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70年以上前に天然水晶が無線機の部品として加工される様子を記録した映像が公開中


ガラスの材料にもなる石英が六角柱状に結晶化したものが水晶です。水晶は透明で非常に硬い鉱石で、結晶内の不純物によってさまざまな色味を帯び、「アメシスト」・「メノウ」・「ローズクォーツ」などさまざまな名前で呼ばれます。水晶は古来より宝石として扱われていましたが、実は電子機器の部品の素材としても非常に重要な鉱石です。今から70年前に水晶を軍用無線機の部品として加工している様子の記録映像が、パブリックドメインとしてYouTubeで無料公開されています。

Crystals Go to War 1943 Reeves Sound Laboratories; Piezoelectric Quartz Crystals for Radio - YouTube


当時米軍で使われていた水晶発振器はこんな感じ。


水晶など一部の結晶体に圧力をかけると電位が発生します。逆に、水晶に外部から電圧を加えると固有振動が発生します。この現象は圧電効果と呼ばれ、フランスの科学者であるピエール・キュリーらによって1880年に発見されました。この現象の発見によって、水晶は宝石としてだけではなく、軍用無線機や潜水艦のソナーに欠かせない素材としても重宝されることになります。


水晶を用いた発振回路は圧電効果によって安定した周波数を生み出しますが、水晶の切断角度によって振動モードが大きく変化します。そのため、水晶を適当に切り出すのではなく、水晶の結晶構造を把握した上でカットしなければなりません。


現代では人工的な水晶の大量生産が可能ですが、1940年代ではまだ人工水晶の量産化技術は確立されておらず、天然の水晶を加工しなければなりませんでした。まずはブラジルから届いた天然水晶を、大きさ・形・色・品質などによって選別を行います。


油の中に沈めると、油と水晶の屈折率が近いために、水晶はその形が見えなくなります。その現象を利用して、油に沈めた水晶に光を当てて、水晶の内部に傷がないかがチェックされています。


チェックが終わった水晶は再び油に沈められ、今度は結晶構造の方向が確認されます。光の干渉によって結晶構造は目に見えるようになり、それに基づいてカットするラインが決定されます。


何度も方向をチェックしながら水晶の結晶を棒状に加工していきます。


棒状になった水晶の結晶に圧力をかけ、ちゃんと電位が発生するか調べているところ。


問題がなければ水晶を、傾きを微調整できる特製のジグに固定し、X線も使って確認しながらより正確に水晶をカットする方向を定めます。


確認の終わった水晶は薄くカットされていきます。


カットされた水晶は化学洗浄を行います。酸によって表面が浸食されるので、水晶片は白く濁ります。左が薬品処理済の水晶片で、右が未処理の水晶片です。


処理を行った水晶片にさまざまな方向から光を当てて、色が変わって見える部分に鉛筆で印をつけていきます。この部分は結晶構造がずれてしまっているため、加工する際は排除する必要があります。


さらに偏光器でチェックしながら水晶片の方向を確認したら、四角い窓枠を使って線を引いていきます。


この線に沿ってさらに水晶片はカットされます。


カットした水晶片を重ねて、端を回転のこで切り取ることで水晶片の大きさをそろえます。


さらに水晶片一枚ずつを研磨機で何度もしっかり磨きあげては乾燥させます。


水晶の厚さによって振動の周波数が変わってくるため、周波数をチェックしながら正しい厚さにまで研磨を行います。


仕上げとして再び化学洗浄を行ったら、発振器の中に水晶片を組み込んでいきます。


そして周波数のチェック・振動テスト・落下テストなど、さまざまな試験をくぐり抜けて完成となります。ムービーを見ると、第二次世界大戦中の水晶発振器の生産は非常にコストがかかっていたことが分かります。なお、人工水晶の量産技術が確立するのは第二次世界大戦後で、クォーツ時計やラジオなどの電化製品を大量生産していた日本でも本格的な人工水晶の量産が実現したのは1973年からと言われています。

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in サイエンス,   動画, Posted by log1i_yk