ピザ作りにソース塗りロボット・ピザ焼きロボット・車載オーブンなどを導入して宅配ピザ業界支配を目指すピザスタートアップ

アメリカのピザ業界の売上97億ドル(約9883億円)のうち、ドミノピザやピザハットといった大手ピザ宅配業者が58％以上の売上を占めています。そんな大手ピザチェーンに負けじと、ロボットを使って格安のピザを提供するピザ屋のスタートアップが登場しています。

Inside Silicon Valley’s Robot Pizzeria - Bloomberg
http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-06-24/inside-silicon-valley-s-robot-pizzeria

ピザ宅配のスタートアップ「Zume」を設立したのは、過去にZynga Studiosの前代表や、Xbox Liveのゼネラルマネージャーを務めた経験を持つAlex Garden氏です。Zumeは2015年6月にカリフォルニア州サンタクララ郡のマウンテンビューにひっそりと設立されたスタートアップで、Garden氏らはピザ作りにロボットを活用することでより高い収益を上げようと取り組んでいます。Garden氏は「我々は食事配達業界でAmazonのような存在になりたいと思っています」と語ります。

Zumeのオフィスの広さは8000平方フィート(約743平方メートル)あり、キッチンにはピザを作るためのロボットが並んでいます。

ピザの注文はスマートフォンアプリで行う仕組み。

注文が入ると、キッチンのタブレットに通知が届きます。

キッチンスタッフが丸めたピザ生地を手にとって……

専用の機械にセット。

すると、あっという間に生地が丸く平べったい形に伸ばされました。

伸ばされた生地は、青いベルトコンベアに乗せて次の工程へ運ばれます。

ピザ生地にソースを載せる作業も、ロボットが行います。

ソースを塗り広げる専用ロボット「Marta」は、天井からぶら下げられたアームをクモのように動かして、ピザ生地の上に載せられたソースを2秒以内にすばやく塗り広げます。

Martaのアームの先端には丸いヘッドが搭載されています。Garden氏によれば、Martaはヘッドをたくみに動かしてソースを生地の上にまんべんなく広げていきますが、ソースの塗り方は完ぺきではなく、まるでピザ職人がソースを塗ったかような印象を残すように設計されているそうです。

ソースが塗られた生地はさらにベルトコンベアで運ばれ、人間の手で具材をトッピング。

トッピングが済むと、「Bruno」と呼ばれるロボットがピザをそっとすくい上げて……

オーブンの中へピザを入れて焼きます。

Zumeでは、ロボットが作ったピザを販売するお店を2016年4月に営業開始。

さらにZumeはキッチン内でピザを作るロボットだけではなく、車内にピザ調理設備を備えた配達用トラックも所有しています。

トラックの荷台部分には、走行しながらピザを焼けるオーブンがずらり。合計で56台のオーブンを設置しているとのこと。ピザを注文したお客さんの家に近づくと、到着予想時刻の3分15秒前に調理を開始し、お客さんの自宅へ向かいながらピザを焼くことで、できたてのピザを届けることができます。

お客さんの家に到着した時に、ちょうどピザが焼き上がります。ただし、実際にピザを焼きながら宅配するにはサンタクララ郡の衛生局の許可が必要とのことで、Zumeでは配達用のトラックは今のところ使っておらず、キッチンでロボットが作ったピザを店頭で販売しているのみ。なお、衛生に関する法律は州によって異なりますが、走行中に食品を調理するトラックはこれまでに認可されたことはないそうです。

Zumeのオフィスには、ロボットを製作するためのスペースもあり。Garden氏自らエンジニアたちと協力してロボットを製作しています。

オフィススペースでは、エンジニア、デザイナー、プロダクトマネージャーたち合計12人が働いています。

ZumeはベンチャーキャピタルのGoogle VenturesやKleiner Perkins Caufield & Byersから投資を受けていて、ベンチャーキャピタルではシリーズAの投資を検討しているそうです。Zumeは「ピザ宅配業界をロボットで支配するという野心を秘めている」とのことで、衛生局の許可を得て2016年8月には配達用トラックの中でピザを調理しながら宅配したいと考えているそうです。