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「ボブの絵画教室」の声を聞くと脳がトロけるように感じてしまう現象「ASMR」とは?


画家のボブ・ロス氏がわずか30分で風光明媚な風景画を描き上げる「ボブの絵画教室」は、日本でも多くのファンが夢中になった伝説の絵画番組です。ボブの見事なテクニックもさることながら、特に本国アメリカではボブ本人の柔らかな声のトーンもその人気の背景のひとつ。そんなボブの声を聞いた時のように、何かの音で思わずウットリとなって脳がトロけるような感覚に陥る現象は「ASMR」と呼ばれ、脳内の分泌物質が作用していると考えられています。

Scientists have found out why voices like Bob Ross' is so soothing - StarTribune.com
http://www.startribune.com/scientists-have-found-out-why-bob-ross-voice-is-so-soothing/472974813/

ASMRは「Autonomous Sensory Meridian Response」(自律感覚の絶頂的反応)という用語を略したもので、ボブのようなささやき声、雨の音や暖炉でまきが燃える音、ハサミで髪の毛を切る音や紙をひたすらめくる音など、何らかの音を聴いているうちに心が落ちつき、リラックス状態を経てある種の快感を得る現象のことを指します。

冒頭で触れたボブの声は、日本では声優の石井隆夫さんが吹き替えたものがおなじみですが、アメリカで放送された番組ではもちろんボブ本人が話しています。その声が「心地よい。ASMRだ」ということで、ボブ亡き後も番組は根強い人気を保っており、YouTubeにも公式チャンネルが設立されています。

以下のムービーを見ると、ボブの声はもちろんのこと、「ばたばたばた」とイーゼルの足をブラシでたたく音や、2インチのブラシで「シュッ、シュッ」と夕焼け空を描く音、扇形のブラシで「ジャッ、ジャッ」と木の枝を描く音など、さまざまな音が実に心地よく耳に入ってくることが感じられるはず。

Bob Ross - Wilderness Day (Season 31 Episode 13) - YouTube


YouTubeにはASMRをテーマにしたチャンネルやムービーが数多くアップロードされています。ASMRに関する作品を作る「ASMRtistry」によるムービーは、薄いフィルムを耳元でクシャクシャとしたり、枯れ葉をペキペキと折ったり、ジッパーを開閉するときの「ジジジ」という音をひたすら聞かせるだけというもので、初めて見るとあまりのマニアックさに驚きや笑いを我慢できない人も多いはず。しかし、続けて3分も聴いているうちに慣れてきて、次第に何となく心地よくなってしまい、不思議な魅力が感じられるようになってきます。

ASMRtistry: Professional ASMR videos with 3D binaural audio | Test footage - YouTube


もう少し「上級者向け」といえそうなのが、YouTubeチャンネル「Gentle Whispering ASMR」による以下のムービー。Mariaさんという女性が頭髪診断を行い、その後に頭を洗ってくれる様子を収めたムービーなのですが、耳元でささやくような声や音にゾクゾクッとしてしまうはず。この画面を全画面表示にし、イヤホンをして部屋を暗くした状態で視聴してしまうと、どこかにトリップしてもう戻れなくなってしまうかもしれません。

.○•Shhhampooing You•○. ASMR, Soft Spoken, Hair Analysis and Wash - YouTube


ASMR専門サイトASMR Universityによると、ASMRという言葉が生まれたのは2010年前後とのこと。日常にあふれる雑音がなぜか心を落ち着かせてくれる現象に心奪われる人が増えており、日本では「音フェチ」と呼ばれていたことも。ニコニコ動画にもそのようなムービーが投稿されており、ニコニコ大百科にはASMRを解説するページも作られています。

ASMRとは (エイエスエムアールとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
http://dic.nicovideo.jp/a/asmr

ASMRをひとことで説明できる日本語訳が確立されていない。簡単に言うと「脳がとろけるように気持ち良くなる現象」を指す言葉。

このASMRを引き起こすトリガーとなる動画がASMR動画である。布が擦れる音、雨の音、焚き火の音、ハサミで物を切る音。そんな音を心地よく感じた経験はないだろうか。そんな音に魅せられた人々が、音を集めた動画を投稿している。

ニコニコ動画ではかつては音フェチという言葉に置き換わり用いられていたが、2017年5月現在、ASMRタグ動画が2270件存在することからもわかるように、ASMRという用語もかなり定着してきたと言える。

また、音フェチは一般的な理解が得られにくく、変態的な趣味だと位置づけられている。

お姉さんのネイルタッピング聞いてニヤニヤして何が悪い!
お姉さんの囁きを聞きながら寝て何が悪い!
お姉さんの咀嚼音を(ry


科学の世界ではASMRの仕組みを研究しようとする動きもみられます。ASMRの興味深いところは、人によってその現象を引き起こすトリガーとなる音が全く異なることが多い点にあります。ミネソタ大学の神経学准教授であるマイケル・ハウエル博士は、安らかな眠りにつくために他人がタオルを畳むだけの動画を見る人がいるという例を挙げ、「奇妙なことですが、その奇妙なことによって効果を得られる人もいます」と語り、ASMRが不眠症の治療にも役立つ可能性を示唆。ただし、きちんと科学的な裏付けが示されるまでは、不眠症改善の対策として使うべきではないとする見解を述べています。


バージニア州のシェナンドー大学生物薬剤学部の教授でASMR Universityを運営するクレイグ・リチャード氏もASMRを感じることがある人物の一人で、脳は何らかのトリガーを与えられることで快感に包まれたような状態になることがあると述べています。リチャード氏は当初、ASMRの効果について懐疑的な見方を持っていたのですが、ある時聞いていたポッドキャストの中で、ASMRについてコメンテーターがボブ・ロスの声を例に挙げたときに初めて肯定的な見方を持つようになったそうです。

リチャード氏は、ボブの絵画教室が待ちきれない子どもだったとのこと。放送がある日は学校から帰ってきたらテレビのチャンネルを変え、ボブのテクニックと声に魅了される日々を送っていたリチャード少年は、番組を見ながらいつもウトウトしていました。そしてテレビを見ながら寝てしまうので、ボブが絵を描き上げる瞬間はほとんど見たことがなかったそうです。

リチャード氏は、脳がとろけるような感覚に陥る際には、「リラックス」が大きな役割を果たしていると考えています。リラックス状態にある脳からは、エンドルフィンやオキシトシン、セロトニンといった脳内ホルモンが分泌され、これらの物質がASMRの発生のトリガーとして作用しているとリチャード氏は見解を示しています。

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