「宇宙で道具をなくす」ことは宇宙飛行士たちにとって脅威になる
誰でもペンや消しゴムなど物をなくしてしまうことはあります。しかし、宇宙において、このような道具をなくすということは大きな脅威であるとのこと。宇宙で物を紛失するというのはどういうことなのか、元宇宙飛行士が語っています。
What Happens When an Astronaut Drops Something in Space? | Short Film Showcase - YouTube
ヴァンガード1号は1958年に打ち上げられた、世界で初めて太陽電池パネルを搭載した衛星。地球周回軌道から7年にわたって信号を送り続けましたが1984年に通信が途絶え、以後は目的もなく軌道上を漂っています。
これはつまり、本体直径16.5cm、重さは1.47kgの「宇宙ゴミ」が宇宙を漂っているということ。ヴァンガード1号以外にも、ロケットの一部や燃料タンク、バッテリーといった宇宙ゴミが何百万と漂っています。そして、それまでは目的を持って機能していたものでも、宇宙ゴミとなると宇宙飛行士たちにとっての「脅威」へと変わります。
以下はSTS-121の最中に撮影された映像。
作業中の宇宙飛行士たち。
作業を行っているのはピアーズ・セラーズさん。このような作業に使われているヘラなどが紛失することでも宇宙ゴミは作られていきます。
ヘラが宇宙で紛失することは、地球で紛失することとは訳が違うので、NASAからも「ヘラの紛失」が重大事項として発表されました。
場所は変わって、天文学の最先端拠点である、チリ。
コロワラ女性天文台のディレクターであるFabiola Rojas氏とCarmen Martinez氏。
「このようなものをなくした時、彼はどのように感じたでしょう。彼は何百、何千という同様のものが軌道上を漂っていることを知っているはずですから」とMartinez氏さんは語ります。
ヘラは他の宇宙ゴミと同様に時速1万7500マイル(約2万8000キロ)で漂い、最終的に地球の大気圏に入ることで燃えてしまいます。
「ヘラを失ったことがわかると、私たちは嘆きました」と当時について語るセラーズさん。
宇宙ゴミは宇宙飛行士に危害をもたらす可能性があるため、時には宇宙ゴミを避けるためにシェルターの中に避難してモニタリングを行う必要がでることも。
宇宙ゴミにはこれくらいの大きさのものや……
目には見えないほど小さなものも存在します。しかし、秒速1~2マイル(1.6~3.2キロ)という、非常に速いスピードで動くため衝突すると非常に危険です。
小さな破片を避けるために宇宙飛行士たちは避難し……
青信号が出ると、再び外で作業を行います。
三次元空間が物体よりもはるかに大きい場合、ランダムに飛行する2つの物体はぶつからないという大空理論に基づけば、目に見えないほどに小さな宇宙ゴミが宇宙飛行士たちと衝突する可能性は極めて低いといえます。しかし、それでも宇宙ゴミは宇宙飛行士たちにとって注意すべきものと見なされている模様。
元衛星といった宇宙ゴミの中には既に現役の衛星と衝突することによって破壊されたものも存在します。しかし、大きな宇宙ゴミは破壊されることによってさらに多くの宇宙ゴミを生み出します。また、衝突することによって現役の衛星の力を奪ってしまう可能性も考えられるとのこと。
地球軌道周回を行うロケットを打ち上げれば、宇宙ゴミは必ず生まれます。大気圏で燃え尽きるパーツや、地球に落下するもパーツももちろん存在しますが、宇宙に残って永遠に漂い続けるパーツも生まれるためです。
人工衛星がロケットから分離されると……
タイ・バンコクでは、男性が「燃えた?」と目を見張ります。
空に流れる一筋の光。地上から見ると美しい光景です。
宇宙では火を噴くパーツが……
地上では流れ星になります。
そして海へと落下。宇宙ゴミにならず、海中に落下するものもあるわけです。
10cm以上の宇宙ゴミで、2017年時点で地球の周りを漂っているものは1万6300個ほど。
5cm以上だと6万個で……
1mm以上になると、2億個に。
0.1mm以上のものになると、1兆個になると見られています。これらの宇宙ゴミは、銛や磁石、ネットのようなものを使えば回収できると考えられており、将来的には宇宙の脅威を減らせるものと見られています。しかし、2017年時点では回収の方法がないのも事実。
「ヴァンガード1号はアメリカが初めて打ち上げた人工衛星でした。彼女は、小さなアンテナを揺らしながら、まだ宇宙にいます。真空空間でぐるぐると回りながら。今は何も行いませんが、我々の知る限り、完璧な形を保ったままでいます。しかし、いつか誰かが網を持って宇宙にいき、彼女を捕まえるでしょう」とセラーズさんは語りました。
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in 動画, Posted by darkhorse_log
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