App Storeからアプリが削除されて100日が経過した結果、売上は増加

APIドキュメンテーションブラウザの「Dash」は、iOSおよびmacOS向けにアプリが提供されています。2016年10月初めまではApp Storeでもアプリが配信されていたのですが、「Dashがレビューのコメントを操作した」とみなされ、アプリは削除されてしまいました。それから100日が経過して、Dashによる売上はどのように変化したのかを開発者が公開しています。

100 Days Without the App Store - Kapeli Blog
https://blog.kapeli.com/100-days-without-the-app-store

以下のグラフは2016年のiOS版Dashアプリによる売上を示したもの。オレンジ色がApp Store経由の売上で、紫色部分がDashの公式サイトから直接アプリを販売してあげた売上。App StoreからDashアプリが削除されたのはQ4からで、App Store経由の売上が一気に減少しているのがわかります。ただし、全体の売上はむしろ微増しており、App Storeでのアプリ配信がなくなったことで、公式ページから直接購入してくれるユーザーが倍増しています。

Q3で全体の売上が下がっているのは有料アップグレードの飽和が原因と考えられるとのこと。また、開発者によるとDashは2016年にアプリのプロモーション等を一切行っていないそうです。

なお、元々iOS版のDashアプリは収益がそれほど順調ではなく、ほとんどのiOSアプリと同様に「持続が困難だった」とのこと。そこで、iOS版のDashアプリをオープンソース化しており、より収益性の高いmacOS版アプリの宣伝に利用しているそうです。

続いてユーザーの割合を示すグラフ。オレンジ色はApp Storeでの配信が停止したあともそのまま使用しているユーザーの割合で、紫色は配信停止後にライセンスをApp Store経由のものからDashからのものに切替えたユーザーの割合。既存のユーザーのほとんどが「乗り換えユーザー」であることがよくわかります。ただし、以下のデータは「Dash 3」アプリユーザーのものであり、「Dash 2ユーザーがどうなったのかはわかりません」と開発者は述べました。

開発者によると、iOS版のDashはApp Storeでの配信が停止されてからすぐ後にオープンソース化しており、その後、すぐにApp Storeで配信されるようになったそうです。しかし、開発者は「App Storeで配信されているDashアプリはインストールしないことを強く推奨します。なぜなら、コードにどのような変更が加えられているのかわからないからです」と語っています。なお、App Storeで配信されていたオープンソース版のDashは有料化されており、その後、App Storeから削除されました。

App Storeでのアプリ配信を期せずしてやめることとなった開発者は、「App Storeのインストール・アップデート・購入という手続きを避けられるようになり、アプリを自分が完全にコントロールできるようになったことは素晴らしい」と述べており、App Storeでの配信停止も「ほとんど影響がなかった」と語っています。

他にもmacOS向けのApp Storeでアプリ配信をやめた結果、アプリの販売数や売上がどのように変化したのかを公開している開発者もいます。

Rogue Amoeba - Under the Microscope » Blog Archive » Making More Outside The App Store

Rogue Amoebaによると、Mac向けの音声レコーダーアプリ「Piezo」を2016年からApp Storeで配信しないようにしたところ、販売数は以下のように変化。グレーの部分がApp Store経由での販売数で、青部分が公式サイトから直接販売した数。販売数の詳細は不明ですが、大きな変化がなかったことは一目瞭然。

以下はPiezoの売上をグラフ化したもの。グレーの部分がApp Store経由での売上で、青部分が公式サイトからの直接の売上。PiezoもApp Storeでの配信をやめた後に売上が微増してます。

ただし、Piezoの開発元であるRogue Amoebaは、「全ての開発者がApp Storeからのアプリ配信を停止したからといって、Rogue Amoebaと同じような成功を収められるわけではない」としながらも、「我々の場合、Appleが我々のために働いてくれていたというよりも、我々がAppleに尽くしている状況だったことは明らかです。Mac向けのApp StoreからPiezoを削除することで、Appleに手数料を支払う必要がなくなり、作業を大幅に簡素化しながら製品の品質を向上することができるようになりました」とコメントし、さらに「売上の増加はちょっとしたボーナスにすぎなかった」と売上の増加よりも多くの得られるものがあったことを明かしています。