「iPhoneのFMラジオを使えるようにせよ」という要請に対しAppleの回答は「無理」
アメリカで放送と通信の規制監督を行っているアメリカ連邦通信委員会(FCC)がAppleに対し、「iPhoneに搭載されているFMラジオの機能を使えるようにせよ」という驚きの指示を出しています。これに対し、Appleは「ハードウェア的に無理」という声明を発表しており、「iPhoneでFMラジオが聴けるのか!?やっぱり無理なのか!?」という騒動になっています。
Apple Urged to Activate iPhone’s FM Radio Chip After Hurricanes - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2017-09-28/apple-urged-to-activate-iphone-s-fm-radio-chip-after-hurricanes
Apple Faces Renewed Pressure to Enable FM Radio Chip in iPhones Amid Strong Hurricane Season [Updated] - Mac Rumors
https://www.macrumors.com/2017/09/28/apple-still-urged-to-enable-fm-radio-in-iphone/
2017年、ハリケーン「ハービー」「イルマ」「マリア」と、3つのハリケーンに襲われて多くの被害を受けたアメリカでは、災害時の通信方法について議論が高まっている模様。普段なら問題なく使えている携帯電話網でも、ひとたびアンテナが破壊されてしまうと復旧するまで通信を行うことができません。これは、IPプロトコルでデータをやりとりする必要がある通信方法の弱点ともいえる点なのですが、一方のラジオ放送は放送電波を一方的に放っておけば、あとは受信できる装置さえあればどんな状況でもラジオを聴くことができるというメリットがあります。
FCCがAppleに対して指示した内容も、このFMラジオの利点を国民の保護に役立てたいという意図があります。FCCのアジット・V・パイ議長は2017年9月28日、公共の安全を満たすための名目で「ハリケーンハービー、イルマ、マリアによる災害の状況に際し、私は企業がその役割を再考することを望みたい。Appleに対し、iPhoneに搭載されているFMラジオ用のチップを有効化することを要請することも、そのことが理由である。今やAppleはその責任を認識し、アメリカ国民の安全を第一に置くべきだ」という声明を発表しています。
iPhoneにFMラジオ用チップが搭載されていたということに驚きを禁じ得ない人も多いこの一件ですが、Appleはそれが必ずしも可能ではないとする反応を示しています。
Apple says iPhone 7 and iPhone 8 do not contain FM radio chips or antennas, in response to FCC request | 9to5Mac
https://9to5mac.com/2017/09/28/iphone-7-iphone-8-fm-radio-features/
iPhoneにFMチップが搭載されていると聞きつけたユーザーが「自分のiPhoneでFMラジオが聴けると知ってショックだ」とつぶやいたことに対し、Apple上級副社長のフィル・シラー氏は「それは無理です。iPhone 7とiPhone 8にはFMチップも、電波を受信するためのFMアンテナも搭載されていません」とリプライを返しています。
It is not possible. iPhone 7 and iPhone 8 models do not have FM radio chips in them nor do they have antennas designed to support FM signals
— Philip Schiller (@pschiller) 2017年9月28日
またAppleからは声明が発表されており、一連のハリケーンで被害を受けた人に対する心配の気持ちを示し、Medical IDやロック画面からの緊急通話が可能であることが述べられつつ、やはりiPhone 7とiPhone 8ではFMラジオをサポートしていないという内容が発表されています。
Statement from Apple regarding calls for FM radios to be enabled on iPhones. (Recent models don’t have them.) pic.twitter.com/xwggMNtjhq
— Rene Ritchie (@reneritchie) 2017年9月28日
とはいえ、「じゃあそれ以前のモデルは?」ということがもちろん気になってしまうところですが、Appleからはこの件に対する発表は行われていません。
なお、過去のiPhoneでは実際にFMラジオの電波に対応するチップを搭載するモデルもありました。iPhone 5sにもそのチップは搭載されていましたが、iFixitのコミュニティのQ&Aでは、基板設計に詳しいとみられる人物から「たしかにBluetooth/Wi-FiチップはFMにも対応しており、iPhone 4sの時から搭載されているが、Appleはその意図がないようで、信号を出すピンが基板に接続されていない」という答えが寄せられています。また、Appleが過去に販売していたiPod nanoの第3世代から最終の第7世代モデルでは、イヤホンをアンテナがわりにしてFMラジオを聴くことが可能でした。
一部には、「Appleは自社が提供しているApple Musicの顧客をラジオ局に奪われたくないためにFMチップを無効化している」という声も。実際のところが明らかにされることはまずなさそうですが、最新のiPhoneでは技術的にそのようなことが可能なのか、非常に気になるところではあります。もしiPhoneで、サイマル放送ではない、アナログ放送のFMラジオを受信することができたとしたら、より多くの人が貴重な情報を手に入れられることになるのは間違いありません。
ちなみに、一連のハリケーンの際には、テスラが一時的に車両の制限を解除して避難をサポートするという出来事も。対象となったのはモデルSの「60」または「60D」と呼ばれる車両で、それらの車両に実装されていたリミッターを解除するというものでした。同社のラインナップでも最もバッテリー容量が少ないとされていた60および60Dですが、実は上位モデルと同じ75kWhのバッテリーが搭載されており、プログラムで制限することで走行可能距離にリミッターがかけられています。ハリケーンの襲来を受け、テスラは遠隔でこのリミッターを一時的に解除することで走行可能距離を伸ばし、できる限り遠くまで避難できるようにサポートした、という出来事でした。
・関連記事
持ち運び可能で太陽光でも最大8km圏内にラジオを放送できるFM放送局「Pocket FM」 - GIGAZINE
最大5日も給油なしに飛行可能なガソリン動力の災害時通信支援無人機「Jungle Hawk Owl」 - GIGAZINE
災害が発生すると自動的に家族や大切な人の居場所を共有してチャットもできる防災アプリ「ココダヨ」 - GIGAZINE
水と塩を入れるだけで30時間連続で点灯するLEDランタン「MIZUSION」(ミズシオン)レビュー - GIGAZINE
人の命を救う物資を運び、最後は自然に還る飛行機型ドローン「APSARA」 - GIGAZINE
地震からゾンビ発生まで、あらゆる世界の終末に対処できる「非常用バックパック」の作り方 - GIGAZINE
文明崩壊や終末に備えて世界中の種子をバックアップして保存する知られざる巨大施設「Svalbard Seed Vault」内部に潜入レポート - GIGAZINE
・関連コンテンツ