メモ

貧困層よりも富裕層の方が10年から15年長生きできる

by Sacha Goldberger

貧富の差によって寿命に差があることはこれまでの研究で明らかにされてきましたが、その差は2~3年ではなく、10~15年もあることが最新の研究で明らかにされました。アメリカの最貧困層に位置する人たちの平均余命はパキスタンやスーダンの値とほぼ等しいとのこと。また、収入の格差が大きい都市部は、一方で平均余命の格差が小さいという意外な調査結果も判明しています。

For life expectancy, money matters | Harvard Gazette
http://news.harvard.edu/gazette/story/2016/04/for-life-expectancy-money-matters/

Poor New Yorkers Tend to Live Longer Than Other Poor Americans - The New York Times
http://www.nytimes.com/2016/04/11/upshot/poor-new-yorkers-tend-to-live-longer-than-other-poor-americans.html

アメリカにおける40歳の人の平均余命と収入の関係は以下のような感じ。男性のグラフを見ると、最も収入が少ない層と最も収入が多い層の平均余命の違いに15年もの差があることがわかります。一方で女性における両者の差は10年となっており、これは喫煙の影響のためと見られています。


ハーバード大学の経済学者David Cutler氏とRaj Chetty氏が1999年から2014年までの14億にも上るアメリカ合衆国内国歳入庁の記録と平均余命の関係を調査したところ、上記の事実だけではなく、ニューヨークやサンフランシスコといった裕福な都市に住む人々は、例え貧しい人であっても平均余命が他の地域に住む人々よりも長いことが判明しました。理由ははっきりしていないものの、裕福な都市に住む人は例え貧しい状況にあっても、地方の貧しい地域に住む人よりは運動を行い、飲酒や喫煙を行う割合も少ないことが原因の1つだと考えられています。また、ネイティブのアメリカ人に比べて健康体である移民が多いことや、税金が高いため貧困層がより健康に暮らすための援助が手厚いことも可能性の1つとして挙げられています。

貧富の差が大きなことで知られるニューヨークですが、平均余命に関しては他の都市よりも格差が少ないわけです。しかも2001年と2014年を比較すると、国全体で見ると平均余命の格差は広がっているにも関わらず、ニューヨークにおける平均余命の格差は小さくなる傾向にあるとのこと。

ニューヨークとミシガン州南東部にあるデトロイトの平均余命の差を男女別に見てもみるとこんな感じ。収入が低くなれば低くなるほど、都市部との死亡率の差が大きくなっていることがわかります。


また、裕福な人々の平均余命は時代の進歩と共に長くなっている一方で、貧しい人々の平均余命はわずかに伸びただけにとどまっていたとのこと。「アメリカ人は寿命が延びたから退職年齢を引き上げよう」という主張がなされることがありますが、これは一部の人々にしか当てはまらず、長生きする裕福な人々に対して寿命が短い貧しい人々は社会保障障害年金や65歳以上を対象としたメディケアをもらえる時間が少なくなるため、不平等が生じる可能性もあります。

また、別の調査をもとに、The Washington Postは人種や性別によってどれほど死亡率に差があるのかを可視化しています。

A new divide in American death: Statistics show widening urban-rural health gap | The Washington Post
http://www.washingtonpost.com/sf/national/2016/04/10/a-new-divide-in-american-death/

まず、これが1990年から1995年にかけての40~44歳の人の死亡率の増減。赤いグラフが黒人、ピンクのグラフがヒスパニック系、青いグラフが白人を示しており、だいたい同じような感じで死亡率が上がっていっているのがわかります。


しかし、グラフは2014年に至るまでの過程で大きく変化。いずれも減少傾向にはあるものの、黒人とヒスパニック系の死亡率が約45%減少しているにもかかわらず、白人の死亡率は1990年に比べて1%減少しているだけです。


さらに、上記の白人のグラフを男女別で表示するとこんな感じ。色の濃いグラフが女性、薄いグラフが男性を示し、女性の死亡率が増加していることがわかります。


さらに、女性を「田舎に住む女性(色の濃いグラフ)」と「都市に住む女性(色の薄いグラフ)」でわけるとこう。田舎に住む女性の死亡率が極端に高くなっています。


年齢・性別・住む場所でどれほど死亡率が変わってくるのかを示したのが以下のグラフ。赤っぽいグラフが田舎、青っぽいグラフが都会に暮らす人を示し、グラフの色が濃くなるにつれ年齢が上がります。男女ともに都会での死亡率に比べ田舎の死亡率が高くなっていますが、女性は特に25歳から中年にかけての、比較的若い世代の死亡率が大きく増加しています。


さらに、田舎・都市の白人女性の死亡原因を表したのが以下のグラフ。左からオーバードーズ、自殺、肝硬変となっています。田舎の方がオーバードーズによって死亡する割合が全体的に高く、45~49歳の死亡率増加が顕著ですが、一方で都市部では50~54歳の女性がオーバードーズによって死亡する割合が増加しています。この傾向は自殺にも同じことが言え、肝硬変の増加傾向も非常に高いことから、大量の飲酒が死亡率の高さにつながっているのではないかと見られています。


ハーバード大学国際健康機関のAshish Jha博士は「貧富の差は必ずしも悪いものではなく、公衆衛生のインフラをいかに構築するべきかが今後の課題となってきます」と語りました。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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