ハードウェア

バッテリーがないのに3Dプリンターで出力したパーツだけでスマホやPCを遠隔操作できるデバイスの作成に成功


洗濯用洗剤を使おうと思ったら残りがもうほとんどない、など日用品がなくなり、ストックもないという状況は非常に困ったものです。Amazon Dash Buttonのようにワンボタンで指定のものを購入できるサービスやデバイスも存在しますが、大抵の場合はデバイスを使用するためにバッテリーが必要であり、充電が切れた際にバッテリーを充電し直したり電池が切れた際に取り替えたりするのが手間となってしまいます。そんな中、電子機器とつなぐことなく3Dプリンターで出力したパーツだけを使用して、Wi-Fi接続できるデバイスの作成にワシントン大学の研究グループが成功しています。

Printed Wi-Fi
http://printedwifi.cs.washington.edu/

In first, 3-D printed objects connect to WiFi without electronics | UW News
http://www.washington.edu/news/2017/12/05/in-first-3-d-printed-objects-connect-to-wifi-without-electronics/

ワシントン大学の研究者たちが、3Dプリンターで出力したプラスチックパーツとセンサーを用いることで、電子機器なしでWi-Fiに接続することができるシステムを開発しました。実際にどんなモノが作れるのかというと、バッテリーがないのに遠隔地から端末の音量を調節できるスライダーや、Amazon Dash Buttonのように自動でAmazonで買い物ができるボタン、水漏れを検知するとユーザーに通知を送るセンサーなどです。この画期的なシステムは、2017年11月30日にSIGGRAPH Asia 2017の中で発表されました。

「我々の目標は自宅の3Dプリンターで、他のデバイスに役立つ情報を送ることができるようにすることでした。しかし問題は、どうやってプラスチックだけでWi-Fiを使ったワイヤレス通信を実現するのか?という点で、これまで誰も実現したことのないものでした」と語るのは、ワシントン大学・電気工学部の学生であり研究の共同著者のひとりであるVikram Iyer氏。

3D Printing Wireless Connected Objects - YouTube


Iyer氏らが開発したシステムは商用のWi-Fi受信機と通信することが可能で、通信にバックスキャッタ技術を応用していることから「バックスキャッタシステム」と呼ぶことができます。バックスキャッタシステムでは、3Dプリントしたパーツに埋め込まれたアンテナ(中央)が、Wi-Fiルーター(左)から放たれた無線信号を反射することで、特定の端末に向けて情報を送信します。バックスキャッタシステムが無線信号を特定のパターンに変換して反射することで、スマートフォンやコンピューターなどのWi-Fi受信機(右)が読み取れる別の情報に変換してしまうというわけです。なお、システムのアンテナ部分にはプラスチックと銅を混合した導電性印刷フィラメントが用いられているそうですが、これもまとめて3Dプリンターで出力できるそうです。


装置の構造は、3Dプリンターで出力されたギアとバネ、そしてバネの先に導電性プラスチック製のスイッチを配置するというもの。このスイッチが触れた時にWi-Fiの電波に変化を加えることで、専用の受信機が解読できる信号を作りだします。これにより、例えば「ボタンを押したらピザを注文する」といった命令を他の端末に送ることができるわけです。他にも、歯車が回転した量から洗濯用洗剤をどれくらい使用したのか判断することで、「洗剤がなくなりかけになったらAmazonで購入してくれるスイッチ」を作ったり、デバイスの音量調節ができるスライドバーを作ったりすることもできます。


一定条件が起きるとスイッチが入ってデバイスからデジタル端末に信号を送ることが可能。例えば風速計に応用すれば、一定速度以上の風速を記録した際にスイッチがオンになるように設計しておけば、「風速○○以上を記録した際に通知を送る」といったことも可能。


画面下部の波形が切り替わる瞬間が、デバイスがWi-Fiの信号をバックスキャッタシステムで変換しているとことを示しています。


同じような原理で、一定量以上に水が流れると検知する流量計などに応用することも可能。


ボタンを押すと……


画面が点灯。しかし、このスイッチにはバッテリーなどは一切入っていないので、Wi-Fiさえ飛んでいれば電池切れの心配することなく使い続けることができます。


他にも、手に持った回転スイッチをひねると……


奥のPCの画面がスクロールしました。


他にもスライドバー式のデバイスを作って、遠隔操作で音量調節できるようにすることも可能です。

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in ハードウェア,   動画, Posted by logu_ii

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