バンジージャンプ時の「いつ飛ぶか」を脳波で検出することに成功
by Enrico Strocchi
人間が手や指を動かす時、動かそうと思った瞬間よりも0.5秒ほど前に脳は既に電気的信号を発しています。これを証明する脳神経活動が「Bereitschaftspotential」で、日本語では「運動準備電位」と呼ばれています。この運動準備電位は研究室内でのみ確認されてきた現象なのですが、最新の研究では初めて研究室の外で運動準備電位を測定することに成功しています。そして、初の研究室外での運動準備電位測定には、なんとバンジージャンプが使われています。
To jump or not to jump: The Bereitschaftspotential required to jump into 192-meter abyss | bioRxiv
https://www.biorxiv.org/content/early/2018/01/27/255083
Study shows what happens in the brain when you bungee jump -- and what this means for free will
https://www.zmescience.com/medicine/mind-and-brain/bungee-jumping-free-will-06022018/
運動準備電位は脳内の微少な電圧変化であり、これにより人間が「意図的に」取る行動を知ることができます。この運動準備電位は1964年にドイツの研究者たちによって初めて報告されました。それ以降、多くの研究者たちが運動準備電位の研究に取り組んできたわけですが、運動準備電位は非常に微弱な電気的信号であるため、これまでは研究所外での実験では正確に検出することができていませんでした。
運動準備電位は脳波の一種である「アルファ波」よりも10~100倍も微弱な電気的信号で、脳波で検出される神経の変動のひとつです。数百万分の1ボルトほどの電圧しかなく、測定が非常に困難なため、研究室外での検出が成功していませんでした。
by jesse orrico
しかし、ドイツ・テュービンゲン大学の神経科学者であるSurjo R. Soekadar博士ら研究チームが、研究室外での運動準備電位の検出に成功しています。研究チームが取った方法は、まさかのバンジージャンプを使うというもの。実験ではヨーロッパで2番目に高いバンジージャンプ台で、2人のバンジージャンパーに脳波を検出する装置を装着してもらい飛んでもらいました。
較正のために数回ジャンプしてもらったあと、研究チームはバンジージャンパーが飛ぶ前に「飛ぶ」と意識する瞬間を検出することに成功。これは言い換えれば、被験者がいつバンジージャンプ台から飛び降りるかを事前に知ることができた、と言えます。
by Joseph Pearson
「可能性の境界がシフトし、神経科学関連の技術がすぐに我々の生活の一部になるであろうということを実験は示しています」とSoekadar博士。また、研究チームの一員であるMarius Nannさんは、「ごく少ない回数のジャンプで運動準備電位を検出できたので、バンジージャンプではこの電気的信号がしっかり放たれていることがよくわかる」と述べています。
この研究結果は運動準備電位に関する研究としては革新的なものであり、少なくともいくつかの条件がそろえば研究室の外でもしっかりと運動準備電位が検出できることが示されています。これは今後の研究にとって有意義であるというだけでなく、その他の研究分野や、人間の脳とコンピューターで通信を行うブレイン・コンピューター・インターフェース(ブレイン・マシン・インターフェース)などにおいても役立つ可能性があります。
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