高畑勲監督がなぜ劇場公開されないのかと思った作品「Long Way North」上映会
東京アニメアワードフェスティバル2016のコンペティション部門・長編アニメーションでグランプリを受賞した作品「Long Way North」の上映会が、2016年7月28日に東京・飯田橋で開催され、「かぐや姫の物語」「火垂るの墓」などで知られる高畑勲監督が応援スピーチを行いました。
『Long Way North(ロング・ウェイ・ノース)』特別上映会、7月28日(木)開催! | 東京アニメアワードフェスティバル2017
http://animefestival.jp/ja/post/3868/
上映会の会場となったアンスティチュ・フランセ東京。
上映前に、東京アニメアワードフェスティバル2017の実行委員長である石川和子さんが挨拶を行いました。
「Long Way North(原題:Tout En Haut Du Monde)」は、レミ・シャイエ監督が手がけたフランスとデンマークの共同制作作品。19世紀のロシアを舞台に、北極点到達を目指して遭難した祖父と、祖父の乗った船を探すため、孫娘のサーシャが自らも極北の地へと旅立つという冒険譚です。
「本日来ている皆さんと、知っている情報自体はそれほど変わりません」と前置きしつつ語り始めた高畑勲監督は、「Long Way North」という作品について「見ていて気持ちが良かった。作品の中でいっぱいウソをついていて、それは日本のアニメも同じだけれど、このウソのつき方は気持ちがいい」「女の子が頑張る姿を追いかけ、それに応じて周りの人たちが変わっていったり、状況が好転したりしながら、最後には目的を達成する。ただそれだけの話といえばそうですが、この単純さがすごく大事です」と、高く評価。
一方で、昨今の日本のアニメについては「たくさん見ているわけではないのに語るのは図々しすぎるから、割り引いてもらわなければいけないけれど」という断り入りでしたが、このLong Way Northで見られる単純さと比べて、やたら複雑なものになっていて、作り手は視聴者がうまくのめり込めるように作っているけれど、たくさん見ても役には立たないのではないかと、やや批判的。自らが推薦するミッシェル・オスロ監督の「キリクと魔女」を「生きていく上ですごく役に立つ作品」だと評価し、「そういった作品を、日本はどれぐらい送り出しているだろうか」と語りました。
こうした作品を「誰に向けて作るのか」という点については監督自身にとっても難しい問題だそうで、「自分が見ても面白いと思えるものを作っている」のであり、「子どもだから水準の低いものを」というわけではないとのこと。そもそも、日本では絵と言葉を使って物語を語るという伝統は根強いものがあり、それは「大人が好きなものだった」と指摘した高畑監督。
自身が監督した「火垂るの墓」についても、「子どもが見ても大丈夫だという結論を持って作ったけれど、子どもに見せていいんだろうかと不安になった」と吐露。同時上映が、気持ちが楽しくなるような「となりのトトロ」だったことに触れ、「どちらを先に見るかで気持ちが変わってしまう。なんだか申し訳なかった」と会場の笑いを誘っていました。
ちなみにこのLong Way North、東京アニメアワードフェスティバル2016で長編アニメーション・グランプリを獲得したものの、配給がつかなかったため、現時点では日本で一般公開される予定がありません。この事実を知った高畑監督は「えっ、なんで?」と思い、上映会に配給会社の人が来ていたら説得しているところだったそうですが、残念ながらこの日は配給会社の人はおらず「目標を見失ってしまった」と少し残念そうでした。
作品公式サイトはコレ。
Tout En Haut Du Monde - Site officiel
http://www.toutenhautdumonde.com/
英語字幕入りの予告編がYouTubeで公開されていて、どんな作品なのかをのぞき見ることができます。
Long Way North / Tout en haut du monde (2016) - Trailer (English Subs) - YouTube
左端が主人公のサーシャ。
サーシャの父(中央)はローマ大使を目指し、トムスキー王子(右)とサーシャを結婚させようと考えています。
しかし、サーシャはいまだに失った祖父のことを考えていました。
ダバイ号と名付けられた特別な北極探検船で旅立つ祖父・オルキン。
その姿を不安げに見送るサーシャ。
オルキンはダバイ号とともに行方不明となり、その捜索活動も空振りに終わっていました。
しかし、ダバイ号は沈んでいないと信じるサーシャ。
どうしてももう一度ダバイ号を捜索して欲しいと願うサーシャを、冷たく突き放す父。
祖父との思い出を胸に、サーシャは自らがダバイ号を探し出すと決意。
北へと旅立ちます。
霧のかかった港町。
「これまでのダバイ号の捜索活動は、場所を間違えていたから見つけられなかった」と主張するサーシャ。
しかし、船員達はそんなサーシャを笑い飛ばします。
食堂のおかみ・オルガは船長のランドに、サーシャの言葉を聞くようにと助言。
そして、厳しい極北への船出。
「家族の誇りを保つため、ダバイ号を見つけなければいけない」
一度は諦められているダバイ号捜索だけに、その旅路はとても過酷。
船長が危機に陥る場面も。
膝を抱えるサーシャ。
「もう、戻れない」とオルキン。
雪原を行くソリ隊。
海原をゆく船。
「北極はどこにあるの?」と尋ねる幼いサーシャに「世界のてっぺんさ」と答えるオルキン。
その祖父の姿を求めて、サーシャの旅は続きます。
「Long Way North」
「この光景を見せてあげたいよ、かわいいサーシャ」
サーシャの北への旅は、どのような結末を迎えるのか。1時間21分で描かれる冒険譚は、こうしたイベント上映のみでとどめてしまうには惜しい作品です。確かに「人気マンガ・人気ライトノベルを原作としたアニメの劇場版」と比べたときに、オリジナルで、しかも日本のアニメではない作品だとヒットは難しいのかもしれませんが……。
なお、最後に竹内孝次ディレクターから東京アニメアワードフェスティバル2017の開催宣言とお知らせが行われました。次回のコンペティション部門の募集開始は8月。長編が60分以上、短編が30分未満の作品で、プロ・アマ・学生を問わず応募可能。賞金はグランプリが50万円、優秀賞が10万円です。
・2019年7月追記
「ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん」のタイトルで2019年9月の公開が決定しました。
ロング・ウェイ・ノース - Long Way North - 地球のてっぺん 公式サイト
https://longwaynorth.net/
『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』日本語字幕予告編A - YouTube
・関連記事
高畑勲監督の映画「かぐや姫の物語」11月23日公開が決定 - GIGAZINE
「かぐや姫の物語」がノミネートされた第87回アカデミー賞の候補作品まとめ - GIGAZINE
スタジオ・ジブリの物語はなぜ欧米で輝きを失ったのか - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in 動画, 映画, アニメ, Posted by logc_nt
You can read the machine translated English article The movie 'Long Way North' screening tha….