「簡単な言葉で説明できない」ならあなたは「理解」していない
by Christine Cavalier
作家のジョン・グルーバーによると、Appleのエンジニアは複雑なテクノロジーやプロダクトをシンプルで簡単に理解できる言葉で説明することを要求されます。それは役員が理解するためにシンプルな言葉が必要なのではなく、シンプルな言葉を使うことでエンジニアはテクノロジーなりプロダクトなりを真の意味で理解できるからとのこと。このような考え方をしていたのはAppleだけではなく、ノーベル物理学賞を受賞したリチャード・P・ファインマンもまた同様の言葉を残しています。
If you can’t explain something in simple terms, you don’t understand it
http://kottke.org/17/06/if-you-cant-explain-something-in-simple-terms-you-dont-understand-it
量子電磁力学の発展に大きく寄与したとして1965年にノーベル物理学賞を受賞したリチャード・P・ファインマンは、1960年代に大学生に向けて授業を行っていました。ファインマンが行った大学の授業は「ファインマン物理学」としてのちに書籍化されているのですが、一部の講義内容は資料紛失のため出版されませんでした。その後、ファインマンの同僚だったデイビット・L・グッドスタインが講義の録音内容と講義の準備のためにファインマンが書き残したノートを解読して「失われたファインマンの講義(Feynman's Lost Lecture)」という本を出版。その際、グッドスタインはCaltech's Engineering and Science magazineという雑誌に対し、ファインマンについて以下のように語っています。
「ファインマンは本当にすばらしい教師でした。彼自身、難解な考えでも大学1年生に対してさまざまな言い回しで説明できることを誇っていました。私が一度『ディック、なぜ半整数スピンを持った粒子はフェルミ・ディラック統計に従うんだ?』と尋ねた時、ファインマンは『大学1年生用のレクチャーを用意するよ』と返しました。しかし数日後、彼はこう言ったのです。『できなかった。大学1年生レベルに砕けなかったんだ。つまり、私は全然理解できていなかったんだ』と」
ファインマンは科学的な内容をシンプルな言葉で説明し、その結果、話を聞いている人は議題ついて深く理解できるということで有名でした。そして、もう1つ知られていたのは、ファインマンが「自分が理解していない」ということを臆することなく認める人物であったということです。磁力について説明する以下のムービーでも、ファインマンは「全然うまい説明ができない。磁力についてあなたがよく知っている言葉で説明することができないということは、私はあなたの知っている言葉で磁力というものを理解していないんです」と語っています。
Feynman: Magnets FUN TO IMAGINE 4 - YouTube
なお、1988年、ファインマンがこの世を去った時、黒板には「What I cannot create, I do not understand.(私が自分で作れないものは、私が本当の意味で理解していないものだ)」と残されていたとのことです。
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