感じられるような静けさを持っています」と語っています。

バッハの専門家として有名な指揮者のヘルムート・リリングさんは、バッハの非凡な才能は、それまでに存在したものを足し合わせて当時の「最も優れたアイデア」を精製できることにあったといいます。また、バッハの功績は単純にバッハの功績だけにあるのではなく、彼が優れた教師として次世代の作曲家や音楽家に大きな影響を与えたことにもあるとのこと。バッハの影響はクラシック音楽にとどまらず、ジャズ・ソウル・ヒップホップなどに及び、その影響力は計り知れません。

有名なものでは、ドイツの音楽グループ・Sweetboxもバッハの「G線上のアリア」をもとにした「Everything’s Gonna Be Alright」を発表しており……

SWEETBOX "EVERYTHING'S GONNA BE ALRIGHT", official music video (1997) - YouTube


スウェーデンのデスメタルバンド・DISMEMBERの「Life, Another Shape Of Sorrow」という曲は、バッハの「Komm, Susser Tod」をもとにしています。

Dismember - Life, Another Shape Of Sorrow - YouTube


Burton-HillさんがピアニストのJames Rhodesさんに「なぜバッハは究極の音楽家なのか」ということを尋ねたとき、Rhodesさんは「バッハは10歳の時に孤児となり、20人いた子どものうち11人を幼少時代や出産時になくし、妻や愛する人を突然の死で亡くしました」「彼は悲しみに暮れ、オルガンの置かれた屋根裏にグルーピーたちと眠りました」というバッハの生涯について語り、争い、戦った、労働倫理のある酒浸りのロックスターの生涯を反映した音楽が、300年たった後でも私たちをゆさぶるのだという見解を述べました。

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