ドナルド・トランプが大統領になってiPhoneのアメリカ国産化を強制すればiPhone価格は暴騰する
アメリカの大統領選に出馬中のドナルド・トランプ氏が、「AppleはiPhoneをアメリカで製造するべきだ」と発言して一騒動になりましたが、仮にトランプ氏が大統領に就任してAppleにiPhoneのアメリカ製造を強いた場合、iPhone価格は高騰することが分かっています。
The All-American iPhone
https://www.technologyreview.com/s/601491/the-all-american-iphone/
トランプ氏による「Apple製品はアメリカで製造させる」という爆弾発言は、以下のムービーの1時間53分頃から確認できます。
Donald Trump addresses Liberty University students - YouTube
MIT Technology Reviewは、トランプ氏の主張する「iPhoneの国産化」を推し進めるとどうなるのかを、iPhone製造の実情に照らし合わせて検証しています。
iPhone 6sは6つの中国工場、1つのブラジル工場で組み立てられています。IHSのアナリストによると、アメリカで749ドル(約7万5000円)で販売されていたiPhone 6sの部品原価は230ドル(約2万3000円)、399ドル(約4万円)で販売されていたiPhone SEの部品原価は156ドル(約1万6000円)と見積もられています。 これらの部品コストに約4ドルから約10ドル(約400円から約1000円)の組み立てコストを加えたのがiPhoneの原価というわけです。しかし、仮にiPhoneをアメリカで製造する(組み立てる)となると、組み立てコストは単純に30ドルから40ドル(約3000円から約4000円)が追加され、iPhone 6s Plusであれば価格が5%値上げされるはずだとシラーキュース大学のジェイソン・デトリック教授は見積もっています。
しかし、これは単に組み立て作業をアメリカに移した場合(シナリオ1)のこと。iPhoneの部品は28カ国766のサプライヤーから供給を受けており、部品の製造についてはアメリカ国外でも行われています。この内訳は中国が346社、日本が126社で、アメリカは69社にとどまるとのこと。部品調達先は中国・日本・アメリカ・台湾の上位4カ国に集中しています。
仮にアメリカで部品を調達するべくサプライヤーにアメリカ国内で工場を建てさせ設備投資を促した場合(シナリオ2)、部品調達コストはさらに30ドルから40ドル(約3000円から約4000円)アップするとデトリック教授は見積もっています。ちなみに最も部品価格が高いのはディスプレイユニットで、iPhone1台あたり20ドル(約2000円)かかるとのこと。
さらに、部品の原材料の調達まで「オールアメリカ」体制をトランプ氏が望んだ場合(シナリオ3)は悲劇的です。エイムズ研究所によると、iPhone製造に使用されている材料は、元素周期表で見れば全体の3分の2、75種類に及ぶとのこと。大きなボーキサイト鉱山を持たないアメリカは、iPhoneの外装パーツに使われるアルミニウムの調達すら難しく、仮に国内のアルミニウムのリサイクルでまかなうとなればとてつもないコストアップにつながるとのこと。
トランプ氏が大統領になって、AppleにiPhoneのアメリカ製造を求めれば、iPhoneの価格がアップするのは確実。シナリオ3は現実的でないとして、グローバル化されたハードウェア製造業の世界では、自国優先主義なシナリオ2であっても時代遅れでもはや成り立たないと言えそうです。
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