サイエンス

VRによる脳トレーニングで下半身不随の患者が再び「感覚」を取り戻し回復への一歩を踏み出す


身体能力に欠損を生じた障害者の脳波を読み取って、パワードスーツなどに命令を送り、機能を補助する研究が進められています。脳波によるマシンコントロールのトレーニングにVR(仮想現実)を使ったところ、マシンコントロールを学習できるだけでなく、動かなくなった体の部位の感覚を取り戻し、回復不可能だと思われていた機能自体が回復した例が報告されています。

Brain training with exoskeleton and VR spurs recovery for paraplegics | Ars Technica
http://arstechnica.com/science/2016/08/brain-training-with-exoskeleton-and-vr-spurs-recovery-for-paraplegics/

アメリカのデューク大学のミゲル・ニコレリス博士らの研究チームは、脊髄に障害を負って下半身不随に陥った患者8人に対して、VRヘッドセットを使って脳波をコントロールするトレーニングをしてもらいました。この研究の本来の目的は、脳波を使うことで患者が装着するパワードスーツを操作して、歩行を実現するというものでした。


このトレーニングは成功し、8人の中にはトレーニング開始から10カ月後には、サポートが必要なものの自分で歩けるようになる被験者が現れるなど成功を収めました。下半身不随という障害を持ちながらも、脳波でパワードスーツをコントロールして歩行する男性の様子は以下のムービーで確認できます。

Movie 7 P2 EXO - YouTube


VRトレーニングの成果は上々で、パワードスーツに命令を送り手足を使えるようになる被験者が現れました。さらに、パワードスーツを使うだけでなく、自分の足を再び動かすことに成功する被験者が現れたとのこと。


下半身不随になった自分の足を動かすことに成功した女性の様子は以下のムービーで確認できます。

Movie 3 P1 steps - YouTube


実験開始から7カ月後に、トレーニングによって患者の神経系が実際に回復する兆候が現れ始めたとのこと。これまでは脊髄損傷などによる下半身不随症状は決して回復することがないと考えられていましたが、下半身不随になった後も最大80%の患者には神経系統自体は残っているという研究報告があり、VRを使った脳トレーニングによって神経系を回復させる効果がある可能性が指摘されています。

ちなみに実験に参加した8人の患者はすべてパワードスーツを使った動作に成功し、動かなくなった自分の下半身の感覚を取り戻し始めているそうです。

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in ハードウェア,   サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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