人間が永遠に生き続けることは数学的に「不可能」
by Ali Marel
この数百年の間に人間の寿命は大きく伸び、「老い」そのものを避けるという研究も進んでいることから、いつか人間は永遠に生きられるようになるのでは?という考えを抱いている人もいるはず。しかし、アリゾナ大学の研究者らは、最新の研究結果で「数学的・論理的に見て死は避けられない」と伝えています。
Intercellular competition and the inevitability of multicellular aging
http://www.pnas.org/content/early/2017/10/25/1618854114
Fountain of Youth? Sorry, It's Not Out There | UANews
https://uanews.arizona.edu/story/fountain-youth-sorry-its-not-out-there
Humans living forever is ‘impossible’ according to science – BGR
http://bgr.com/2017/10/31/fighting-aging-study-research-cancer/
老化が起こると、人の体は細胞レベルで見て2つのことが起こります。1つは細胞の動きが遅くなり、色素や髪の毛の細胞を作るといった機能が失われていくということ。そしてもう1つは老化とともに生み出されやすくなるがん細胞といったいくつかの細胞の成長率が上がることです。近年進められている老化に関する研究の多くは、このような人間の体の細胞が生み出され死んでいくプロセスに着目したものです。
上記の2つの問題に対処し若さを手に入れるには、体が若い時の細胞の働きを手に入れ、同時にがん細胞のような生物的な必然性を避けることが必須となります。しかし、生態学と進化生物学の教授であるJoanna Masel氏が行った数学的なデモンストレーションでは、「細胞を若く保つ」ことと「がん細胞を排除する」ということは同時に実現できないという内容が示されました。
by National Human Genome Research Institute (NHGRI)
「年を取るにつれ、あなたの多くの細胞は動きが悪くなり、機能を失い、そして成長をやめます。しかしいくつかの細胞は異常なほど成長します。私たちが研究で示したのはキャッチ=22のような板挟みの状況です。あなたが動きがのろくなり機能が悪化した細胞を排除すれば、がん細胞は急増します。そしてこれらのがん細胞を排除したりスローダウンさせたりすると、今度は動きののろい細胞が蓄積されていきます。つまり、動きののろい細胞を蓄積させるか、がん細胞を増やすかの板挟みの状況になるのです。それらを同時に行うことはできません」と論文の共著者であるアリゾナ大学・博士研究員のPaul Nelson氏は語りました。
人間がいつか死ぬということは当然のことですが、2人の研究者は「なぜ老化は議論の余地がない事実なのか、多細胞生物はなぜ本質的に老化を避けられないのか」ということを示した形になります。
「人々はなぜ老化が起こるのかということを、『自然選択説が正しいならなぜ人は老化を止められないのか?』という観点から考えています。そこには暗に『年を取らないことは可能である』という前提があり、なぜ人間が老化しない方向に進化しないのかが問われています。しかし、私たちは『進化しない』のではなく『自然選択説であれ何であれ、できないのだ』ということを主張します」とMasel教授。
「老化の速度を遅くすることはできますが、止めることはできません。私たちはなぜ2つの問題を同時に解決できないのかというデモンストレーションを行いましたが、1つを修復するともう1つが問題となるのです。2つのうち1つの問題を対処しようとしても、両方に対処しようとしても、状況は時間と共に悪化します。その根本的な理由は、『物は壊れる』ということにあります。どんなに止めようとしても、壊れないようにしようとしても、無理なのです」とMasel教授は語っています。
by Edu Lauton
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