テスラ・モデルSに搭載されているセンサーを騙す方法とは?
by Shal Farley
2016年5月にテスラ・モデルSの「オートパイロットモード」で初めての死亡事故が発生していたことが、7月に判明しました。その原因を、テスラは「オートパイロットモードが障害物を正しく認識できなかった」と説明しましたが、研究者によって、このオートパイロットモードで用いられているセンサーを「騙す」ことができる方法があることが実証されました。
Hackers Fool Tesla S’s Autopilot to Hide and Spoof Obstacles | WIRED
https://www.wired.com/2016/08/hackers-fool-tesla-ss-autopilot-hide-spoof-obstacles/
これはサウスカロライナ大学、中国の浙江大学、セキュリティ会社・Qihoo 360による合同研究チームが発見したもので、週末にDEF CON Hacking Conferenceで報告が行われることになっています。
テスラ・モデルSに搭載されたオートパイロットモードは「レーダー」「超音波センサー」「カメラ」という、3つの異なる手段で車両の置かれている環境を確認しています。
研究を主導したサウスカロライナ大学の徐文淵教授によれば、チームはキーサイト・テクノロジーの信号発生器(約910万円)とバージニア・ダイオードの周波数逓倍器を用いてお手製の妨害装置を作り、レーダーを欺くことに成功しました。
その様子がこのムービーで確認できます。
Radar Jamming a Tesla Model S - YouTube
モデルSの前には、見えていませんが「前にいる車」を想定したカートが置かれています。オーロパイロット機能をオンにすると、ドライバーからは見えていなくても、レーダーがこのカートを探知して「前に車がいるよ」と知らせてくれます。画面では、白い色で表現されているのが自車、青い色で表現されているのが前の車です。
妨害装置をオンにすると……
先ほどまで存在した青い車が消えました。もちろん、カートは動かしていません。
妨害装置をオフにすると、青い車が現れました。
このテストは停車中に行われていて、もし高速走行中に同じような「妨害」を行うためには、妨害機器を車のセンサーの位置に応じた場所に移動させる必要があります。
続いては、自動的に駐車する機能や、駐車スペースから運転手のところまで呼び出す機能に用いられている超音波センサーを欺く実験です。ここで用いられたのは、超音波変換器とArduinoを用いた装置で、制作費用は250ドル(約2万5000円)ほど。
Ultrasonic spoofing attack on a Tesla S - WIRED Videos - The Scene
https://thescene.com/watch/wired/ultrasonic-spoofing-attack-on-a-tesla-s
装置は、このように車両の前方に設置されています。
モデルSは「66cm前に何かある」と教えてくれています。しかし、装置のスイッチを入れると……
「停止」と表示されました。つまり、障害物が間近にあるので動くな、ということです。
障害物との距離はチラチラと変動。
しかし、装置は動いていません。
チームは、さらに容易な方法でセンサーを欺くことにも成功しています。
Defeating a Tesla S's ultrasonic sensors with cloaking - WIRED Videos - The Scene
https://thescene.com/watch/wired/defeating-a-tesla-s-s-ultrasonic-sensors-with-cloaking
車の前を人が横切るとセンサーが反応しています。
しかし、保護部材として用いられる、凸凹したウレタンフォームをまとうと……
車の前を横切ったのに、センサーは反応しませんでした。まるで、透明人間になっているかのようです。
全身覆わずに、腰に巻いた「フォームスカート」状態で通過してみると……
やはり反応しませんでした。
徐教授は、このテストは「センサーを欺けるかどうか」という点では効果があったものの、必ずしも実践的ではないという点を認めています。しかし、この実験結果はテスラに限らず、各メーカーが注意しておくべきものとなりそうです。
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