数千万円クラスの3Dプリンターは数十万円クラスのものとどれくらい性能に違いがあるのか比べてみた
ひとえに「3Dプリンター」といっても数万円で購入できるホビー用もあれば数千万円するような業務用マシンもあります。ある男性が、比較的安価な3Dプリンターと高価な業務用3Dプリンターを使ってまったく同じ部品をプリントアウトして、そのデキを比較しています。
3D Printers: $200,000 VS $2500
http://additivepartdesign.com/3d/printers/2016/06/01/3d-printer-comparison.html
3Dプリンターを使ったエンジニアリングデザインのコンサルティングをするマイク・スクリプチェック氏は、2500ドル(約26万円)の比較的安価な卓上サイズの3Dプリンター「Lulzbot Taz 5」と、20万ドル(約2100万円)と高額な業務用の3Dプリンター「Stratasys Fortus 380 mc」を使って、出力される部品にどれくらいの違いが現れるのかを比較しました。
オープンフレームで一般的な3Dプリンターの形をしたLulzbot Taz 5に対して……
Stratasys Fortus 380 mcは、作業スペースはクローズドで、サイズは幅1270mm×奥行き902mm×高さ1943mmという巨大なサイズです。
出力したのはこんな形状の部品。Lulzbotではノズル径0.5mm、積層ピッチ0.1mm、プリント速度45mm/sで、素材に耐衝撃ポリスチレン(HIPS)を使用。一方、Stratasysでは素材にABS樹脂を使い、実際に出力したところ、いずれのマシンでも約18時間かかったそうです。
まずは安価なLulzbotで出力した部品。
裏側はraft(ラフト)と呼ばれる部品を作っておくことで、部品が反るのを防いで精度を上げています。
ラフトを剥がした完成品の状態で、高級機Stratasysで出力した黒色の部品と並べてみます。ぱっと見ではほとんど違いが分からないほどで、部品として両方とも正しく機能する精度だとのこと。
続いて細部の比較。縁から飛び出した部品に注目して比較すると……
Lulzbotでは下半分がつぶれていました。上半分は正しく出力できているため、下半分の出力で何らかのトラブルがあったのは確かですが、出力途中を観察していなかったため理由は分からないとのこと。ただし、正しく出力されている上半分に関して言えば、ほとんど違いはないとスクリプチェック氏は述べています。
表面の仕上がりでは、Stratasysはうっすらレイヤーが確認できるのに対して……
Lulzbotは滑らか。
大きな違いは台座に接する底面。Lulzbotはラフトを引きはがすときに小さなささくれのような「バリ」が発生します。
これに対してStratasysは、特殊な塩水をかけることで部品を支持するパーツを洗い流せる仕様のため滑らかな仕上がり。研磨作業が最小限で済むというメリットがあります。
3Dプリンターで出力した部品には、組み立て・使用に便利なように部品の「型番」を印刷しておくことがあります。Lulzbotで型番をつけるとこんな感じ。
他方でStratasysは型番にオレンジ色をつけることで視認性を高めることができます。このあたりの利便性は高級機ならでは。
部品を横から見てみます。これがStratasysの場合。
Lulzbotでは、赤枠で囲った部分に、部品が引っ張り合ってできた亀裂のような隙間。しかし、スクリプチェック氏は、これくらいの隙間であれば素材を練り込んで圧力をかければふさがるので問題はないと判断しています。
曲面部分を比べると、非常に滑らかなStratasysに対して……
Lulzbotは、たくさんの筋が確認できます。
数十万円の3Dプリンターと1千万円を超える3Dプリンターで同じ部品を出力して比較した結果、見た目などの点で確かに高級機と普及価格のマシンでは差があることは確かですが、品質上の大きな違いはないとスクリプチェック氏は述べています。また、比較的価格の安い3DプリンターであってもノズルやGコードデータなどを調整することで、高級機に近い品質を得られるという手応えもあるとのこと。スクリプチェック氏は、とんでもない精度を必要とする場合を除けば、数十万円の3Dプリンターで十分であると結論づけています。
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