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Appleが30兆円もの巨額のキャッシュを保有しているわけ


Appleがアメリカ国内への投資によってアメリカ経済に3500億ドル(約39兆円)もの貢献をするという計画を発表しました。海外にため込んでいた利益をアメリカに還元することでAppleは約4兆円をアメリカに納税する見込みですが、Appleがなぜこれほどまでに多額の現金を保有するのかをAsymcoのアナリストのホレース・デデュー氏が解説しています。

The Apple Cash FAQ | Asymco
http://www.asymco.com/2018/01/18/the-apple-cash-faq/

Appleは今後5年間に海外に蓄えた利益をアメリカ国内に還元すると発表しました。

Apple accelerates US investment and job creation - Apple
https://www.apple.com/newsroom/2018/01/apple-accelerates-us-investment-and-job-creation/


一連のアメリカ国内への投資にはのべ2万人をアメリカ国内で雇用することが含まれており、雇用だけでも50億ドル(約5600億円)規模の経済効果が生まれ、すべてを合わせた経済効果は3500億ドル(約39兆円)に上るとのこと。アメリカ国内への投資の基本的な原資は海外に貯めていた滞留資金であり、アメリカ本国への利益還流にあたってかけられる税金は380億ドル(約4兆2000億円)であることも明らかにされています。

アメリカファーストを掲げ雇用創出などのアメリカ経済の立て直しを公約に掲げるトランプ大統領は、Appleの方針を大歓迎しています。

I promised that my policies would allow companies like Apple to bring massive amounts of money back to the United States. Great to see Apple follow through as a result of TAX CUTS. Huge win for American workers and the USA! https://t.co/OwXVUyLOb1

— Donald J. Trump (@realDonaldTrump)


Appleのリリース内ではティム・クックCEOが「アメリカへの貢献への責任」を感じていると発言していますが、もちろん単なる責任からアメリカへ資金を戻すわけではありません。オフショアを駆使した節税に長けたAppleは、アメリカに資金を戻すことが経済的合理性があると判断したのは間違いないところです。


デデュー氏によると、Appleが2017年9月末時点で保有していた「現金」とバランスシート上の「投資」は2688億9500万ドル(約30兆円)だとのこと。なお、30兆円の中には短期・長期の有価証券が含まれています。厳密に言えば現金は流動資産であり、有価証券には流動性が低いものもあるため長期の有価証券は会計上、現金として処理されませんが、Appleが保有する有価証券は優良なもので「現金」と見なせると考えれば、Appleはざっと見積もって30兆円のキャッシュ(現金)を保有するとみることができます。

Appleが保有する30兆円ものキャッシュのうち、アメリカ国内にあるのは170億ドル(約1兆9000億円)にとどまり、それ以外はすべて国外に保有しています。AppleはiPhoneなどハードウェアやApp Storeなどのソフトウェアを世界中で売っているため、当然ながらアメリカ国外でも利益を上げています。しかし、Appleが仮に利益をすべてアメリカ国内に持ち帰ろうとすれば、多額の納税義務を負います。アメリカの税制では、海外で上げた利益をアメリカ国内に還流する際に課税され、その税率は約30%でした。

仮にAppleが海外で蓄える多額のキャッシュをアメリカ国内に還流させようとしたならば、課税されることで30%目減りするわけで、これは会社を保有する株主からはとうてい受け入れられず、実行すれば経営者の法的責任を追及するべく株主代表訴訟を提起されるだろうとデデュー氏は述べています。

By allen

アメリカ・ファーストを唱えるトランプ政権では、かねてからアメリカ企業が海外に避難させている資金をアメリカ国内に還流する場合の税率を大幅に下げる方針が打ち出されていました。そして、2017年12月に税制改革法が成立したことで、本国還流の課税が1回限り15%に軽減される優遇税制が現れたことから、Appleは海外の利益をアメリカ本国に戻すことになったというわけです。

なお、現金が積み上がることは企業にとって良いことばかりではないとデデュー氏は述べています。「現金」とはあくまで過去の成功の尺度であり、投資家が関心があるのは将来の価値であり、将来の利益を生み出す能力が重要視されます。そして、現金を活用してより大きな利益を上げることを株主は求めます。Appleは保有するキャッシュが増えれば増えるほど、「それをうまく活用してさらなる利益に変えるべき」という投資家からのプレッシャーを受けるというわけです。

Appleのビジネスモデルの中で、ハードウェアの製造やデータセンター、Appleストアの構築には多額の資金が必要ですが、研究開発や販売においてはそれほどの資金を必要としません。抜群の収益構造ゆえにキャッシュが滞留しやすいAppleにとって、キャッシュの有効利用としてM&Aへの投資が考えられそうですが、デデュー氏は、Appleは独自の強い企業文化を持っており、M&Aによって企業文化が希薄化する危険性を考えればデメリットも多いと指摘しています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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