マスメディアがいかに世論を操るのか、ノーム・チョムスキーのマスメディア批判「合意の形成」をアニメで分かりやすく解説
アメリカの哲学者ノーム・チョムスキーは、著書「Manufacturing Consent: The Political Economy of the Mass Media」の中でマスメディアによる「プロパガンダモデル」を痛烈に批判し、メディアと権力の癒着や大衆支配の実態を明らかにしました。チョムスキーの考える横暴で巨大な力を持つマスメディア「マシーン」の持つ5つのフィルター(特性)を、アニメーションで分かりやすく解説するムービー「NOAM CHOMSKY - The 5 Filters of the Mass Media Machine -」が公開されています。
NOAM CHOMSKY - The 5 Filters of the Mass Media Machine - YouTube
「プロパガンダ」
北朝鮮、カザフスタン、イランのような国の情勢を伝えるときに使われてきた言葉です。
これらの国は「独裁主義」として伝えられます。
伝えるのは欧米などの、その他の国のマスメディア。
欧米のマスメディアのレンズを通して、情報は伝えられます。
マスメディアでは「報道の自由」「表現の自由」のような言葉をよく耳にします。
使われるのはアメリカ、フランス、オーストラリアのような「民主主義」がある国。
しかし1995年にノーム・チョムスキーがある権力構造を世間に暴露しました。
それが「Manufaturing Consent(合意の形成)」。「政治を監視する」という崇高な使命を与えられているはずのマスメディアが、世論を生み出す仕組みです。
マスメディアは情報を民衆に伝えるもの。
群衆に奉仕するもの。
マスメディアの存在のおかげで民衆は政治的なプロセスに参加できる、はず。
しかし、「民主主義は『やらせ』だ」、というのがチョムスキーの主張。
マスメディアは「プロパガンダマシーン」というのがチョムスキーの見解です。
メディアは5つのフィルター(特性)によってプロパガンダマシーンとして機能します。
1つめは「メディアのオーナー」という特性。
マスメディアは巨大な組織で、多くの人が働いています。巨大なコングロマリットがマスメディアを運営することもあります。
運営に金がかかるマスメディアの最終目的は……
「利益」
大食らいなマスメディアを運営するには金が必要です。そのためには利益を生まねばなりません。
批判的で辛辣なジャーナリズムなどは……
利益の前では二の次です。
マスメディアが垂れ流す商品の数々。
どれも魅力的な物ばかり。
消費者はマスメディアが垂れ流す商品を常に目にする生活を送ります。
2つめの特性は「広告」
消費者がマスメディアに与える金銭的対価では、マスメディアの運営費をまかなうことはできません。
では、このギャップを誰が埋めるのか?
それは「広告主」
広告主の目的はもちろん「群衆」
マスメディアは直接物を売ってはいません。
マスメディアが売るのは「聴衆」。聴衆を広告主に売って金を稼いでいるのです。
権力層・支配者層はどうやってマスメディアを操作するのでしょうか?
それが3つめの特性の「エリートの共謀」
ジャーナリズムは権力をチェック(監視)することはできません。何のことはなく、裏では支配者層とマスメディアは結託しているから。
政府・大企業・投資家などは「メディアゲーム」をいかに「プレイ」するかを理解しています。ニュースがどのような影響を与えるのかを熟知しており、マスメディアをうまく利用します。
時にスクープを提供し、公式声明を出し、その道の「識者」をインタビューに登場させるなどすることで、「ジャーナリズム」のプロセスに決定的に関与しています。それぞれがシステマティックに互いに結託し合っているのです。
この「権力」に異議をとなえる者がいても……
排除されるのみ。マスメディアへのアクセスは閉ざされます。4つめの特性は合意に邪魔な「意見の抹殺」。
コンセンサスの得られていない主張はマスメディアの中では排除されます。
訴える者は排除され……
その主張は失われます。
合意の形成にはターゲットとなる「敵」が必要です。
この共通の敵こそが5つめのフィルター。
共産主義
テロリスト
移民
マスメディアでは「恐ろしいもの」として共通の敵は描かれます。
恐ろしい共通の敵が、群衆の意見を作り出すのです。
これらの5つのフィルターが巨大なマスメディアに成立する仕組みです。この合意の形成メカニズムは、いつの時代にも聴衆の周りに存在しています。
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