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F-16戦闘機のパイロットが訓練中に気絶、直後に安全装置が作動して墜落を回避する映像が機密解除で公開される


戦闘機「F-16」のパイロットが極限状態で飛行中に意識を失ってしまうも、機体に搭載されていたAutomatic Ground Collision Avoidance System (Auto-GCAS:自動地面衝突回避システム)が作動することで、機体の制御が自動回復して事故が回避されていた映像が公開されました。

Auto-GCAS Saves Unconscious F-16 Pilot—Declassified US Air Force Video | Technology content from Aviation Week
http://aviationweek.com/technology/auto-gcas-saves-unconscious-f-16-pilot-declassified-usaf-footage

Air Force video: F-16 pilot saved by automatic collision avoidance system | Ars Technica
http://arstechnica.com/information-technology/2016/09/air-force-video-f-16-pilot-saved-by-automatic-collision-avoidance-system/

この映像は2016年5月に機密解除されたもので、機体のヘッドアップディスプレイに投影される映像を収めたもの。インシデントが発生したのは2014年後半で、訓練中だった新人パイロットがアフターバーナーを作動させたまま急旋回を行ったところ、強いGに耐えきれずに意識を失ってしまいました。その後、異変を察知したAuto-GCASが機体の制御を乗っ取って機体を水平飛行に戻す様子が以下のムービーに収められています。

Auto-GCAS Saves Unconscious F-16 Pilot—Declassified USAF Footage - YouTube


画面には、機体の傾きや速度、高度を示す表示が映し出されています。旋回スタート時の高度は1万7230フィート(約5250メートル)、速度は481ノット(時速約890km)と表示されています。


アフターバーナーを焚いて旋回スタート。水平を示す白いラインが示すように、機体はほぼ真横を向いた状態で旋回しています。この時のパイロットには8.3Gもの力がかかり、体じゅうの血液が足のほうへ片寄っている状態。


すると突然、機体が「カクン」と動いてまるで力なく漂うような光景へと変化し、パイロットはこの時点で気を失った模様。この時、機体の向きは白い水平ラインよりも下を向いており、明らかに墜落に向かう状態に。


そのまま機体は地面目指して急降下。画面は白黒ですが、地面のような光景が一杯に広がっています。


機体は最大でおよそ55度の角度で急降下。教官パイロットからの「2 Recover! 2 Recover! (2番回復しろ!)」という無線が飛びます。この時にAuto-GCASが異変を感知し、画面には左右から矢印のようなものが中央に向かって動き始め……


画面中央で「」になり、その上には「FLYUP(上昇)」と表示。安全システムが作動した瞬間。


その後、機体は水平を取り戻しました。パイロットの意識もここで回復したようで、マスクの「ハッ、ハッ」という息づかいが回復。


その後、パイロットは自ら操縦して、再びもとの高度へと復帰していました。


ちなみに、墜落中の最高速度は692ノット(時速約1280km)と、超音速に達していました。


そして最も低かった高度は4360フィート(約1330メートル)。つまり、わずか25秒の間で3920メートルも降下したことに。Auto-GCASの介入がなければ、あと数秒で地面に激突していたことが容易に想像されるインシデントとなっていました。


このシステムはロッキード・マーティン、NASA、Air Force Research Laboratoryの3者が30年にわたる共同開発を行ってきたもので、F-16の生産ブロック40および50の機体に2014年から追加搭載が開始されたもの。アメリカ軍ではこれまで、年間4~5機の戦闘機をパイロットの意識喪失や機体状況の誤認を原因とする墜落「CFIT(Controlled Flight Into Terrain)」で失っており、F-16に搭載されているAuto-GCASについては、これまでも何度か機体の墜落を未然に防いだことが報じられていました。

いわば、パイロットが気づかないまま地面や山の斜面に激突する事故を防ぐことが可能なAuto-GCASですが、これと同様なシステムが旅客機に搭載されると操縦ミスによる旅客機の墜落事故を大幅に軽減することができることにもなり、民間航空機への転用も期待されています。

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in 乗り物,   動画, Posted by darkhorse_log

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